明日への期待
あの時は私もすぐに家に帰った。
もちろん美結ちゃん家のスリッパのままで。
このスリッパはいつ返そうか。
……まぁ、いつかでいいか。
美結ちゃんも、今は私と顔を合わせたくないだろうし。
そういう考えに着地した。
そして、この日の夜のことだった。
心音からラインが届く。
『明日は、何時からにしましょうか?』
そうそう。
私は、明日土曜日。心音とお家で遊ぶこととなったのだ。
それも心音のお家で。嬉しい。
その文面も見て、にへらと顔が歪むのが分かる。
「──はっ!」
その顔がヤバイくらいに変貌しているのに気付き、私は頭を振る。
……いかんいかん。
なんだか、キスをする度に私が心音に近付いている気がする。
気がするというか、確実にそうだ。
それで。なんというか精神年齢の低下?
心音と会う前は、もうちょっとクールな思考の持ち主だったと思う。あれ、違うかな。
ともかく……許さないぞ心音。
と、訳の分からない方向に矛先が向いてしまう。
けれど、その矛先は尖っていない。多分、柔らかいと思う。
そんな風に、今よりもっと訳の分からないことを考えながらも。
私は指を動かした。
『何時からでもいいよ! 心音の都合のいい時間で!』
『じゃあ、朝からにします! 九時くらい? とかで大丈夫そうです?』
相変わらず返信は早い。
『大丈夫! えっと、私はどうやって行けばいい? そういえば、家がどこか知らないや』
『あ、お迎えに行きますので大丈夫です!』
『嬉しいけど、それ、お母さんとか大丈夫かな?』
『先ほど頼んでみたんですけど、むしろ喜んでましたよ!』
『ふむふむ。じゃあ、お願いしちゃいます!』
『はい! 明日はとりあえず、宿題に専念しましょう!』
『えー。別にその予定だからいいけど。ちょっとは遊ぼうよー』
『ちょっと遊びますよー』
『それ、真似してる?』
『どう見ても真似ですね! ごめんなさい!』
……心音は、なんだか、こう。
無邪気? みたいな、そういうところがある。
心音のラインで見せるギャップとか。そういう感じのものだ。
心音のことを想っている学校の数名は、きっと、心音のこんな可愛い姿を見たことなんてないんだろうと、優越感にすら浸れる。
とてもいいものだ。と思う。
心音は中学の頃の、私のカッコイイ……かどうかは自分では判断しかねるけれど、まぁ。そういうところを好きになってくれて。
あ、あと顔もか。
鏡を見ても、私の顔のいいところなんて見つけることはできないけど。
……心音がそういうのなら、もうちょっと自信を持った方がいいのかも。
頭の中からスマホに向き直す。
『それで、何で遊ぼうか?』
『なんでもいいですよ!』
『えーっと、じゃあ、心音は私と何をしたい?』
『キス』
こう答えるだろうと思って問うたので、その二文字に驚きはさほど無かった。
つまり少しは驚いたわけで。
こんな直球に二文字をぶつけられるのは少し私もドキリとした。
ラインの文字に思考は浮かばない。
だから平静を装い、私は答える。
『ならキスで』
『今日のやり直し的なやつをしたいです!』
『唐突すぎたもんね。じゃあ。もう一回』
『はい! ありがとうございます!』
やり直し。
ということは、あのでぃーぷなやつ。
って解釈でいいんだよね?
この解釈が間違っていて、それで明日そのキスを私からしたら、いよいよ終わりだ。
終わりって、何が終わるのか分からないけど。
羞恥心の限界が訪れそうである。
明日は慎重にいこう。
今日みたいにがっついたキスはしないように。
それがいい。
そうしないと私が恥ずかしい。
してる時は恥ずかしさはないのだけど。
なぜかした後、数分後に波に似た何かが私を襲う。
私は文字を打つことをやめ、頭を悩ましていた。
心音は返信を待っているのだろうか。
そう思った時に、心音から文章が届く。
『あ、蛇足かと思いますけど、今日のやり直しって言うのは、舌をいれるやつですよ!』
最後まで見て、心臓が跳ねる。
そこから全身に熱い血液が流れていく様な感じだ。
足がバタバタと無意識に動く。
心音が、あんな美麗な顔つきの子が、私と舌を絡めたキスをしたいと言っているということを意識する。
やばくて、すごい。なんだこれは。
今、私は幸せの中にいるんじゃないか。
すごいすごいすごい。やばいやばいやばい。
私の語彙力はどこかへ飛んでいき、もうしばらくは帰って来なさそうだった。
「早く明日になれーー!!」
枕に顔をうずめて、溢れ出すこの気持ちを叫んだ。
体が謎の震えを起こす。
めっちゃ明日が待ち遠しい。
東海大学の試験に安達としまむらの問題が出たらしいですね!!!
これは二期をするのにいい機会!!!!
四巻の冒頭の話でした!!!
あれは、パンチョ視点だったかな?
そこら辺があやふやです!笑
ここまで読んでくださりありがとうございます!




