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第三十六話 執念深き復讐者②

 我ながら気持ち悪い嘘の上塗りだった。


 なんで数日学校を休んだのか、体調が悪くなったからと。

 担任から自殺について告げられて初めて動揺したふりをした。


 流石に私たちが同じ部活だから動揺してもおかしくなかったし、虐めていた奴らが青白い顔になっていたのも見ていた。

 でも、それを見て見ぬ振り。


 周りのクラスメイトはどう触ればいいか迷っているようだった。なるべく私は明るく振舞う。

 から元気だと思われているかもしれないけれど、別にそれでもいい。


 私と恵は仲が良かったことは自明だ。

 だからこそ親友の死でも明るく回りと仲良くする私は気持ち悪く見えるだろうか? 見えないとは思っている。



 なるべく紛れるように。

 ばれてはいけない。絶対に虐めた奴らを後悔させてやる。


 ……でも時間がない。

 今は高校一年生。卒業すればバラバラになって追うのは難しいかもしれない。


 あと二年しかない。

 

 ネットで更に調べ始める。

 復讐、ばれない、呪い?


 どんなキーワードを打てばいいのかもわからない。

 だって、そんなことしようともしたことがないのに。


 復讐代行みたいのもあるみたいだけれど、明らかに胡散臭い。


 ばれるような復讐ではまとめて殺すくらいしかない。



 冷静に色々考えられる自分が怖い。

 怖いのかな。女ってみんなそんなもんじゃないのかな。


 女ってグループでまとまっているくせに抜けた瞬間に悪口地獄。

 人を蹴落とすことに特化している気持ちの悪い女たち。



「……そんな簡単に見つからない」


 思いつくワードを只管打ち込んでみるけれど、成果はない。

 どうしよう、焦るばかり。


 私の親友を殺した奴らを復讐しないと。





 気持ちの悪い奴らだった。

 人が死んだところでみんなすぐに日常に戻っていった。


 クラスメイトなんてそんなものだ。

 ただ同じ年に生まれた、ただ偶然に出くわした関係。


 ただそれだけなのだ。クラスメイトが死んだところで気が付けばまたいつもの平穏な日々。

 その中で取り残されているのは私だけ。


 虐めていた奴らも数日たてばいつも通り。

 始めはおっかなびっくり私に接してきていた奴らも私が何も言わなければばれていないと思ってるのか、また絡んでくる。


 気持ち悪い。

 たまに吐き気がした。


 私の恵みを殺したあいつらにも。それと平然と仲良くできる私にも。


 担任は未だに自殺への対応に追われているようだった。

 当たり前だ。世間的には認められていないがこれは虐めによる自殺だ。


 虐めアンケートとかいう名目上の対応を見せていた。

 勿論そんなくだらないアンケートには何の意味もない。



 大人たちはそれで納得しているのか。

違う、別に大人たちは虐めを解決しようとしていない。ただ自分の立場を守りたいだけ。


 大人には頼れない。

 やっぱり自分でやるしかない。


 でも、ただの茶道部の女子高生がどうやって。





「あ、電話」


 恵が殺されてから半年が経った。

 最早恵は転校したんじゃないか、そんなレベルで全てが薄れていった。


 担任だって臭い物に蓋をするように触れなくなったし、気が付けば机や椅子、名簿の名前すら恵の名前が消えていた。


 そして私は学年を上がり、クラスはバラバラになった。

 それでも復讐すべき奴らの名前は一日たりとも忘れたことはない。



 半年が経っても私の復讐は燻り続け、寧ろ時間が経ってまるで始めから存在しなかったように学校生活を楽しみ続ける奴らへの恨みは募ってくる。


 茶道部では、清川恵というワードは禁句になっているようだった。

 特に私がいる前では絶対に出てこなかった。


 出さなければ、私は偽りの仮面をつけ続けることができたし、周りもそれを良しとした。



「……電話?」


 ある休日、知らない番号からかかってきた。


 多分普段の私だったら絶対に出なかった。

 出るつもりもなかったのに、なんでだろう。考えても見なかったけれど、何故か出ていた。




『こんにちは、花坂美琴さん』


 若い女性の声。

 私が知らない声だ。


 でも、向こうは私を知っている。気持ち悪い。


「……あなたは誰ですか」


『私はあなたにとっての死神……とでも言っておこうかしら』


 私にとって?


『清川恵、虐めで自殺したみたいね』


…………!?

 電話越しでも女は私が動揺したことに気が付いている。


 それくらいいきなり私の急所をついてきた。


 自分の心臓の音がバクバクと脈打っている。

 何故、まず誰。目的は何。


 冷静さや怒り、焦燥が入り混じる。



『復讐したい?』


「…………まずあなたは誰」


 電話越しの女性は笑った。

 声を出してまで笑った。


 それが私を不快にさせる。


『その答えを知りたいの? 折角あなたの復讐のチャンスを持ってきてあげたのに』


「チャンス?」


『もしもあなたが虐めた人間たちに復讐しようと思うのなら、死神である私はその可能性を持ってきてあげた。半年間何の方向性も可能性も見いだせなかったあなたの為に』


 死神を名乗る女はそう告げた。


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