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常緑樹の木漏れ日が注ぐいくつかのベンチの一つに、ホワイトマンが腰かけていた。
足も組まず、退屈そうなそぶりも見せず、時計塔を見上げている。
暇つぶしに嫌々眺めているというわけではなく、かといって興味深く見ている風でもない。
そんなホワイトマンの横顔を、あたしは少し離れた場所から見つめている。
年季が入った公園とホワイトマンはとても相性がよくて、なかなか声をかけられなかった。
あたしがぼんやりしているうちに、ホワイトマンの方があたしに気付いて立ち上がった。
軽い音で、けれど大きく胸が弾む。
見られることには慣れているはずなのに、なんだかひどく気恥ずかしいような感じがした。
「こんにちは。来てくださってありがとうございます」
「こちらこそ、今日はお誘いありがとう」
ほのかな緊張感に気付かれないよう、大仰な仕草で腰を落とすと、ホワイトマンもそれに合わせてやけに格式張った会釈をしてくれた。
向かいに立ち、改めてホワイトマンを見上げる。
なんだか今日のホワイトマンはどこか印象が違って見える。
垢抜けているように思えるのは、太陽の下で会うのが初めてだからだろうか。
失礼にならない程度にその姿を観察し、はっと違いに気が付いた。
いつもホワイトマンの胸元を飾っていたのは、上品でシンプルなネクタイだった。
それが今日は、濃いグレーの生地に大きめのドット柄という派手なものを身につけていた。
ドットの一つ一つがレッド、イエロー、ピンク、ブルー、グリーンと主張の強い色なのに対し、円が重なり合うところは淡い色になっていて、グラデーションがかって見える。
円を目で追えば追う程、奥から複雑な模様が浮かび上がってくるようで、目がちかちかしてきた。
あたしの視線に気づき、ホワイトマンがそっと胸元を撫でた。
「やはり目立っていますか? 店員の方にすすめられるまま買ったんですが、こういう明るい色柄は若い方向きのものでしたね」
「そんなことない。今までに見たことがなかったから、珍しいなと思っただけ。よく似合ってるわ。本当よ」
まくしたてるような言い方になったことを怪しみもせず、ホワイトマンはくすぐったそうにはにかんで、礼を言った。
「あたし、遅かった? お待たせてしまったかしら」
「いいえ、買い物と散策がてら、私が早くホテルを出たんです」
「お買い物に行ってきたの。何かいい物があった? あ、もしかしてそのネクタイ、買ったばかりのものだったりして」
あてずっぽうで言ったつもりが、どうやら当たりだったらしい。
恥ずかしそうに俯いて、ホワイトマンは苦笑した。
あたしが時間をかけてめかし込んだように、ホワイトマンもわざわざ買い物に出かけたのだ。
そう考えたらあっという間に緊張がほぐれ、その後ろに隠れていた高揚感がひょこりと顔を出した。
「無事落ち合えたことだし、何か食べに行かない?」
「私も同じお誘いをしようと思ったところです。よろしければ、私に店を選ばせていただけないでしょうか」
お願いするわと頷くあたしに視線で返事をして、ホワイトマンは歩き出した。
反射的にその腕に絡まろうとして、この人はそういう相手ではないのだと思い出す。
行き場のない手を慌てて自分の方へ引き戻して、おとなしくホワイトマンの後に続いた。
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