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魔界王女  作者: 水色奈月
★Chapter 4
16/29

Part 4-1 I must conquer or die

#32 Avenue C East Village,NYC 23:00


午後11:00 ニューヨーク市 イーストビレッジ Cアベニュー 32番地




 三人掛で押さえつけたドアが押し切られ、賄賂漬けの刑事らが後ろにぎ倒された。


 そのメイドがゆっくりと部屋に踏み出してくると氷の様なさげすんだ双眼で尻餅をついた男らを見下ろした。その視線に射抜かれながら白いフリルが下からのぞく紺のスカートを波打たせたメイドの足下から少しでも遠ざかろうとショーン・ブラッカム警部ら三人は泡を喰いじたばたと後ずさりメイドが手にするのが六本も銃身のある大掛かりな銃器だと彼らは気づいた。


 突如、うめき声がしてアンが顔を振り向けると部屋の端に椅子に座らされ猿ぐつわをされたエステバンがいるのを眼にし、少年が来てはいけないと首を左右に振るのを理解せずに彼女はそこへ歩こうとし、掛けられただみ声に足を止めた。




"Who are you?"


(:何者だ、貴様)




 人間離れしたざらついたまるで番号の低いサンドペーパーの様な響く声に後ずさっていた刑事らが丸くしたままの目をおよがせて急にその動きを止めた。


 まるでその時初めて気がついたとでも言うようにアンはゆっくりと視線を部屋に不釣り合いな両袖机の片側に立つ男へ向けた。




"Just a maiD...I take my chilD."


(:ただのメイドだァ──少年をもらっていくぞォ)




 アンに鼻であしらわれガルシアは女を睨みつけながら自信ありげに床に尻餅をついたままの犬らに命じた。




"Protcol is clear.We bring her in and we bring her down."


(:やることは決まってる。そのアマを捕らえ殺すだけだ)




"Isolate and seal her !"


(:ドアを閉じてそのアマを逃げられない様にしろ!)




 誰がメイドを回り込みドアまで行くのだと、ガルシアに命じられた刑事らはそろって首を左右に振った。




"Bugger yoU"


(:ちっッ)


 その様にアンは舌打ちした。


"Bugger you? bugger you?


(:ちぇっ? ちぇっ、だと?)"


 その舌打ちが気に食わないと言わんがばかりにガルシアはこだわり聞き直した。




"Said youW want to beat mE? ...Who...is...wonna to do thaT!?"


(:誰が誰をそうするって?──だァれェがァ──やるってェ!?)




 絡むようにメイドが下唇を突き出し巻き舌で押し殺した声を絞り出した刹那、ガトリング銃のターンバレルが唸りを上げ回転し始め一瞬でスピンアップした。




"Stupid bitch...I AM"


(:愚かな雌犬め──この俺様がだ)




 ガルシアが冷徹に言い返した直後、めくれ巻き上がった木(くず)の噴水が刑事らの中央を突っ切り片手首と一方のくるぶしを裂き落とされたブラッカム警部の部下二人の叫び声が重なった中、い上がるようにマフィアの幹部へと迫った。


 そのコンマ一秒に五発襲い掛かるM993の金属の暴虐がガルシアを捉えた須臾しゅゆ、男の姿が砂漠の陽炎の様に揺るぎ凄まじい火花が周囲に広がり後方の壁が大きく粉砕しめくれ上がった。


 その鉄粉と木(くず)を埃でも払うようにスーツの袖と肩から払ったガルシアは目を細め圧倒的な銃器を脇に抱える女を一瞥いちべつし唇の両側を持ち上げあざけてみせた。




"Place like this degree...Human weapons are just light."


(:所詮、この程度だ──人間の武器は脆弱ぜいじゃくな)




 ガルシアのあざけりにアンの左右のこめかみに見るみる間に青筋が浮き上がった。


"Interesting...Is not it a funny thing to do?"


(:面白いなァ──可笑しな事をやるじゃないかァ)


 言い放ちアンはガトリング銃を放棄し脇に落とした。そうしてスカートの右ポケットから煙草の箱を縦に割った大きさの指の形に成形されたそれをつかみ出した。




"Should iT?"


(:それがどうしたァ?)




 吐き捨てながら赤いルージュに彩られた片側の口角が血に飢えたよう持ち上がり犬歯を覗かせると、アンは一瞬でそのコントローラーの前面についた安全カバーを人差し指で跳ね上げトリガーを中指で握り絞りながら、親指を上部のコントロールスティックに乗せ動かした。








 アンが店の近くに止めたビッグリグのエンジンがいきなりアイドルアップし六千回転に達すると搭載された六台のコンプレッサーが唸りだし連結した赤紫のコンテナーへ耐圧配管を通し20.69MPaにまで圧縮されたオイルが多量に送り込まれコンテナーの中の二機の大型油圧モーターが狂った様にかき回された。刹那、巨人に押さえ込まれ力が掛かった様にコンテナー後方に向かい左側へ巨大な鉄の箱ががくりと沈み込んだ。




 寸秒、店に向いていた大型冷蔵庫二台分以上の重さのある鉄扉が大きく変形し轟音と共に空中に羽跳んだ。













☆付録解説☆

☆1【 must conquer or die】撃ち破らねば 死あるのみ


☆2【スピンアップ】(/Spin-up)。ガトリング銃系の回転式多銃身ガンが停止状態(待機状態)から発射可能な回転数に達する事です。電動モーター式や航空機搭載の油圧駆動式は動力の立ち上がり起動トルクは高く射撃開始を意図した瞬間から1秒掛からずに達するものが大半です。


☆3【M993】アメリカ陸軍が支給する7.62x51mm弾の一種で貫通力に優れた徹甲弾です。


☆4【MPa】(/Mega Pascal)。メガパスカル:SI(:国際単位系)の圧力と応力の単位パスカルの一万倍です。天気予報などでも見聞きするhPa(:ヘクトパスカル)は同種のもので標準的な大気圧は約1013hPaになり、小説内で六台のコンプレッサーが生み出しているのはその約200倍の圧力になります。


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