課題終わり!
ムクリと身体を起こした今日の朝は、軽く見積もっていつもの十倍くらいの爽やかな朝だった。
スマホに飛びついて、時間を確認。
午前十時。そこそこ早起き。
心音からのラインも大量だ。
その内容はほとんど、私に起きろと呼びかけるものだった。
そんな沢山の呼びかけを可笑しく思いつつ、私はごめんと返信をする。
『ごめんごめん。起きたよ!』
『おそようございます』
すぐにつく既読と、早速届くメッセージ。
いつもの事だけど、スマホを開いて待機していたらしい。
『そんな遅かったかな?』
『遅いです! 私は七時に起きましたよ!』
『ごめん。でも、お目目パッチしに目が覚めた!』
『おめでとうございます。じゃあ、早速昨日みたいに課題を始めましょうか』
『あ、その前に朝ご飯いいですか?』
『許しましょう』
※
課題は残すところ、地理と現代文の二つ。それだけだ。
反省文は……適当に書くからノーカンで。
朝食のパンをささっと食べ終えて、私は勉強机に向かう。
スマホを奥にたてかけ心音と電話を繋ぐ。
「改めておはよー。心音」
軽い笑みを浮かべて、私の顔が映っているスマホに手を振る。
『……お、おはよう。ございます』
昨日よりもさらに小さな声で、心音は私にそう返す。
ちょっとだけ、その声は緊張しているように思える。
まぁ。電話って、緊張するよね。
実際私も緊張している。
『あ。毛布……』
何を言うのかと思えば、呟くその声が遠ざかり、続くように足音も遠ざかる。
私に見立てた毛布を準備するのを忘れていたのかなと予想する。
私に見立てた毛布って、そもそも何って感じだ……。
でも結局それって毛布じゃん。私にぎゅーして欲しいところだけど……。
……ところだけども! 今、それができないから心音はそうしているわけであって、私がどうこう口を挟んでも心音に迷惑かけるだけだし。自己中だ。
心音だって、毛布とじゃなくて私とハグをしたい……はず。
今日、会えるから。その時に、いっぱいハグをしよう。
そのことを考えるとそわそわしてきた。
『伊奈さん。では、始めましょ』
心音の声が近付いて、「ぼふっ」みたいな毛布の音? が聞こえる。
何をしているのか気になりつつも、
「じゃあ、地理からやろ!」
電話越しの心音に向けて、快活に言い放つ。
※
心音と課題を頑張って、途中でお昼休憩も挟みつつ現在時刻は午後の四時。
結構時間が経過した。
それはつまり、心音に会える時間がどんどんと近付いてきているというわけで……。
……なんて思考を、さっきから幾度となく繰り返している。
置いといて、この時間までのおさらいだ。
昨日の通りに、課題描写は省く。
だって。課題してるとこなんて思い返しても何も楽しくない。
心音との途中に入るお喋り以外、本っ当に楽しくない。くそすぎる。
現代文のあの文字の羅列なんて、見るだけでも頭痛がして目が回る。
……けれど、九割ほど心音の力を借りて、地理と現代文の課題を終わらすことが出来た。
これは。私にとったら快挙と言っても過言ではない。
だって私。結構提出日から遅れて出してしまうことが多い。
単位を落とさない程度には頑張っているつもりだけど。
だから、ほぼ心音の力とはいえ、こんなにも早く終わらすことができたというの私にとっての快挙なのである。
残すは反省文、たった二枚なのほぼウイニングランのようなものだ。
「さてさて。……あ。そういえば、心音は反省文はどんなこと書いたの?」
『えぇっと。適当に。「全部伊奈さんがやりましたー」みたいな内容』
「えぇっ! それガチっすか」
『いやいや。本気にしないでくださいよ。……えと、「放送室を勝手に使ってしまったのはすみません許してください私たちが全部悪いです」……という感じに』
なぜか一息で文章の内容を言う心音。
息が苦しそうだ。
「ふむぅ。じゃあ、そういう内容のこと書こうかな?」
『私に聞かないでください。自分の言葉で書きましょう』
「りょーかい」
私はスマホの画面から、机に置いた原稿用紙を見る。
四百字詰を二枚だから、六百くらい書こっか。
まぁ。心音が言った内容と似通ったものになると思うけど。
『美結ちゃんを助けるためにしたとはいえ、すみませんでした』……って。こんな感じでいいのかな。
いや。ちょっと文章を変えてみよう。
『白河美結ちゃんを、学校に存在する悪から救うためとはいえ、こんな学校中を困惑の渦に落とすようなことをしてしまい、本当に、心の底から申し訳ないと感じています』……この方が、文字数稼げていいな。
『伊奈さん。なんだかにやにやしていますよ? 楽しいことでも考えているんですか?』
そう言われ、自分の口角が上がっているということに気づき、慌てて下げる。
「文字数を稼げる方法を見つけたと言いますか」
『そーですか。じゃあ、すぐ終わりますね。頑張って下さい。私は、毛布にずっと抱きついておきますので』
「そっか。……後から本物の私の感触も味わわせてあげるからね!」
『はい。元よりそのつもりです。というか、しないという選択肢はないです』
「それは。……確かに。……猛スピードで終わらせて心音の家に行く!」
一瞬、心音のハグについてのことが頭の中を占めたが、めっちゃ頭を振って、それを飛ばし、目の前の反省文に超集中した。
結果。割とすぐに反省文を終えることができた。
心音パワーの偉大さを思い知らされる。
下手なエナジードリンクよりも、心音の存在から得られる効果は高いようだ。




