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第三十九話 花坂美琴②


「さて、これから面談を行いますが、基本的にご自由にお答えください」


 いつも通りの定型文を述べる。

 それに対して花坂は背筋を伸ばしてソファに浅く腰かけた。


 俺に対しては芝原に向けたような鋭いものは向けていない。



「宜しくお願いします」


「我々も色々調べていますが、基本的には知らない体で質問しますのでお願いします。さて、何故このデスゲームに参加したのでしょうか?」


「私の親友を殺したやつらをデスゲームに参加させたいんです。そのためにはお金が必要なので」


 ……随分とぶっ飛んだ思想を持っている。

 他の人間をデスゲームに参加させるべく自らデスゲームに参加するとは。


 眼を見るに、恐らく俺や飛谷にも負けないような死んだ目をしていることだろう。



「その親友は何故亡くなったのでしょう」


「虐めです。クラスメイトや教師から虐められていました。そう遺書に書いてありましたし」


「……クラスメイト、ですか」



「なにか?」


 俺は録音されていることを再確認しつつ、咳払いをする。


「いえいえ」


 じろりとにらんでくる大和撫子。俺は肩をすくめながら聞き流すように言う。

 人から好かれそうな顔ではあるものの、今はやや目が血走っており狂気を感じさせる。



「虐めによる自殺ですか……それはお辛いですね」


「許せません。ずっとずっと復讐の機会を考えていました」


 そうしている時に飛谷が見つけ出したというところだろう。

 飛谷曰く、毎日懲りずに掲示板や相談サイトなどで只管復讐を目論んでいたため異質さを感じたためコンタクトを取ったようだ。


 半年以上続く復讐心。流石は飛谷が一目置くほどの存在だ。



「ご自分が死ぬ可能性については考えないのですか?」


「考えても意味がないので。恵がいなくなって私の人生は死んだようなものですから」


 入れ込み過ぎているのは自覚しているのだという。

 ただ、自分が思春期の時に一番の親友が自殺したら発狂するのかもしれない。俺は絶対にしないだろうけれど。



「人を殺すことについての罪悪感はありますか?」


「あります。それを踏まえても復讐したいだけなので」


 ……狂っている、と恐らく芝原は言うだろう。

 俺でもわかるが、流石にこれは常人の発想ではない。



「……因みにですが、一人デスゲームに参加させるにはいくらかかるか知っていますか?」


「いえ、想像もつきません」



 その辺り、飛谷が教えていないのか。

 俺は概算した計算式を知っているが、今回のデスゲームに参加しても十人程度を支払うことなどできない。それくらいの大金がかかっているわけだ。



「デスゲームで勝てれば、恐らく数人は招待できると思います」


 俺がそう言うと、明らかに動揺したように花坂は目を見開く。

 困ったように視線を彷徨わせ、手は落ち着きなく無駄に開いたり閉じたり繰り返している。


 恐らく、デスゲームに参加すれば全て解決するのだと思っていたのだろう。


「えっと、それは困ります……やつら全員に復讐しないと」


 その雰囲気だけ見れば年齢相応の女子高生だが、話している内容はただの復讐の鬼だ。



「あの、どうにかしてお金は手に入りませんか?」


「額も聞かずに面白いことを言いますね」


 そう、彼女からしたら金額はどうでもいい。如何にして復讐するかしか考えていない。だからこそ俺が適当な額を言っても全く気にしないはずだ。



「沢山人を殺せば賞金が増えるとかありませんか?」


「……そもそもどんなゲームかも知らない状態でそう言えるんでしょうか」


 花坂はあたふたした後、少し平静を取り戻したように一度深呼吸をした。



「もしかして、無理なんですか?」


「その無理がどんな意味合いかはわかりませんが、今回行われるのは人狼ゲームです」


 はっきり言って、この少女は面白い。

 今の状態でも俺は恐らく当日ピックアップしてでもスポンサーたちに紹介したいレベルで壊れている。


 恐らく親友が自殺して狂ったわけではないのだろう。元々狂っていたものが、親友の死によって顕在化したわけだ。



 木本に説明したようなざっくりとした説明をする。飛谷の情報ではこの花坂は人狼ゲームについて把握しているから適当な説明でも通じる。


「あの、役職って選べないんですか?」


「と言いますと?」



「そしたら人狼がいいです。人狼の方が賞金は手に入るはずですし」


 ……流石の壊れ具合。

 そもそもお金を稼ぐためだけに特化している発想。恐らく味方の人狼をどこかで始末する算段までつけているのだろう。


「その四億円でも全員は無理なんですか」


「……一応概算ですが、一人一億弱と考えてください」


 もしももっと見栄えするようなことがあれば、スポンサーたちも面白がって金を出す可能性があるが凡人のデスゲームが盛り上がるかはわからない。

 それに俺も命を賭けられるかと言われると自信を持てない。


 この女子高生の壊れ具合は俺も飛谷も買っているわけだが、だからと言ってこの復讐したいとされている奴らを買えるかというのは別問題である。



「八人殺したらボーナスとかないんですか」


「そうですねぇ、それは難しいですね」



「あ、じゃあこうしましょう」


 何がこうするのか謎だが、本当にそこまでして親友を殺した連中に復讐したいのだろう。なんという執着心。なんという復讐心。


 厄介な人間の面談になったな。

 狂人飛谷が好きそうな人材だ。そして俺も。



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