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魔界王女  作者: 水色奈月
★Chapter 1
5/29

Part 1-5 Now, guys, your have a choice

230 East 21st Street Gramercy Manhattan,NYC 16:20


午後4:20 ニューヨーク市マンハッタン グラマシー区 西21番街230番地




 第13分署のカールス巡査部長は、若い警官三人を連れ、DEAの捜査官らが付いて来るに任せアパートのその女の部屋がある五階へと登りドアの周りに立ちホルスターに入れたP226の銃握に手をかけ呼び鈴のボタンを数回押し続けた。


 しばらくしてドアが開かれると革製の黒いロングコートを羽織った若い女が応対した。歳は二十代後半から三十代前半の長髪をした金髪の青い目をした美しい女性だったが上目遣いににらみつけられた。女の陰には黒いナイロンバッグを両手で前に下げた十歳はいかない男の子が隠れるように彼の顔を見上げていた。


「すいません。向かい13分署の警邏けいら巡査のカールスといいます。お嬢さんニ、三、ご質問にお答え下さい。いいですか?」


 丁寧に話したつもりだった。だが女はいきなり巻き舌でののしった。


"You'er not to take it personallY...but you should go fuck youerselF."


(:あんたに恨みはないがァ、すっこんでろォ)


 カールス巡査部長は頭にきたが冷静に警告した。


"I have I restrict it when you do not have you answer a question, and the police station come."


(:質問に答えてもらわないと拘束し署に来てもらうぞ)


"I'm gonnAa hurt you,blue persoNn."


(:ぶん殴るぜェ 警官野郎ゥ)


 その女の態度にカールス巡査部長は拳銃を抜きかかった刹那、女がいきなり右足を彼の股間へ蹴り上げ、カールス巡査部長は激痛にうめき前屈みになった。その状況に付いて来た巡査らは一斉にホルスターからP226を引き抜いたが、瞬時に彼らの目の前でとんでもない事が起きた。女が素早く部屋から二歩出てくるなり、前屈みで苦しむ巡査部長の首に右手を押しつけ首をつかむと左手の二人へその警官を振り回し投げつけた。それと同時に足を後ろに蹴り上げ右に立ち銃を構える巡査のトリガー・ガードを蹴り上げた。P226を蹴られた巡査は振り上げてしまった銃を天井に向け発砲してしまい愕然がくぜんとなった。








 状況は瞬時に転じる。


 そう信じて何の曇りもない鏡のように己の信念を疑わないアンは、自分に銃を向けようとホルスターからハンドガンを抜きかかった年(かさ)の巡査の意表を突き一撃を与えると、室内から飛び出しその前屈みになった巡査の喉笛を鷲掴わしづかみにして左手に思いっきり投げ飛ばした。彼女は力業ちからわざに興奮を感じ始め同時に視野の右隅で右手の巡査がハンドガンを振り上げるのを見ていて、身体を左にひねり後方に足を蹴り上げた。


 背後で唸った爆轟が的外れの弾丸を天井に送り出したのは勘だけ分かっていた。


 狭い廊下に多勢で攻め入った事を後悔しろとあざ笑いながら、彼女は次の一瞬にロングコートの両前を左右に跳ね上げ、タクティカル・ベストにぶら下がった二挺のケルテックのKSGー25ショットガンのハンドグリップを左右の手でつかむと寸秒で身体の前後に銃身を振り上げ同時に引き金を引き重苦しい銃声と共に数十個の樹脂玉の詰まったナイロンバッグの特殊散弾が廊下の左右にいる巡査らの額に命中し、二人の巡査は仰け反り後ろに倒れた。その二人が床にぶつかる前に、アンは左手に向けたショットガンのグリップを前に突き放し前に進み出た銃がベルトでそれ以上前進しない一瞬にフォアエンドのバーチカルグリップに手のひらをスイッチさせつかんだそれを銃の慣性力が残っている間に一度引ききり排莢し次弾をリロードして再びグリップに左手を戻すとつかんだ瞬間に引き金を引ききった。その間に右手に握ったショットガンをベルトのテンション任せに左へ振り回し同じ様に右手を二つのグリップ間で二度スイッチさせ再装填した瞬間にはトリガーに乗せた人差し指を絞った。


 わずか一秒かからずに二挺の銃が再び爆轟を広げ身体をお越しかかった年(かさ)の巡査と、彼にぶつかりバランスを崩していた後ろの巡査の額にもビーンバッグ弾が命中し両足を浮かせ仰け反りながら後方へ倒れた。


 その様を見ていた子供に殺意を見せていた四人の私服刑事は顔をひきつらせ階段への曲がり角に退いた。








「なっ!? 何なんだあのメイドは!?」


 ショーン・ブラッカム警部は部下の刑事らにそう吐き捨て混乱していた。武装した警官らがほんの一秒足らずで四人も倒された。彼は女の尋常でない強さが信じられずに階段を後ずさりながら下りていた。


「警部、我々だけであんなヤバい奴からガキを奪うんですか!?」


 警部に押しのけられ階段の上段に立たされ振り向いたマクロードは上司に抗議した。


「馬鹿やろう! おめェ、アサルトライフルを何のために取りに来たんだ? 奴はたかだか散弾だぞ! 撃ち返して押せ!」


 警部に言われマクロードは自分が右手に握るM4A1を見つめ眉尻を下げ眉間にしわを寄せた。


「何があったんですか?」


 突然掛けられた声に階段下を振り向いた四人の先に度重なる銃声を聞きつけ駆けつけた13分署の別な警察官らが三人P226を構え様子を見ていた。


「警官が撃たれた。コード5だ! 金髪の黒コートを着ている女ジャンキー(:麻薬中毒者)が銃を撃ちまくっている! ESSを呼べ!」


 警部が怒鳴った直後だった。




「誰がァ──ジャンキーだァ!?」




 巻き舌の怒鳴り声に悪徳警官ら四人が顔を巡らすと両手にFN SCARーHアサルトライフルをぶら下げたメイドが最上段に仁王立ちで冷ややかな青い目で見下ろしていた。













☆付録解説☆


☆1【Now, guys, your have a choice】さあ おめェら、どうする?


☆2【P226】SIG SAUER/シグ・ザウェル(発音的にはザウワァーと聞こえます)社のSemiauto-Handgunの一種です。この銃は信頼性は高いのですが派生型が非常に多く、CZ75の場合と同様にもの覚えに自信のあるわたくしですら困惑します。


☆3【ESS】(/Emergency Service Squad)。緊急出動分隊。Part 1-4で解説しましたESU(他州でいうところのSWAT)隷下のNYを区域分けした実働部隊です。分署(80近くあります)ほど部隊数はありません(13しかありませんし、その内2つの分隊は特殊化した特別隊)ので一つの分隊は複数の分署からの要請で出動します。


☆4【M4A1】米軍、LE(:法執行機関)で標準的に使われるカービン銃です。この銃器に関しての細かい解説は専門のサイトにお任せします。


☆5【コード5】(/Cord-5(Five))。米の警察緊急無線連絡暗号の一つです。警官が支援要請をしていることを意味します。ちなみに緊急を意味するコードは10-4(テン・フォー)です。


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