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第四十四話 決起集会①



 ある料亭の個室に俺達チーフ全員は雨田から招集させられる。

 全員が何故呼ばれたか知っているからこそ全員が参加しているし、その中には普段会社の飲み会にも来ない飛谷の姿も見られた。


「遂に開催日は決まった。今日は決起集会というわけだ」


 白鳥と飛谷女性陣以外は全員が喪服だ。

 これは決起集会における正装のようなものだ。デスゲームを開催する場合にはどう足掻いても数名は死亡する。

 その喪に服すというのが目的のようだ。


 女性陣も黒い服に身を包んでいるが、飛谷は明らかに肌を露出させ過ぎている。ただ雨田筆頭に全く注意する様子もなく全員がスルーしている。



「小鳥遊、君の口からまずは乾杯の音頭でも聞こうか」


「……それは雨田社長の役割だと思いますが」


 とか言いつつ、とりあえずグラス片手に立ち上がって周囲を見回す。

 基本的には上座には社長が、そして年齢順に座っているため俺と飛谷が一番下座にいる。


 合計十名程度の隠れた決起集会。

 覚悟の決まっている彼らを前に何を語るべきか。



「企画運営部門の小鳥遊です。毎度毎度雨田社長が乾杯の音頭を振るということで前々回辺りから話す内容がなくなってきているのはお察しのことでしょう」


 毎回毎回決起集会の度に俺に挨拶させ続けたせいで既にネタ切れもいいところだ。

 隣で飛谷がニコニコしているのを見ると多少むかついてくる。人が困っているからと言ってその笑みは頂けない。



「今回は恐らく今までよりも盛り上がることは確約されています。それ故チーフの皆様はぜひともご安心頂けるでしょう」


 連帯責任になるチーフたちを安心させるための方便ではない。本気で俺はそう思っている。


「そして、もしかすると私が表立ってデスゲームを企画するのは最後になるでしょう」


 飛谷以外がぎょっとしたような表情に変わる。

 最後というのが最期と読み取ったからだろうか。勿論このまま勘違いさせるつもりはない。



「後継者になり得るような逸材を見つけましたので、その育成に勤しむという意味ですがね」


 なるべく茶目っ気があるようににやりと笑ってみせるが、周囲は全く笑うことなくため息をつくだけだった。

 あまり俺の冗談は伝わらないようだ。

 とりあえず俺は乾杯の言葉を口にし、ワンテンポ遅れてチーフたちはグラスを合わせた。





「その後継者になり得る逸材が参加者にいるのかね?」


「そうですね。なのでもしも生き残ったら是非採用したいところです」


 雨田が俺に話しかけてくる。

 基本的に決起集会という名目だが、皆好き勝手に食事を楽しんでいる。


 特に飛谷は殆ど俺以外と話すつもりはないようだし、鴇田は食事に集中している。白鳥は周りをきょろきょろ見回しながら居心地が悪そうだった。



「なるほどね。それでは生き残ることに期待しようか」


「ですね。普通に死ぬ可能性もいくらでもありますし」


 なるべく生き残ってほしいけれど、そればかりは俺の希望でどうにかできるものではない。

 

「ところで、そろそろギミックについて教えてもらえないかい?」


「当日までのお楽しみということでいいのでは」


 なるほど、それで雨田はわざわざ俺の隣に来て話しかけているのか。

 他のチーフたちは俺に一任しているところもあり、わざわざ内容について聞くつもりはないので個人的に聞きに来ているのか。



「盛り上がるという君の言うことは信用しているが」


 その反応は信用していないように見える。ただ、雨田の立場上知ることによって不安を減らしたいのだろう。

 ……まったく、仕方ない。


「雨田社長。デスゲームで盛り上がる要素ってなんだと思いますか?」


 いきなり答えを言ってもつまらない。

 俺はそう思ってしまうからややクイズのような形になってしまったが、雨田にそう質問してみる。


「盛り上がる。それはスポンサー的な意味合いでいいんだよな?」


「そうですね。見る側としての盛り上がりです」


 雨田は数秒間考える。

 この点が既に芝原とは違う。奴はすぐに安易な答えを得ようとしている。



「麻空みたいなスポンサーからしたら、やはり心理戦とか苦渋の選択のように悩んで苦しむような展開じゃないのか?」


「その通り。感情の混沌というのは人間らしく無様であり、時として感情のない生物よりも劣った選択を取る」


 憎しみに駆られて最悪の方向に進むことなどいくらでもあるわけだ。

 日常生活でもいくらでもあることを、デスゲームのように極限状態では更に顕著に出る。



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