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女神と共に、相談を!  作者: 沢谷 暖日
恋する乙女の恋愛相談
9/83

妹の友達は失恋を背負っている

「まぁ、ここにお座りなさって」


 机の上に、コトリとミルクティーの入ったカップを置きながら、私は部室に入って立ち尽くしたままの桃杏ちゃんに呼びかける。


 最後の一本だったミルクティーの粉を使用し、おもてなし。

 私も飲もうと思っていたから、正直めっちゃ使うか迷ったけど、私の良心がもてなすことを優先したらしい。

 私は偉い子だなと、一人で勝手に関心している。


「あ。ありがとうございます」


 謙虚にお辞儀をし、椅子にゆっくりと腰を下ろす。

 こんな丁寧な印象の人なのに、本当に何を相談するのだろうか。


 ……というか。

 この子は楓花が「悩んでそう」という理由だけで連れてきたのだと思う。

 妹には、結構強引なところあるし。


 そう考えながら、私も桃杏ちゃんの正面の椅子へと腰を下ろす。

 ちなみに天崎さんは。部屋の隅で、寂しそうに正座をしていた。

 ……スカートが汚れるぞー。


「うん。まぁいいか」


 そんな彼女を横目でちらと確認し、前へと向き直る。

 すー、と穏やかな音を立て、ミルクティーを啜る桃杏ちゃんを見ながら、私は問うてみた。


「桃杏ちゃんは、恋愛相談しに来たの?」

「──っ」


 カップを傾ける手がぴたりと止まる。

 静まり返る部屋。

 私は察した。


「……そうっぽいね」


 私のその納得に、桃杏ちゃんは、持ったカップをゆっくりと机へと戻した。


「……はい。そうなんです」


 こんな真面目そうな子が、とは思ったけれど。

 昨日はこの子よりもヤバイ人に恋愛相談(告白)されたし、それほどの驚きは無かった。

 恥ずかしそうに俯いた彼女を一瞥し、私は続けた。


「ほーほー。……それで、妹に無理やり連れてこられたっぽいけど……その。別に無理して相談しなくていいからね?」


 そう問うと。

 桃杏ちゃんはバッと顔を上げた。

 ボブの髪が、パサっと揺れる。


「いや、ちゃんと楓花ちゃんに聞かれたので大丈夫です。ここには私の意志できていますから」

「そう? ……えっと。じゃあ、いきなりだけど。……その相談内容は?」


 一応私は先輩なので、怖がらせないようにと優しく問うた。

 桃杏ちゃんは「えっと」と少し間を空け。

 数秒何かを思案したらしく、その後に口を開いた。


「その前に、ですが。……お姉さんと楓花ちゃんって付き合ってるんですか?」

「えっ」


 いきなりすぎる問いに、度肝を抜かれた。


「いや、そんなことあるわけないでしょ⁉︎」


 なんでそんなことを、と聞く前に、反射的に驚きを見せる。

 びっくり……というか、何の繋がりも無いような気がするんだけど。


「ありそうです。なんかお姉さんと楓花ちゃん、仲すごく良さそうですし。……実際、姉妹で付き合ってる人っているんですよ」

「いやいや。姉妹で付き合うだなんて漫画みたいな話、あるわけないでしょ」

「あるんですよ。本当に。……私が中学の頃に好きだった人は、姉妹で付き合っていたんですよ? その事実を知った時は悲しくて。一瞬で散った私の初恋だったんです。もう、恋愛なんてしたくないって思ったけど、でも、出会いが欲しかったから、わざわざ女子校に来たのでしょうね。私の中学からもかなり離れた場所に位置してますし、誰も私の中学の人はこの学校を志望しませんでしたよ。それに──」

「す、すとっぷ」


 これ以上話させると、本当に永遠に話していきそうな勢いだった。


 にしても。

 ……重い。

 内容も重いし、空気も重い。

 ……こんなガチなの受けたことないんだけど。


 まぁ。理解したことといえば。

 桃杏ちゃんは失恋を背負っているらしくて。

 それで、高校に入って好きな人ができて。

 でも失恋が忘れられないから、どうすればいいのか相談をしにきたのだろう。


 私的には。失恋を背負っても、そのまま背負い投げすればいいと思うけど。

 恋愛経験の無い私には、そういうのは全くと言っていいほどにわからない。

 きっと底知れぬ辛さとか。そういうものがあるのだろう。


 けれど。こう言う事も可能性として考えれた。

 楓花がこの部屋に入ることを、桃杏ちゃんは否定した。

 そして、私と楓花が付き合ってるかどうかを確認してきた。

 ってことは。

 ……桃杏ちゃんの好きな人は、楓花?

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