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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

無知

作者: ちくわ

あなたはたられば、考えますか?

たらればで苦しむお話です。

「ごめんね。」


知らなければいいことがある。

この心に気づかなければよかったのに。

これでまた僕はひとりぼっちだな。

今更もう後戻りできないから僕は前を向いて行こう。なんてつよい人間じゃない。

そんな僕の悲しい恋の話だ。 


一緒にいるだけで心が落ち着くし何もかも許せる人。それが彼女であり僕の好きだった人だ。

クラスで、部活で。何もかもに馴じめず苦しんでた僕に気遣ってくれた優しい人。それが彼女だ。

どんなに救われただろう。彼女は僕にとって天使のような存在だった。

とても優しくていい人だった。彼女ととても仲良くなった。一人だった僕にとってとても幸せな時間を作ってくれた。仲良くなって一緒に遊びにいって写真を撮ってにっこりと笑った彼女の笑顔がとても印象に残っている。幸せな日々だった。

学校にいくのに理由なんて彼女がいるからだけでよかった。それくらい大好きだった。だからこの気持ちを伝えたのは後悔していない。…って強がりを言ってみる。いつだって僕はたらればの話をしたくなってしまう。

もしあそこで僕は彼女にこの気持ちを伝えなければ明日はもっと楽しくなっていたはずなのに。

ふと空を見る。

一度だけ時間を巻き戻せるとしたら僕はどうするんだろうか。今のまま巻き戻したら上手く彼女としゃべれなくて全て破綻してしまうのだろうなと自問自答する。

今だってまともにもう彼女と話せないのに。


数ヶ月がたった。もう雪がどっさり降って身動きがとれないくらいな季節。僕はちゃんと学校に通い続けている。状況は全く変わっていない。他愛のない会話だけでも幸せだったのだなとしみじみと感じる。

僕はあれから彼女と話せていない。目もあわせられなくなっていて。

僕の時間はあの日々から止まっている。歩けなくなっていて。前を向いても苦しい現実が待っているだけなのだ。

彼女は今年で卒業してしまう。今更なんだって話なのだが。未練たらたらな僕にとっては何となく焦燥感にかられてしまって。自分の情けなさにとてもいらいらしていた。

彼女なら僕を見てなんと思うのだろうか。呆れて笑ってしまうのだろうか。僕はとっくに自分にあきれている。

もっとしっかり自分に自信をもてたらこんなに後悔することなどなかったのに。自分がやったことに対する後悔なんて。彼女に伝えたことを。あの日伝えたことを。

と色々考えて…後悔して。僕は決意した。

こんなにも後悔しているなら。今更もう忘れてしまえないのだろうからもう一度伝えよう。僕の気持ちを。またあの日を一瞬でも過ごせるのなら。そのチャンスがもう一度来るかは分からないけれど。

もう一度会えたなら。僕は彼女にもう一度伝えよう。


そうして季節は巡り卒業式の日になった。

「卒業証書授与。」

彼女は元気よく返事をして証書を受け取った。

僕は玄関で彼女を待っていた。ありったけの決意と絞りだした勇気を持って彼女を待っていた。

寒空の中、僕はこれまでの日々を振り返っていた。これも僕の気持ちを整理するためにだった。


「…あら○○ちゃん。こんなところで…寒くなかったの?」

ふと声をかけられた。それは卒業証書の入ったファイルを持った彼女だった。

「あ…先輩…」

そこで見たのは僕の知っている笑顔で。

隣にいた男の先輩だった。

「…私を待ってくれてたの?…あはは…ありがとね…」

気まずそうに彼女は私に感謝を述べる。

「でも…ごめんね。君は恋愛対象じゃなかったんだ…私はね…」

男の先輩は困ったような顔でどう対応すればいいのかわからない様子だった。

僕は彼女の顔を見ることが出来なかった。それでも彼女は僕に話しかけてくれた。

「私のことは忘れて。どうしても忘れられないなら、私よりも素敵な人に出逢いなさい。それまでは……ね。」

彼女は私にリボンを渡した。制服のリボンだ。

「ごめんね。また会えたなら、また会う縁があったなら、また遊びましょう。」

そう言って彼女と男の先輩は人混みに消えてしまった。

「楽しかったよ。またね。」


僕は気持ちを伝えられなかった。僕はとても後悔している。

これで僕らお別れなのか。呆気ないなぁ…とまた自分を咎める。

これでまたひとりぼっちだ。彼女はとても幸せそうに卒業していった。将来また会うことはあるのだろうか。

もしまたあの頃に戻れたのなら。僕はまた僕の気持ちを伝えただろうか。

全てが通りすぎてどうしようもなくて。それでも時間は勝手に進んでいく。

僕は届かなかった声を嘆いてまた明日を迎える。


あの頃にまた戻れたのならあなたはどうしますか?

僕は届かなかった声を届かせるために…


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