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第三十三話:少女の呼び名






「・・・リア様をお運びしましょう。みなさん、ほら少しでも動いてください」


予想だにしなかった襲撃に一同がリアを囲み停止していた。一番早く解凍できたガルが自らの腕に付いた血に触れぬようにわざわざ布を持って来てからリアを抱え上げた。

一番小さな子に先を越された皆は更に数瞬落ち込むが、こんなことをしている場合ではないと持ち直した。


そうだ、なによりも、誰よりも。まず・・・リアを


「ガル、俺が―――」

「貸して」


伸ばしかけた腕の脇をすり抜けた細い影。自分の体格と同等の彼女を抱えていたガルは悔しそうに歯噛みするが素直に渡した。


「白兎。なんでもいいけど顔洗ってきなよ。おれ、お前のそんな顔見たくない」


此方に全く顔を向けずにシエルはリアを抱えて寝室へ消えていった。


“そんな顔”って、どんな顔だろう。

俺はこんなにも弱い生き物だったんだろうか。



何も汚れていない手を見たくなくて、ぎゅっと拳を握り締めた。








 ◆



『ねえ・・・代償を教えようか?』


代償・・・ね。それは真実を知るための対価よね。

うん、甘んじて受け入れるよ。


『えー、もっと嫌がるかと思ったのにぃ』


何を言うの。貴方ぐらい受け入れないで、どうやって何も知らない世界で生きていけるって言うの。


『何も知らないなんて言い訳、もう使えなくなるよ?いいの?』


ホントは嫌よ。だけど、そんなこと言ってても仕方ないんじゃない?


『おっ、強気ぃ。いいね、そういう女嫌いじゃないよ』


これからパートナーとなるには不足はない?


『ありゃ、気が付いてた?』


もちろんよ。私以外が動いてるのは・・・わかってたわ。


『うーん、ごめんねぇ?ちょーっとからかってやろうと思っただけなんだよぉ』


貴方を受け入れてあげる。だけど、仲間を傷つけるのは許さない。


『いいよ。もうしないから。僕だって目的はあるからねぇ』


目的?

・・・いや、いいわ。それよりもまず、貴方は何者なの?


『ん、それも今夜ゆっくり教えてあ・げ・るぅ。今は、ホラ・・・優しい優しいお仲間の元へ行っておいで』


仲間・・・。いいの?私、貴方と取引して―――




『うん、いいよ。今だけは記憶閉じ込めておいて上げるから。【お仲間】に告げられるまではね』








 ◇



「ね。もう起きられるでしょ?起きてよア・リ・ス」


ねっとりと絡みつく声に意識が浮上した。

話し方は似てるけど・・・雰囲気が、違う。あの優しくて意地悪な綺麗なオーラじゃない。


「・・・離れて」

「つれないねぇ。少しくらい遊んでくれたっていんじゃなぁいの?アーリス」

「離れなさいって言ってるの・・・チェシャ!」


超至近距離にあったシエルの顔。今は主導権は違うみたいだけど、そんなのもう関係ない。


ゴツッ


「~~~ッ!!!」

「ッ痛!もぅーオイタはいけないよー」


・・・なんで攻撃側のほうがダメージ受けてるんだろ?


頭突きされた額を軽く擦って漸く少し離れるチェシャ。透明感のない紫の瞳には不機嫌そうな私の姿が映っていた。

と、よく見ればここは私に当てられた部屋のベッドの上。さっきまで朝ごはん食べてたはずなんだけどなぁ。


「なんでチェシャがここにいるのよ!呼んでもないのにっ」

「呼ばれたよー。こいつに」


少しだけ赤くなった額に人差し指を向けてトントンと叩いた。


「ていうか呼ばれなくても出られるんだけどねぇ。その代わり少し弄んなきゃいけないから疲れるんだよ」


ユラユラと揺らした黒い尻尾を軽く撫でてニヤニヤと笑うチェシャ。もう、その笑い方ムカつく!

更に不機嫌になったのを察したのか彼は“どーどーアリス”と手を此方にむけた。


「ていうかさぁアリスは大丈夫なわけぇ?随分ハデにやってたよねぇ」

「ハデ?ちゃんとマナー通りだったと思うわ」

「は?マナー?」


朝食は静かに大人しく食べたい派なの。とぶっきらぼうに答えると、彼は首をかしげて。それから突然顎を突き出して顔を近づけてきた。


「・・・何よ」


「ふーん。・・・なるほどねぇ、シキミーが中にいるね」

「っ!!」


それは、覚えてる。

朝起きて、起こされて。なんだかよくわからないうちに“真実を教える”って言われて、取引をした。私は・・・私の中に彼が入ることを許した。


情報と引き換えに、心の一部を彼に受け渡した。




くいっと彼は私の顎を指で引き上げて、ニヒルな笑みを浮かべた。


「わかってる?これは背徳だよ。交わってはいけないものなんだよ?」


シキミーはおそらくヒトではない。

本能・・・否これはおそらく【アリス】の力。チェシャと会うまで確信はもてていなかったけれど、確実にそうだと言い切れる。


オーラを感じれるようになった。見ることは出来ないけれど、今扉の向こうに誰が居るかとかならわかる。日に日にそれは強くなっていってるのが、わかる。



だったら―――


「・・・魔法なんでしょ?だったらいつか解いてみせる」

「舐めてるのか、ホントーにわかってないのか・・・うん、絶対わかってないね」


真っ赤な舌がペロリと頬をなぞった。一瞬のぬくもりの後の冷たさに嫌悪も露に思いっきり睨みつけたが、紫の瞳が私を捉えたせいで威力は減ってしまった。する、と顎と頬に添えられた熱い手が滑り落ちた。


「・・・なんで私が貴方に怒られないといけないの」

「怒ってなんかないって」


“おれ達は、怒れない”


目を伏せたチェシャはそう小さく呟いて私から少し離れた。


温もりが離れてく。何故か異様に寂しかった。一瞬で大嫌いになったチェシャだけど、そんな彼でも離れるのは、悲しい。



大嫌い、大嫌い。だけど、誰でもいい。

大嫌いだけど、そばにいて。




「ねえ。おれ、君のこと絶対リアって呼ばないね」

「はぃ?」


数秒後、顔を上げたチェシャはもうあのニヤニヤを貼り付けていた。しかもまた唐突に話が変わる。私には何も答えを教えてくれない。“うん、決めた。決めたぁ”と目を三日月のように細めて笑う猫のような男にほんのちょっぴり・・・それなりに多く軽蔑を込めて顎を引いて離れた。



「おれは君を【アリス】と認めない」

「っ・・・」

「そうすればさぁ、おれはおれの中の【アリス】を護れるし、俺は俺の中にある【キミ】を護れる。キミは安心してまどろんでいて」


ベッドからスプリングを利用してぴょんと跳ね上がり華麗に着地を決める(チェシャ)。ゆっくりと体を此方に向けたまま一歩一歩後退していく彼は両手を広げて。まるで喜劇を語るよう。


「そうだ、そうだ。おれはキミを【リィ】と呼ぶことにするよ。かわいいねリィちゃん」

「・・・なによ、それ」


情けないほど掠れて震える声。





嬉しかった。


【アリス】じゃない。

私は、【リア=レドナー】。


バルはそういってくれた。彼は分かってくれた。でも、それでも。まだ足りなかった。


足りなかった。


キラも、シエルも・・・そう、ガルも。皆私の瞳を通じて【アリス】を見ていた。


寂しかった。







「・・・ありがと」





チェシャは最後にペロリと舌を突き出して出て行った。










『よかったね。リア』



シキミーの声が聞こえた。





久方ぶりです!!ダソペー再び!!五十嵐ですぅ?

いやぁ、すっかりこの企画の存在忘れてましたぁ・・・え、何独り言だよ?


・・・さあ、ゲスト紹介です!!


ラビ「どうもコンニチワ」


今回のゲストは我が愛すべきリアちゃんのお兄様、ラビ=レドナーさんです!!


ラビ「ええ、コンニチワ」


・・・あれ?機嫌悪い?(汗


ラビ「どうして?僕はべつに怒ってないよ?ただ少し早く帰りたくてね」


か、帰りたい・・・?

ははは、ハハ!な、何のことかな?別に拉致ったりしてないよ!?リアのところに行こうとしたラビを無理矢理此方に引き込んだわけじゃないよ!?“作者権限ですぅ♪”とか言ってないよ!!ボ、ボクは無実だよぉ!!?


・・・・・・やめてっそんな目で私を見ないでぇぇぇぇっ


ラビ「なんだ、自覚あるんじゃない。ねぇモノは装弾なんだけど―――」


字が違います!!撃つおつもりですかぁ!?


ラビ「ッチ せっかく護身用の銃が使える機会だったのに。まあいいや、今度キッドにでも試してみよう」


ダラダラダラダラ―――(汗


す、すみません。殺さないでいただきたいのですぅ・・・


ラビ「物は相談だよ、やることやってさっさと帰らせてくれないかな。・・・ホラ作者、動こうね?」


は、はひぃ!!



次回予告っ

多少は明るくなりたいな!あっ駄目・・・キラさんちょっとは自重してっ!の巻!!



ラビ「・・・・・・・・・・・・・。」


―――や、ヤメテ!ヤメテクダサイ!!私に当たらないでぇぇ!!!


ひぃアっ銃っ銃出さないで!!

嘘っ嘘でいいですからぁぁぁあああああ


(作者逃走



ラビ「さて、そろそろ僕も帰ろうかな。ああ、早くリア来ないかなあ」






(作者はラビには弱い。むしろラビが黒すぎる。


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