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初めての奇跡

 「どんどん熱が上がってきているわ。」

 祖母の声が響いた。かわいい妹の顔は赤く息も苦しそうだった。流石のユウナも不安になった。

 「お母さん、早く帰ってきて。」

 母たちは出かけてからかなり経つ。もう帰ってきてよいころだ。リンリン、玄関のドアベルが鳴る。

 「ただいま。」

 「お母さん。」

 祖母からただならぬ様子を聞いた母は、すぐにディエンのベッドに飛んできた。

 「どうしたの、ディエン。」

 「おかあさ…。」

 遅れて入ってきた祖父も孫娘の状態に慌てた。

 「すぐに医者を。」

 それからが大変だった。町医師が来て診察が始まり、薬が渡された。

 「熱が下がらないわ。」

 薬を飲んでも、症状は一向に良くならなかった。次に教会の巫女も呼ばれ、治癒の聖力も掛けられた。

 「これが精いっぱいです。」

 少し熱が下がったが、しばらくすると再び元に戻ってしまった。

 「もうどうすれば…。」

 「おかさ…。はあ、はあ。」

 珍しく取り乱す母。ユウナは父がいてくれたらと思った。

 「クリーガーを呼んでくる。」

 症状がどんどんひどくなる孫を見た祖父は、馬に乗り王都へ向かった。

 「お父さん。」

 ユウナは心から父の帰宅を望んだ。そうこうするうちに近所の人たちも見舞にやってきて、そのうちの何人かは民間療法のようなことをしてくれた。しかし、一向に効き目はなかった。

 「お母さ…、ごほ、ごほ、。」

 苦しむ妹、手を握る事しかできなかった。

 「ユウナ、疲れたでしょう。少し向こうで休みなさい。」

 母が妹の手を握り、ユウナはソファーに横になった。疲れていたのだろう、すぐに眠りに落ちたのだ。

 あれ、ここは…

 ユウナは夢を見ていた。

 何か大きく光るもの近づいてきて何事かを語りかけたようだったが、何を言われたのか全く分からなかった。

 そして場面が切り替わり、辺り一面の炎になった。

 怖い、怖い。

 自分の身が焼かれるような場面。

 きゃあ。

 はっと、目が覚めた。

 「ああ、もう息が…。」

 目覚めたユウナは母の悲痛な叫びを聞いた。妹の息はか細くなっていて、顔も黒くなりつつあった。

 「ディエン。」

 ユウナは妹に駆け寄り、その手を握った。

 (神様、神様…お願いです、大事な妹を連れて行かないでください…)

 必死に祈った。

 神様…

 「もう、ディエン…。」

 母の悲痛な声、妹の最後の時が刻々と近づいていた。

 神様…

 その時、ユウナは誰か知らない人が傍に立っているような気配を感じた。

 「誰?。」

 見渡しても、家族と近所の知り合いしかいない。

 ―本当に助けたいの?‐

 「誰?」

 今度ははっきりと聞こえた。

 しかし、傍にいる母も兄もそんな悪ふざけはしない。

 ー助けたいの?ー

 ユウナは心で、助けたいです、と叫んだ。

 ーあなたならできるわー

 凛と透き通った声。

 年上の女性のような声だった。

 でもどうやれば…

 途方に暮れたユウナだったが、不意に光のたまのようなものが近づいてきて、自分の手に吸い込まれていった。

 なんだろう…

 そう思いかけた次の瞬間、突然ユウナは次どうすればいいかが分かった。

 握っていた手を放し、妹の傍に立つと、

 「神と聖女エルセリアの御名のもとに命じる。生きよ。」

と叫んだ。

 娘の突然の行動に部屋の者たちは度肝を抜かれた。

 しかし、

 「あれ、姉ね。兄ちゃん。お母さん?。」

と、今まで死にかけていた病人がむくっと起き上がったのだ。

 その顔は艶々としており、血色が戻っていた。

 「もう、大丈夫ね…。」

 ユウナはにっこり笑ったが、耐えようもない疲労感を感じて、その場に崩れ落ちた。

 「ユウナ。」

 「姉ね。」

 薄れる意識の中で、皆が呼ぶ声を聞いた。

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