第三十話 狂人の集い②
「まず、この状況をチーフ二人から聞かせてください」
俺の名前は恐らく会社では相当知られているだろう。各部門の社員は俺の指示に従って黙って椅子を並べ始める。
というかそもそもこいつら椅子を出していないとか会議するつもりなかっただろ。
俺は両陣営の間にいるように座り、一応年上である白鳥に話を振る。
「私たちは日々デスゲームに役立つものを開発しているんです。それは小鳥遊チーフも御存じでしょう?」
手元に置いてあった首輪やブレスレットを俺の方にスライドする。
これは過去に使った遠隔によって電気刺激や刃物が出る仕組みのものだ。
「ですが、同じような代物ではやはりスポンサー方も満足できないと思うの! で新しく開発したのがこれ!」
「…………」
新しく別のリングを放った。
俺は軽々しく触らないものの、今までのものと比べてみる。
「首につけたらスイッチ一つで爆発して気管に大ダメージを与えて呼吸ができなくなるものよ! 苦しんで暴れる様はすっごく受けると思うのよ!」
ああ、それで爆発か。そして俺は鴇田のほうに向きなおる。
鴇田は腕組みをして白鳥を睨みつけている。
「俺ら機材物資部門からしたらどうでもいいんだよ、こんなの。無駄にコストがかさばるし危険性が増すしあんたらの自己満足に俺たちを巻き込むんじゃねえよ!」
「なんですって?」
「……二人とも静かにしてください」
……つまり、この両陣営はこんなどうでもいいことで争っているのだ。
いや、どうでもいいというわけではないのだが、これは収拾がつかないわけだ。
白鳥からしたら今まで通り電気による死亡は飽きている。そしてスポンサーも飽きているという主張。
鴇田からしたら爆弾の方が運搬上危険であり、無理して変更させる必要もないという主張。
……両者の言い分は確かに通っているのだが。
「まずはスポンサー受けが大切でしょ!?」
「いや、そもそも運搬時に何かあったほうが危険だろ!」
平行線になるのも当たり前だ。
「因みにこの爆弾型の首輪は試作済みなんですか?」
「勿論、それがスイッチ一つで適度に苦しんで殺せる代物よ。威力だってしっかり計算したし実験済みの安全品なんだから!」
俺は首輪を手に取る。
さて、どうしたものか。丸く収めておかないと恐らくいつまでたってもお互いに矛先を向けたままだろう。
「何が計算済みだ。ついこの前うちの倉庫で爆破してんだぞ!」
……なるほど。それで鴇田はご立腹だったわけか。
俺が出張に行っている間にそんなことがあったようだ。
「お、おい小鳥遊お前!」
「ん? どうしました?」
俺がネクタイを外し、ワイシャツをずらして首輪をつけたのを見て、鴇田が慌てたように俺から距離を取った。
流石の白鳥も少し動揺したように視線を動かした。
「白鳥さん。貴女がご自分で仰いましたよね。これが安全品だと。それではどうして動揺しているんですか?」
「……いや、え、でも流石にチーフがつけるだなんて思わないじゃない!?」
半ば悲鳴。
そして特に機材物資運搬部門が俺から距離を取って会議室の隅に動く。
「それに、これはつけるにしては重過ぎるような気がしますね。誰か試してないんですか?」
「…………」
ということは、恐らく安全性が完全ではないという証拠。
そんなものをゲームにつけようと思っていたのか?
「とりあえず安全性は兎も角として、従来のものよりも重いのでこれは却下します。あくまでも快適なデスゲームが必要なので」
「た、小鳥遊チーフ。とりあえず外して!」
これをどうやって外すんだか。
と思っていると、白鳥がカギを俺に投げ渡す。
「まったく、コンセプトで衝突する前にまともな試作品を作っていただけませんか?」
「…………」
さて、とりあえず白鳥の方はこれで落ち着くだろう。
ただこれで場を収めてしまうと白鳥達の部門がやや不公平な気もする。
「鴇田さん、とりあえず今回参加者たちにつけるものについては従来から変更なしで」
「……お、おうよ」
何故そんなに俺を怪物か何か恐怖じみた表情で見ているのだろうか。
俺は周囲を見回すが、大体見たような表情だった。
……そんなもので無駄に時間をかけさせないでほしいものだ。
「そうですね、白鳥さん。私個人で思うにですね、人狼側の殺害方法が最近マンネリ化していると思うんです」
基本的にこのゲームでは家のような場所で開催される。
各人には一人一部屋が与えられており、そこで各種役職をこなしたり夜を過ごしたりする。
そして夜になり、襲撃を選択された村人は気絶させられた状態で人狼のナイフによって刺殺される。
気絶させる理由は簡単で、抵抗されると面倒だからだ。決して安らかに殺したいというわけではない。
「なので、新しい殺し方について是非候補を考えておいてください。今回は無理でしょうけれど、次回の参考にしますので」
「ありがと」
一応こうして丸く収めることにした。




