第51話 物差し
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──亜人の国。
レスト山脈を挟んでオルキア大陸を二分する、人間の国とは違うもう一つの国。人間のオルキア王国と違い、多数の種族が混在する複合民族の国家だ。
「どこでも受けられるって……クロス、亜人の国で認定を受けるつもりなの?」
少し驚いた表情で、ビビが尋ねて来た。
「勿論。亜人の国は一度行ってみたかったし、丁度いい。それに、ヘタにここに戻って来て、魔法剣を造ってくれと依頼されても面倒だからな。古代竜の依頼を片付けたら、そのまま俺達は亜人の国へ向かう」
まさか、このまま国を出る事になるとは思わなかったのだろう。皆、俺の発言に言葉を失っている。そして、ようやく状況を把握したスミスが、一番に口を開いた。
「親父の故郷か……悪くねえな。一度、行ってみたかったんだ」
オルキア王国側から国境を超えるには、それこそA級以上のライセンスか厳しい審査が必要になる。スミスは、父親の生まれ故郷に向かえる事を素直に喜んだ。そして、アスカが続いて尋ねて来る。
「クロス……初めから魔法剣、造る気が無かった?」
ようやく、俺の考えを理解したらしい。アスカのその言葉にハッとして、ビビとスミスも何かに気付く素振りを見せた。
「当たり前だろ? どうしてあんなゴーザの頼みを聞かなきゃいけないんだ」
「呆れた……。初めから利用するつもりだったのね、ゴーザを」
「ギルドの支部長までゴーザの仲間だとは思わなかったけどね。お陰で、何の遠慮も無く利用させて貰ったよ」
そう答えるビビの表情は、呆れつつもどこか嬉しそうだ。そして、そのまま更に聞いて来る。
「全く……もし、あの場で魔法剣の製造を依頼されたらどうするつもりだったの?」
あくまで、俺達のランクはまだA級。確かに、それだと依頼の断りようが無い。だが、そんな事は些細な問題だ。
「何も問題無いさ。俺はアリスに、魔法剣を造る権利を欲しくないですか?と聞いただけだ。造るとは一言も言って無い。ギルドの専属になれば……と、仄めかしただけだよ」
こんなのは屁理屈だ。だが、俺はいざとなれば、その屁理屈を押し通すつもりでいた。
「あんちゃん……幾ら何でもそいつは……」
通らない、とスミスは言いたいのだろう。しかし、俺は敢えて答えた。
「他にも方法は考えていたさ。一度、依頼は受けた振りをして、レスト山脈から戻り次第造ると言う答えとかね。そして、戻るまでにS級の認定を手に入れる……だが、これだと、先に受けた依頼は有効だとか言われ兼ねないから、出来れば使いたく無かったんだ」
「そ、そこまで考えて……」
ビビが、呆れた表情から驚きの表情に変わる。
「まあ何にしろ、俺はあんな依頼を受けるつもりは初めから無いよ。一ミリもね」
戦争を左右する様な武器の製造。そんな話に巻き込まれるのは御免だ。それに、そもそも俺は、あのゴーザと言う男が気に入らない。とても王国騎士団に肩入れする気にはなれなかった。
「フフッ……さすが私の旦那様」
少し誇らしそうに、アスカが呟いた。それを聞きつけたビビが、対抗する様に口を開く。
「ま、まあ、私のみ、未来の……お、夫になる男ですからね……クロスは。これくらいの機転、驚きはしませんわ」
わざとアスカに聞こえる様に、そうアピールするビビ。二人の間に、目に見えない火花の様な物が迸る。その迫力に気圧されたのか、スミスがすごすごと近付いて来て耳打ちした。
「あ、あんちゃん……本命はハッキリさせとかないと、後で大変な事になるぞ……」
本命も何も、俺にしてみれば二人共まだ子供だ。何しろ、俺は中身がオッサンなのだから。俺に良心が残っている以上、そう簡単には受け入れられない。
「ははは……」
とりあえず、笑って誤魔化す。そして、俺はわざと二人に向かって話しかけた。
「ほら、二人共! これから亜人の国に向かうんだ。ギルドが、変な依頼をして来る前に出発するぞ。今から急いで旅支度だ!」
パンパンと手を叩き、殺意をぶつけ合う二人の間に割って入る。そしてアスカとビビは、ようやく落ち着きを取り戻した。
大人しくなる、アスカとビビ。俺は、そんな二人に話を続ける。
「今はどちらが本命かなんて、俺は考えて無い。これからの旅の中で、色々と見させて貰うつもりだ。だから、二人共仲良くしてくれ。当然、俺を困らせる様な嫁は選ばないからな?」
「……わかった」
「ごめんなさい……クロス」
釘を刺され、シュンとするアスカとビビ。これで、暫くは安心だろう。そんな、俺達がやり取りする様子を見て、スミスが感嘆の声を洩らした。
「凄えな……あんちゃん。この二人を、ここまで大人しくさせるなんて……。それに、さっきのノコーモとの腹芸と言い……とても、十代の若造とは思えねえ……」
そんなスミスに、俺は答える。
「──俺の『物差し』に従って貰っただけさ。アスカやビビ……それに、ノコーモもね」
この世界の物差しで、俺は縛れない。それは、これから向かう亜人の国でも同じだ。俺は、そんな事を考えながら旅の準備に取り掛かった。
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