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第四話 迷惑な後輩③

「そもそもデスゲームに面談なんて必要なんすか?」


「では逆に質問するが、どうしてそう思う?」


 芝原はグラスを前後に揺らして香りを楽しんでいる。

 俺が仕方なく許可したからだが、随分と余裕を持ち始めた。


「なんつーか、俺の知ってるデスゲームってなんかこう、ヤンキーとかごろつきとかホームレスとかがしているイメージなんすよね」


 別にそれを否定するつもりはない。

 現に今芝原があげたようなデスゲームを開催したこともあるし、映画や小説、漫画などでフィクションの作品でもあるわけだ。


だが、


「それは殺し合いの場合だな。本質的にはデスゲームのジャンルの問題で、俺が企画する物とは違うというだけだ」


 スポンサーたる金持ちたちがデスゲーム求めるものは、俺の調べでは大きく二つに大別される。

 まず先程芝原があげたような残虐非道の行い、道徳や倫理観、法律を無視した死のゲーム。命の刈り取られる瞬間や残虐性をメインにしたもの。

 そしてもう一つは俺が企画するような、性格、本質に問いかけるような駆け引きのある人間たちが織り成す死のゲーム。裏切りや騙し合いをメインにしたショーのようなもの。


「俺も芝原の言うような殺し合いを企画したこともあるんだが、意外とスポンサー受けが良くない。飽きてしまうんだ」


 殺し合いというのは基本的に強者が一方的に弱者を蹂躙するゲームになることが多い。参加者の中で周囲を蹂躙する者を最後は運営サイドによってゴミくずのように殺される流れだが、スポンサーたちの中では既にそれをやっているものもいる。


 個人的に人を拉致してデスマッチなどがいい例で、賭けとして盛り上がることもあるが単調になることもある。無難だが、大盛り上がりはしないと言ったところだ。



「男女の筋肉量、武器の扱いなどの直接的な差が出る物理的なデスゲームは好みが分かれる」


 特に大口顧客の麻空はそういった単純なゲームには飽きている。その顧客のニーズにこたえるのが俺達だ。

 頭脳戦や心理戦と言った分野が得意な俺を高く買っている理由もそこにある。



「頭脳戦や心理戦で避けられないのがルールだ。純粋な殺し合いはルールがない分、知能が低くても現状がわかりやすいしテンポがよくなる」


 ルールをまともに理解できない参加者がいる場合テンポが悪くなるし、最悪の場合ゲーム性を破綻させる可能性がある。


 芝原はワインを飲みながら、頷く。


「なるほどっす。つまりそいつらがルールを理解できそうかを確認するんすね!」


 デスゲームの参加者には自ら希望する者、そして他者から参加させられる者に分かれる。

 俺が面談に行くのは勿論希望者だ。強制的に参加させられるものは勿論無理で、婉曲的に、間接的に情報を集めるしかない。


 尤も、強制的に参加させられる者の多くは、何億という無駄な金銭を投資してでも地獄に落としてやりたいという酔狂な狂人からの依頼だ。

 

「強制参加組は、どうしてもリスクが高くなる。そうなるとせめて希望者だけでもまともな理解力を持っているか確認する必要がある」


 俺からしたらデスゲームで誰が勝とうがどうでもいい。本当の最低目標はゲームが無事に終わること。

 次に盛り上がることだ。破綻したら俺の人生も破綻する。



「でも、参加者管理部門ってあるじゃないですか。そこで選んでるんじゃないんすか?」


「選んでいるし、そこで確認されているからほぼ間違いはない。俺は最終決定、ハンコを押すようなポジションというだけだ」


 資料はとっくにもらっているし、彼ら彼女らの調査資料はほぼ正しいだろう。特にチーフには絶対の信頼を寄せているが、何も見ないで字面だけ読んで許可をしないだけだ。

 ついでに賭けに役立つような、スポンサーが喜びそうな情報を集めるわけだが。



 俺は一度席を立ってから金庫から数枚の紙を持ってくる。

 面談を終えていない参加者名簿で、残っているのは都内に三人、北海道に一人、福岡に一人。



「今日デスゲームの開催が決まったが、一応水面下で数人は面談が終わっている」


 流石にこの日を迎えてから全員の面談は俺の作業量が多すぎたため、フライング気味だが終わらせておいた。


「え、つまり北海道と福岡に出張で遊びに行けるってことっすか!?」


「……お前、出張を何だと思ってるんだ?」


 経費で落ちる旅行と勘違いしている節があるが、流石にそれをするなら俺は置いていくつもりだ。

 これから面談する必要のある参加者名簿を見ている芝原に向かって、俺は何気なく質問リストから適当に選んで聞く。



「例えばこんな質問がある。芝原、このゲームに勝利し生き残った場合には、億を超える賞金が手に入ります。何に使いますか?」


「お、そういうの聞くんすね。面白そうじゃないっすか」


「全員が全員賞金目当てじゃないからな。単純にスリルを味わいたい、自己顕示欲を満たしたいというのもあるな」


 デスゲームで得られるものは金だけではないようだ。

 名誉や自己満足、スリルなどもあるようだが、残念ながら俺には理解できない。


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