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第六話:私とキラと昔話と・・・













―――ねえ、アリスって・・・なに??










抱きしめられ身動き取れない状態が十数分たった。

私の頭の中はアリスという言葉がぐるぐる回り、更に今の状態の所為か凄く熱かった。特に頭がつよく熱を放ち、今にも倒れてしまいそうになる。



「・・・の。あのっ!!・・・キラさん??」


リアの呼び声で我を取り戻したようでキラはビクッと身体を震わした。それからそっと身体を離して“すみません・・・”と言って顔をふせる。


「・・・キラでいいです。」


え??あ・・・呼び名のことね。


「でも・・・」


彼は明らかに自分より年上。それにまだ少し恐怖もある。しかしキラは“いいですね??”と強引に決めてしまった。


「とりあえず、此処を離れましょうか。また先程のようなモノが出かねないですから。」

「・・・さっきのモノってなんですか?」

「【シャドウ】という化け物です。さあ、お手を。」


間髪いれずに簡潔に答えを返すその様子は、どこか有無を言わせない雰囲気。私は素直に差し出された手をゆっくりと握ることにした。そっと握った彼の手はまるで氷のようにとても冷たかった。














気付けば荒野は沢山の草花で溢れ返っている草原に変わっていた。その草原を私とキラでサクサクと歩いていく。


・・・どこに向かうんだろ??


私がそのことを彼に問うと、キラは歩を止めることなく答えた。


「とにかく城に向かいましょう。ハート女王がお待ちですので。」


ハート・・・??

思っていることが顔に出ていたのか、キラは一度立ち止まって私の顔を見詰めた。


「軽い近歴史をお話しましょう。少し長くなりますが・・・よろしいですか??」

「え。あ・・・よろしくお願いします」


少しどもりながら答えるとキラは歩きながら話してくれた。













 ◇




まずはこの世界の国から説明いたします。


私達が今いるこの国は【赤の国】と呼ばれており、女王であられるハート・スプリング様が治めております。

赤の国以外にも【黒の国】【碧の国】【金の国】の四大国があり、それぞれが女王もしくは王が治めて平和を保っておりました。



しかし、5年ほど前。

突然黒の国が碧の国に戦争を仕掛けたのです。


ああ、ご心配なさらず。

理由は黒の国の王であるスペード様が、碧の国の少年王であられるクローバー様にチェスで敗北したからという、くだらないものです。

結果、戦争は他国の干渉により小規模で収まりましたが、スペード様は他国より虐げられることになりました。



それから緑の国と我らが赤の国が同盟を組み、平和の礎を築きなおそうと色々を政策を立てております。


金の国の女王ダイア様は戦争以来お顔を拝見しておりませんが、近々我等と同盟を結んでもらうことになるでしょう。







次にこの世界のルールです。


この国の住民は農民以外は全員何かしら【役】を持っています。二つ名・・・とでも言いましょうか。ちなみに俺の場合は先程言ったように【時兎】【白銀の赤兎】という二つの役を仰せつかっております。


この国に来た時点で貴女は女王様とご会見し役を仰せ使うという義務が生じます。


これは絶対的なルールです。

何人(なんぴと)たりともこのルールを破ることは許されません。ご了承ください。







最後にこの世界と貴女の世界の関係です。


私達の世界は元は貴女の世界で【はみ出した者】が作った世界です。

その方々は俺達の祖先となるわけですが、私の様子を見てお解かり頂ける様に・・・世間から虐げられるような容姿や性格をしていたのです。

疎まれ、蔑まれ、追い出された祖先たちはこの国を【創る】ことを考えたのです。


祖先の中に科学者でも居たのでしょうかね。実験の結果何人もの人の命と引き換えにこの世界は創りだされました。その過程は分かりません。書物には書かれていなかったのです。


はみ出された者はそれぞれ子孫を残し、この世界で平和に過ごしていきました。



しかし、その平和な日々はある日突然狂い出したのです。








「・・・狂い出した??」

「はい。世界の均衡が崩れ、自然が崩壊したのです。」


崩壊・・・??


足元を見ると豊かに育った草花。違和感を感じキラを見上げるとそっと微笑まれた。


「なら、どうして今は・・・」

「・・・昔の話になりますね―――おっと、それは後ほどまたお伝えすることにしましょう。」


それより・・・。

彼はそう呟くとスッと綺麗な指を前方へ向けた。

その指を追って前を見ると大きな城が(そび)え立っていた。

圧倒的な存在感。紅いハートのモチーフが沢山あるにも関わらず全く嫌味に感じないシックで美しい建物。





「我等の誇り、ハートフル城へようこそ・・・。」




そっと耳元で呟かれ顔に熱が集まる。その様子を見て彼は大人っぽくクスッと笑うと私の手を取り場内へとエスコートしていった。









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