第02話 『不意討ち』
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《グルルルルゥゥゥ……》
今にも襲い掛かろうと、三尾の狼が近付いて来る。獲物を狙う目が、俺が逃げる事を許さない。ジリジリとその距離を詰め、飛び掛かるタイミングを計っている。
逃げられない。
瞬時にそう悟る。背を向ければ殺られる。かと言って、このままやり過ごせそうにも無い。悟られない様にゆっくりと、少しずつ後退する。目は反らさない。視線を外せば、その瞬間に殺られそうな気がする。
転生していきなり死ぬのか……。
諦めに近い考えに至った時、妙に冷静な自分に気が付いた。開き直りと言う奴だろうか。冷たい汗が伝う背筋とは裏腹に、何故かそんな事を考える余裕が出来る。
「どうせ殺られるなら……」
覚悟を決め、呟く。自然とわかる、その発動方法。固有能力。思い切り睨み合っている魔物相手に、今更【不意討ち】も無いとは思うが。だが、どうせ死ぬなら、使える物は使う。ダメ元だ。俺はグッと目に力を込め、三尾の狼を睨みつける。
発動……
「──【不意討ち】!!」
視界が薄っすら紅く染まる。どうせ大した効果は無いだろう。しかし、そんな俺の予想は見事に裏切られた。
三尾の狼の視線が泳いでいる。キョロキョロと慌てて首を動かし、辺りの様子を見回している。
(まさか、見失った……?)
明らかに俺の姿を捉えていない。今、三尾の狼の目は完全に俺を見失っている。そうか……! 不意討ちとは、こういう意味か!
自分の憶測を確かめる様に、俺はゆっくりと三尾の狼に近付いた。一歩ずつ、ゆっくりと。まだ、気付かれない。やはり、俺の予想は当たっていた。
俺はそっと、傍に落ちていた枯れ木を拾う。この時、不思議と『逃げる』と言う選択肢は無かった。一度、開き直り固めた決意は、俺の中で殺意に変わった。短いが、都合良く先が尖ったその枝を握り締め、慎重に三尾の狼へ近付く。
荒い鼻息が掛かりそうな距離。俺は、息を殺して枝を振り被る。ゆっくり、大きく息を吸い、意を決して三尾の狼の目に振り下ろした。
《ギャオオオオオオオオオンッ!!》
不意を突かれ、目を潰された三尾の狼が悲鳴を上げる。地鳴りの様な叫び声と共に、潰された目から鮮血が飛び散る。
「思った通りだ……!」
怒り狂う片目の三尾の狼を見据え、俺は呟いた。だが、もう一つ試さなければならない事がある。再び俺は、目に力を込める。発動……
「──【不意討ち】!!」
再び、視界が薄い紅に染まる。
またも俺を見失う、三尾の狼。どうやら、不意討ちとは名ばかりで、この能力は何度でも使えるらしい。
「この能力は……使える!!」
ハズレだと思っていた、俺の固有能力。しかし、これはもしかすると、とんでもなく反則級な能力なのかも知れない……。
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