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第51話 物差し

※本エピソードにて、第三章は終了です!良かったら、ここまでの感想や評価等を聞かせて頂けましたら嬉しいです!

次話は明日の月曜日を一日挟みまして、火曜日から更新を再開致します!

今後共、応援宜しくお願い致します。m(_ _)m

  ──亜人の国。


 レスト山脈を挟んでオルキア大陸を二分する、人間の国とは違うもう一つの国。人間のオルキア王国と違い、多数の種族が混在する複合民族の国家だ。


「どこでも受けられるって……クロス、亜人の国で認定を受けるつもりなの?」


 少し驚いた表情で、ビビが尋ねて来た。


「勿論。亜人の国は一度行ってみたかったし、丁度いい。それに、ヘタにここに戻って来て、魔法剣を造ってくれと依頼されても面倒だからな。古代竜の依頼を片付けたら、そのまま俺達は亜人の国へ向かう」


 まさか、このまま国を出る事になるとは思わなかったのだろう。皆、俺の発言に言葉を失っている。そして、ようやく状況を把握したスミスが、一番に口を開いた。


「親父の故郷か……悪くねえな。一度、行ってみたかったんだ」


 オルキア王国側から国境を超えるには、それこそA級以上のライセンスか厳しい審査が必要になる。スミスは、父親の生まれ故郷に向かえる事を素直に喜んだ。そして、アスカが続いて尋ねて来る。


「クロス……初めから魔法剣、造る気が無かった?」


 ようやく、俺の考えを理解したらしい。アスカのその言葉にハッとして、ビビとスミスも何かに気付く素振りを見せた。


「当たり前だろ? どうしてあんなゴーザ(下衆野郎)の頼みを聞かなきゃいけないんだ」


「呆れた……。初めから利用するつもりだったのね、ゴーザ(あの男)を」


「ギルドの支部長までゴーザ(下衆野郎)の仲間だとは思わなかったけどね。お陰で、何の遠慮も無く利用させて貰ったよ」


 そう答えるビビの表情(かお)は、呆れつつもどこか嬉しそうだ。そして、そのまま更に聞いて来る。


「全く……もし、あの場で魔法剣の製造を依頼されたらどうするつもりだったの?」


 あくまで、俺達のランクはまだA級。確かに、それだと依頼の断りようが無い。だが、そんな事は些細な問題だ。


「何も問題無いさ。俺はアリスに、魔法剣を造る権利を()()()()()()()()()と聞いただけだ。造るとは一言も言って無い。ギルドの専属になれば……と、仄めかしただけだよ」


 こんなのは屁理屈だ。だが、俺はいざとなれば、その屁理屈を押し通すつもりでいた。


「あんちゃん……幾ら何でもそいつは……」


 通らない、とスミスは言いたいのだろう。しかし、俺は敢えて答えた。


「他にも方法は考えていたさ。一度、依頼は受けた振りをして、レスト山脈から戻り次第造ると言う答えとかね。そして、戻るまでにS級の認定(ライセンス)を手に入れる……だが、これだと、先に受けた依頼は有効だとか言われ兼ねないから、出来れば使いたく無かったんだ」


「そ、そこまで考えて……」


 ビビが、呆れた表情から驚きの表情に変わる。


「まあ何にしろ、俺はあんな依頼を受けるつもりは初めから無いよ。一ミリもね」


 戦争を左右する様な武器の製造。そんな話に巻き込まれるのは御免だ。それに、そもそも俺は、あのゴーザと言う男が気に入らない。とても王国騎士団に肩入れする気にはなれなかった。


「フフッ……さすが私の旦那様」


 少し誇らしそうに、アスカが呟いた。それを聞きつけたビビが、対抗する様に口を開く。


「ま、まあ、私のみ、未来の……お、夫になる男ですからね……クロスは。これくらいの機転、驚きはしませんわ」


 わざとアスカに聞こえる様に、そうアピールするビビ。二人の間に、目に見えない火花の様な物が(ほとばし)る。その迫力に気圧されたのか、スミスがすごすごと近付いて来て耳打ちした。


「あ、あんちゃん……本命はハッキリさせとかないと、後で大変な事になるぞ……」


 本命も何も、俺にしてみれば二人共まだ子供だ。何しろ、俺は中身がオッサンなのだから。俺に良心が残っている以上、そう簡単には受け入れられない。


「ははは……」


 とりあえず、笑って誤魔化す。そして、俺はわざと二人に向かって話しかけた。


「ほら、二人共! これから亜人の国に向かうんだ。ギルド(あの支部長)が、変な依頼をして来る前に出発するぞ。今から急いで旅支度だ!」


 パンパンと手を叩き、殺意をぶつけ合う二人の間に割って入る。そしてアスカとビビは、ようやく落ち着きを取り戻した。


 大人しくなる、アスカとビビ。俺は、そんな二人に話を続ける。


「今はどちらが本命かなんて、俺は考えて無い。これからの旅の中で、色々と見させて貰うつもりだ。だから、二人共仲良くしてくれ。当然、俺を困らせる様な嫁は選ばないからな?」


「……わかった」


「ごめんなさい……クロス」


 釘を刺され、シュンとするアスカとビビ。これで、暫くは安心だろう。そんな、俺達がやり取りする様子を見て、スミスが感嘆の声を洩らした。


「凄えな……あんちゃん。この二人を、ここまで大人しくさせるなんて……。それに、さっきのノコーモとの腹芸(駆け引き)と言い……とても、十代の若造とは思えねえ……」


 そんなスミスに、俺は答える。



「──俺の『物差し(ルール)』に従って貰っただけさ。アスカやビビ……それに、ノコーモ(あの支部長)もね」


 この世界の物差し(ルール)で、俺は縛れない。それは、これから向かう亜人の国でも同じだ。俺は、そんな事を考えながら旅の準備に取り掛かった。


読んで頂いてありがとうございました。

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