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出陣と将軍

 「では行ってくる。」

 クリーガーは、生まれたばかりの赤子を妻と息子に託し身支度を整えた。

 「お気を付けて。」

 「お父様いってらっしゃい。」

 見送る妻と息子。

 「ディグレ、妹たちと母を頼む。」

 クリーガーは、息子の頭を撫でた。この日ついにマテリア国との戦地へ赴く日となったのだ。 

 あれから約一年か。クリーガーは思った。

 ユウナも生まれたばかりの赤子ディエンも、妻は大切に育ててくれている。ディグレも妻に似てしっかりしているし、向こうの母も来てくれている。自分に万が一の事があっても、大丈夫だろう。ユウナの後々の件も妻に託している。これらも見越しての事だろうか。聖女カテリーナの思慮には、恐ろしさすら感じる。

 この一年、相変わらず聖女カテリーナは淡々としていた。まるで他人事のような口ぶり。本当に年内に亡くなるのだろうか。いやそれより、この戦争で自分の方が先に死ぬのか。

 戦闘については聖力の使い手は思ったより少ないという事で、戦力の大半は我が国王軍が担う事になった。元々聖力は防御や治癒などが主であり、銃剣は人力なので必然的に国王軍の力が重要にはなる。さらに軍は国王直属なため、戦闘行為全般については国王と軍の面子もあって教会の配下になることは出来ない。

 同時に何度か教会側とカテリーナは敵国の新兵器の憂慮を告げ戦闘配備に苦言を呈したが、それは国と軍の組織上ほとんどが国王側の意向の配備となった。かいつまんでい言えば「戦闘のプロに素人がなんだ」ということだ。自分はカテリーナの危惧も憂慮しつつ、やはり軍と戦術の関係上皆の前で表立って教会のプランには乗れなかった。

 そして国王も交えた会議で新兵器だろうが、この国にも軍としての自負はあるという結論になった。

 その後教会はあえて反論はしなかった。

 一抹の不安。

 しかし、これ以上の戦術はこの国では不可能であるのも事実だった。聖力の効果も不明。新兵器の威力も不明。何もかもわからないままの戦闘なのである。手堅くいかざるを得ない。

 あれこれ考えている間に王城に着いた。前線のフェミニア高原には既に双方の兵がいる。本隊の出陣なのだ。

 「クリーガー将軍。」

 「おうアルム、今日はよろしく頼むぞ。」

 「はい、力を尽くして。」

 隊ごとに整列、総軍出動の運びとなった。王都の守りは近衛兵団と教会の僧兵部隊にまかせて、クリーガー配下の全軍は最前線から距離を置きつつ名何重かに囲うようにして迎え撃つ陣営を取った。将軍も複数いるので、クリーガーに不慮の事があっても次がいる。流石に全員がやられたら、そこで終わりだが。

 クリーガーは最前線から20キロのところ、王都から前線までのちょうど中間で待機する。のろしと伝令、聖力による念話で戦闘状況を確認しながら歩を進める予定なのだ。

 「皆の者、国の守り頼む。」

 ガルド国王が右手を上げる。

 「はっ。」

 城に集まった兵は皆、敬礼をした。

 「では、出発。」

 ラッパと太鼓の音と共に、全軍が移動する。

 「将軍。」

 馬で進む将軍の後ろから、あでやかな声が聞こえた。

 「カテリーナ様。」

 見れば、彼女も馬に乗っている。昔からお転婆なところは変わらない。

 「いよいよですね。」

 「そうですね。カテリーナ様のおっしゃる通りでした。」

 「お互い頑張りましょう。」

 「ええ、くれぐれも無理なさらぬように。」

 「はい…。」

 彼女の顔が暗くなった。いぶかしく思ったが、

 「私がお守りします。」

と、言葉の残りを言ったら、

 「はいっ。」

と、彼女の顔が明るくなる。ふう、こういう時は少女みたいだ。

 「頼むからリーナ、後ろ髪引かせないでくれ。」

 「まあ、それであなたが生き残るなら、あなたの奥さんには申し訳ないけど、本望だわ。」

 全く、他人の気も知らないで茶化すのだから。

 「ふう、リーナ、僕は君に生きていてほしんだ。」

 「ありがとう…。」

 なぜか切なそうに笑う彼女。畜生、直ぐにでも抱きしめてやりたい。そんな思いを振り切るようにして将軍は馬を駆けた。

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