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運命の相手

 チリンチリン、

 「いらっしゃい。」

 おお、客か。

 「お邪魔するわ。」

 やけに若い声だな。

 「となりいいかしら、僕。」

 僕?やいこちとら、齢300と数十年、お前ら小便臭いガキとは格が…

 俺の横にすっと座ってきたヤツは若い女だった。

 ほえー、綺麗。

 こ、好み。

 「ジンジャーエールを。」

 「ハイよ。」

 ドキドキ、神様、これ、これ、もしかして、もしかしなくても運命?

 ジンジャーエール、ジンジャーエール。

 ごくごく飲んでる。 

 「美味しいわね。」

 俺、ジンジャエール好きになるかも。

 「こんにちは、私はシエルです。以後お見知りおきを。因みに私は18歳です。貴方のお名前は。」

 「えっ」

 おなじみの反応。10歳そこらだと思っていた顔。

 「あら、ごめんなさいね。私も18歳なのよ。名前はユウナよ。」

 同じ歳(設定だけど)ひゃっほー。ユウナ、可愛い響。ああユウナさん。

 「気にしないで下さい。よく間違われます。それより、綺麗な方ですね。どちらにお住まいですか。」

 本当の十代ならモジモジしてチャンスを逃すだろうが、こちとら引き籠もりとは言え300数十歳。機を逃すに如くは無しってんだ。まあ、ダメで元々。

 「えっ。まあ、その…。近くですわ。」

  向こうは品定めしてる、データ完了まであと三秒くらいか。

 「そうですか。少しご一緒しませんか。あっ、連れの方がいるとかですか?」

 「いいえ。その、いませんが…。」

 「じゃあ、クレアさん何かおすすめ下さい。」

 本日のおすすめを頼むと、海老と魚の冷菜が出てきた。

 食べながらたわいのない話で盛り上がる。

 意外にも話が弾んだ。

 「ユウナさんといると楽しいです。連絡先など交換できませんか。」

 「えっ。」 

 いけね、少し先走りすぎたか。

 「…。」

 「はい。」

 赤くなって可愛い。

 俺だってそんなに見てくれ悪くない、多分。

 しかし現時点で彼氏がいるかまだ分からないね。

 魔法使うか。

 否、良くない。

 魔法を使うのは。

 でも、でも、人生でこんなに運命感じたの初めてだし、少しくらいなら…。

 「ユウナさん、もしかして彼氏とかいますか。いるなら失礼を言いました。」

 「…。いません。」

 いないの?神様ありがとう。

 よかった、魔法でのぞき見しなくて。

 「連絡先、お願いします。」

 「はい。」

 イエーイ、よい雰囲気だこと。後一押しだ。しかし俺が最後の一押しを決めとしたとき、

 「おう、姉ちゃん、そんなチビより、俺と付き合わねえか。」

とプハーと臭い息。

 いつの間にかあの酔っ払いがよってきた。

 「何ですか、失礼ですよ」と俺。

 ユウナさんもあからさまに嫌そうな顔をしている。

 それでもぐいぐい来る酔っ払い。

 「うるせえ、ガキは引っ込んでろ。それより姉ちゃん。良いとこ知ってるんだけど。今から行こうぜ。」

 クソ、ハゲ、お前こそ引っ込んでろ。

 「止めて下さい。」

 ああユウナさん。

 おい、ハゲ、ユウナさんに触れようとするな。

 「お客さん、他の客にも迷惑だからセクハラは止めてよ。」

 ほらクレアさんもそう言ってるだろ。

 「なあ良いだろ。」

 駄目だこの親父。

 「止めて下さい。」

 ああユウナさん。もうこうなったら魔法で…

 そうこうしている間にクソハゲの手がユウナさんの肩に触れようとした。

 「いい加減しろよ…」

 は?何?俺何も言ってない。ハゲの手が一瞬止まる。

 「触るな、クソハゲ、調子にのんじゃねえぞ。」

 えっ、ユウナさん。

 彼女を中心に店の空気が固まる。クレアさんも動かない。

 十数秒後、最初に起動したのは、俺、じゃなくてハゲ。

 「なんだと、このアマ。下手に出れば、つけあがりやがって。」

 酔いも手伝って逆ギレ&激昂。

 右手をグーにして殴りかかった。

 か弱い女性に手を挙げるとは、もう許せない、魔法で…

 バーン。

 辺りに光が炸裂。ハゲが吹っ飛んで、反対側の壁に激突し衝撃で店が半壊した。

 もうもうと埃が立っている。

 五体無事、なわけがないだろう。

 ただおかしいことに、自分は魔法を使ってない。

 なにこの破壊魔法。

 「つけあがってるのはどっちじゃボケ。次やったら確実にぶっ○してやるからな。」

 ええー、体が光っている。

 「全く汚らわしい、神の裁きを受けると良いわ。」

 「ユウナ…さん」

 「はっ」

 人格変換?

 「ああ、恥ずかしいわ。」

 手で顔を覆ってしゃがみ込んじゃった。

 えーと、こういうときは、

 「ユウナさん、貴方が無事で良かった。私も助けるのが遅れてすみませんでした。本当に悪い輩がいるものです。」

と見なかったことにするのが最善。

 「幻滅したでしょうね。」

 「いいえ。怒るのは当然だと…。」

 ユウナさんは立ち上がった。

 まだ顔が赤く、俯いたまま。

 「しかしどこでこんな魔法を習ったのですか?」

 これかなり気になる。

 もしかして魔法使いなのだろうか。

 やっぱり運命?ありがとう神様。

 「ええ、実は私は神聖エルセリア国教会の神官ですの。幼少期からずっと修行してきました。それで男性にも不慣れですのよ。」

 そう、神官。

 ありがとう神様。

 えっ神様…

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