第13話 赤い瞳
「──アスカ、下がってろ……」
庇う様にアスカの前に立ち、促す。魔物は一匹。何とかなる。【不意討ち】は何度も使えるが、一人ずつにしか使えない。一対一なら何も問題は無いが、集団で来られると厄介だ。そういう意味で、この戦いはやりやすい。
見下ろす岩壁の巨熊を睨み付け、俺は急所を推測する。やはり、首か。デカいが、やれるか……?
ジリジリと岩壁の巨熊に躙り寄り、距離を詰める。奴が飛び掛かって来るタイミングを見計らい、一気に懐へ飛び込んだ。固有能力、発動……!
「──【不意討ち!!】」
視界が薄い紅に染まる。
突然、俺を見失い、混乱の様相を見せる岩壁の巨熊。俺は素早く後ろに回り込み、背後から奴の首目掛けて飛び掛かった。硬い体毛を掴み、背中からよじ登る。流石に、気付いた奴は俺を振り落とそうと暴れるが、背中まで爪は届かない。
殺った!
岩壁の巨熊の首に纏わりつき、短刀で喉元を搔き切る。硬い体毛で覆われて無い、無防備な急所。刃はアッサリと食い込み、柔らかい肉を引き裂いた。
《ゴガアアッッ!!》
声にならない叫びを上げ、大量の血が岩壁の巨熊の喉元から吹き出した。暴れる。切り裂く。吠える。搔き切る。何度も何度も繰り返し、やがて、力無く崩れ落ちる岩壁の巨熊。ゆっくりと沈み込むその巨体と共に、地面へ着地する。
ズドオオオン!
地響きと共に横たわる岩壁の巨熊を見下ろし、俺はアスカに声をかけた。
「もういいぞ、倒した」
何気ない一言と共に、目線をアスカに向ける。もう、心配無い。魔物は倒したと。だが、アスカの様子がおかしい。呆然と立ち尽くし、俺の顔を見つめている。
どうした?
不思議に思い、アスカを見つめ返す。すると、アスカは我に帰った様にハッとなり、目を見開いた。何やら、言いたげな表情。驚き、僅かに口元が震えている。
「どうかしたのか?」
俺は尋ねた。少しだけ沈黙が辺りを包む。そして、意を決した様に、アスカは震える声でこう口にした。
「……ク、クロス……そ、その瞳……」
「瞳?」
意外な言葉に、思わず聞き返した。
瞳?
何の事だ?
しかし、そんな俺の疑問には答えずに、アスカは続けた。
「光る……紅い瞳。クロス……忌み子じゃない。悪魔の子──」
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