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負けず嫌いのあたしは、公衆の面前での敗北をしつこく引きずっていた。
あの後何度となく彼の真意を想像してはみたものの、これだという案には到達できず、胸のもやは一向に晴れなかった。
大勢の男たちの前でみっともなく誘いを断られたことや、間抜け面をさらしてしまったことを思い出す度、頭の中でかっと火花が飛び散り、顔が熱くなってくる。
ああそうなの。
あなたはあたしと一緒にキャンディを食べるよりも、ゆっくり語り合うよりも、自分の眠りを優先するというわけね。
あたしには睡眠時間を削って話すだけの価値もない、そういうことなのね。
頭に血が昇ったままのあたしは、自分が過剰な考え方をしていることに気付けず、露骨に不機嫌面をしてしまう程だった。
そんなあたしをあざ笑うかのように、彼は性懲りもなく姿を見せた。
他の男を押しのけることなく、あたしから絶妙に見えない場所に佇み、周囲の輪が落ち着き始めた頃にすっと現れ、センスのいい小さな贈り物を性懲りもなく差し出す。
そして品のいい笑みを浮かべ、ステージの感想を手短に述べると、あたしの誘いを待つことなくあっさりと退場した。
彼はいつも、決まって同じ席でステージを見た。
全体がよく見渡せる、後ろから三列目の真ん中。
そこが彼の定位置だった。
毎晩同じ場所に姿勢よく座る彼は、ステージからもよく見えた。
癪だったのが、彼の贈り物がことごとくあたしの気を引いていたことだった。
それはおもちゃのようにカラフルな砂糖菓子だったり、ステンドグラスのように繊細な色調のハンカチだったり、知らない国の四季を写したポストカードだったりと、今までにもらったことのない類のものばかりだった。
不思議なのが、どれもうっとりと眺めたくなる程の品だというのに、包装紙やショップバッグに書かれているのは一流のブランドショップのロゴではなく、聞いたこともない店の名前であることだった。
一体どこでこんなものを手に入れてくるのか聞きたいのに、彼がいつもさっさと帰ってしまうせいで、その問いかけすら満足にできなかった。
顔を合わせる回数ばかり増えたけれど、彼があたしに誘いをかけたのは荷物を運んでくれた夜だけだ。
一定の距離を置いてそれ以上近付いてこない禁欲的な姿勢は、突飛な行動を取ってあたしの気を惹こうとする幼い男よりもずっと印象に残っていた。
それに対して、あたしは彼に誘いの言葉をかけ続けていた。
いや、実際にはあたしの誘い文句は、いつも彼の去り際のあいさつと重なって尻切れトンボで終わっていた。
満足に誘いすらかけられないことに、断られる以上の怒りを感じていた。
彼が何を考えているのかわからない。
彼は、あたしが近付こうとするとやんわり逃げていく。
それなのに毎晩贈り物を手に現れるのだ。
一向に前に進めず、かといって今更引くこともできず、フラストレーションがたまる一方だった。
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