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第二十五話 植村拓也①


「で、次に面談するのは誰でしたっけ?」


「ん、ああ。二十四歳男性、デイトレーダーだな」


 俺と芝原は新幹線から降りて、集合場所に向かっていた。

 芝原の手にはビールが握られており、またもや観光気分のようだった。


 別に構わないが、一応上司との出張なんだがな。



「……うわ、すげぇ経歴」


 植村(うえむら) 拓也(たくや)

 福岡出身で大学在学中に株取引で何億も稼ぎ、何不自由ない生活をしている。

 学生時代から天才と称されており全国模試では殆ど一位を取り続けていたにも関わらず、殆ど高校には出ていない。更に大学は地元の県立大学に進んだもののこれもまた出席していない。調べた限りでは金で出席や単位を買っていたという。

 そしてオンライン上の人狼プレイヤーでありランキングは現在一位。苗字と名前からとって『uetaku』がユーザー名だ。

 非常に負けず嫌いで、負けても勝つまで繰り返す性格。常に人を見下したような態度をとっていると書かれている。



「弁護士と医者の家ってすごいっすね」


「まあ一定数いるだろうが、特筆すべき点は本人の頭脳だろう」


 頭脳に関しては全く問題ない。

 となると確認すべき点は、人格面。


 俺は飛谷が何故こいつを参加者に加えたのか大体理解しているが、一応会ってみないと正確なことは言えない。



「なんか性格悪そうっすね」


「天才故の偏りってところだな」


 上に立つものは下にいるものが見えない。

 下にいるものは上を見上げることはあるが、上に立ち続けるものは下を見ることはない。


「とりあえず、また邪魔はすんなよ」


 また、というわけではないが一応釘をさしておく。

 芝原は元気よく頷き、ビールの空き缶を近くの公園に捨てに行った。


 俺たちが集合をかけられたのはとある事務所だ。

 会社の支社というわけではないが、恐らく関連施設なのだろう。


 そこにこれから会う植村拓也がいるわけだ。




「おいおい、この俺を待たせやがって。目隠しも疲れんだよ」


 目隠しされた男は目隠しをされている状態にもかかわらず、ソファの上で足を組んでいた。

 身長は俺と同じくらいで、黒髪をオールバックにまとめている。テーブルの上には眼鏡が置かれており、いつもは眼鏡をかけているのがわかる。それが植村拓也だ。


「すみませんね、お待たせしてしまって」


 俺は木本の時と同じくマスクをして部屋の扉を閉めた。

 目隠しをされている理由については不明だが、恐らく自主的に移動に従ったのだろう。だからスタンガンなどで眠らせる必要がなかった。



「……ん、あんたが面談するっつー人間か?」


 目隠しを外した俺を見て、まるで値踏みする様に全身を見る。

 そして隣にいる芝原を見た後に一度舌打ちをした。


「何か?」


「…………いや、頭悪そうに見えただけだ」


 俺は笑うべきか迷った。

 確かに芝原は頭悪そうに見えるのはわかる。そもそも金髪のちょんまげなんだから。


 そして当の芝原はそれを言われても何のリアクションも示さなかった。

 植村はもう一度だけ舌打ちをした。恐らく彼からしたら俺よりも芝原の方が狙いやすかったから挑発してみたのだろう。


「先にお話ししますが、この面談はスポンサーたちにも伝わりますので」


 そこまで言ったところで植村が俺の言葉を遮る。


「あ、俺別に金が欲しいわけじゃねえからそういうのいいわ。とっととデスゲームをやりてえだけだ」


「ああ、そうですか。では最低限の面談にしますね」


 面談をしないわけにはいかないし、恐らくそれはこの植村も聞いているのだろう。

 その辺り飛谷が事前に説明しているはずだ。


「そうそう、あんたは多少話が通じるみたいで助かるよ」


 随分上から目線なセリフだが、俺はこういう人間は嫌いではない。

 そしてスポンサーたちも嫌いではない。


 俺からしたら、その人間が混ざることによってゲームが混沌と化して盛り上がるから。

 スポンサーからしたら、そういう偉そうな人間が無様に死ぬ姿を見られるから。



「あなたは何故デスゲームに参加したいと思ったのですか?」


「俺は人狼ゲームにおける最強プレイヤーだからだ」


 ……うん、何もわからなん。

 だが、これ以上聞く気にもならない。



「枯芝を殺したのはあんたらか?」


「……はて?」


 枯芝孝之。

 第四回のデスゲーム参加者。

 騎士の役職を引いたものの、全く一度も護衛できなかった残念なプレイヤー。自分の命を優先して最後まで騎士が名乗り上げなかったが、人狼側の占い師が枯芝のことを人狼だと言ったため、偽物の占い師を処刑することができそうだった。


 偽物の占い師がすぐに処刑されることによって、枯芝を中心に話が展開していればすぐに終わるイージーゲームになるはずだった。

 正直なところ、その時点で俺はこのゲームがつまらないものになると思っていた。


 実際のところは、違った。

 枯芝は自らが騎士だと名乗ると襲撃で殺されることを危惧したのだろう。


 言論だけで偽物の占い師を処刑し、それでもまだ自らが騎士だと名乗らなかったのだ。



 そのせいで村側は本物の占い師も一応処刑する羽目となり、どんどん情報が得られなくなっていった。


 最終的には襲撃し続けて人を殺し続けた人狼が精神的に耐えられずに自ら自害するというとんでもない結末を迎え、自らの仕事を一切しないまま騎士が生き残るという珍しい展開になった。



 その男は、秘密を漏洩したとしてつい先日処刑された。

 理由については深く考える必要もなかった。


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