第一話:優しい声
「リア、危ないよ」
聞き覚えのある台詞に驚いて勢い良く振り向くと、金髪の青年が眠たそうに目を擦っていた。
金髪の青年―――ラビ兄さんは私の足元を指差し“そこ、床が痛んでるんだ”と言って笑った。
「それにしても昨日はびっくりしたよ。いくら涼しくなって気持ちいいからって外で寝ちゃ風邪ひくよ?しかも、いくら揺すっても起きないし」
“体は平気?”と私に問いかけて私が頷くのを確認して、キッチンへ向かった。今日は兄さんが朝食を作ってくれるみたいだ。
「兄さん・・・」
キッチンに消えていく後ろ姿を目で追いながら小さく呟く。昨日の夢の影響か、家族が離れて行くのがひどく寂しく感じたのだ。
泣きたくなるほど胸が苦しい。
もう、母さんの事は・・・乗り越えたいのに。
「ん、何??今朝はアップルフレンチトーストだよ」
キッチンから一瞬出て来た兄さんは、黒い服に白いエプロンを着ていた。
彼は俯く私を見てクスクスと楽しげに笑い、それから“リア、お腹減ったの??”と言った。
―――――顔を上げられない・・・。今の私はきっととても酷い顔をしている。
ラビ兄さんも流石にいつもと様子が違う事に気付いたのか、私の名前を呼びながらそっと近寄って来た。
「どうした??やっぱり体の調子悪い―――」
不自然な所で言葉が止まった。さっとにこやかな表情を引き締めて、兄さんはそっと私の肩に手を乗せた。それまで自覚していなかったけど身体が小刻みに震えていたのだった。
「本当に・・・どうしたんだ??母さんの夢でもみたのか」
「う・・・うん。とても不思議な夢を見たの」
兄さんは“そうか・・・”と呟いて私や母さんと同じエメラルドグリーンの瞳を悲しげに歪める。肩に置いていた手をずらして私の頭をそっと撫でた。優しい動作に涙が出そうになる。
「ん・・・リア、よく聞いて。お願いだから無理だけはしないでくれよ。辛いときは辛いって言って良いんだ。リアは俺の大事な妹なんだから壊れるような真似はしないで」
「・・・うん・・・分かった」
私がそう言うと、兄さんはいつもの明るい笑顔に戻って私の頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。
「分かればよし!!ああ、もうこんな時間だ。早く作らないと父さんが怒るかな・・・」
「はは、あの父さんが怒るわけない」
「それもそうだね、さーて気合入れて作ろうかなっ!」
優しくて温かい声が耳に心地良い。
私はラビ兄さんの声が一番好きだ。
低いけど良く通る明るい声。
でも、私知ってるよ。
貴方は私に隠し事をしているね。
ううん、いいよ。大丈夫だよ。
わかってるから・・・。
そうだね、兄さんだって辛いはずなのに、必死に私を励ましてくれてる。甘えてばかりいてはいけないと分かっている物も、兄さんの暖かい声が欲しくてつい泣き言を言ってしまう。
そろそろわがままはいけない、かな。
きっと、母さんもそれを望んでいるはずだしね―――。
暫くすると父さんが起きて来て、私と兄さんに“相変わらず早いな・・・おはよう”と言って微笑んだ。
「おはよう。違うよ、私達が早いのじゃなくて父さんが遅すぎるの」
「僕もそう思うよ。ああ、それとお早う??遅よう??」
「はははッお前たちはいつも手厳しいなぁ!!」
父さんは豪快に笑ってキッチンへ向かった。“手伝おうか??”と言って兄さんの脇に立ったが、兄さんはにこっと笑って・・・
「いいよ、気持ちだけで。父さんが此処に立つと絶対物が壊れるから」
―――兄さんの笑みは悪魔の微笑みだった。
絶対零度の微笑みを浴びた彼はケロッと慣れた様子で“そうか、いつもすまんな”と言って私のほうへ向いて肩を窄めながらウインクした。私がクスクスと笑うと、彼は困ったように笑って大人しくテーブルに座った。
「ったく・・・誰に似たんだかなぁ・・・」
聞こえてるよ、父さん。
ああ、アリス
僕らのアリス
ついに今日だね
あの日から300年も経ったんだね
アリス
早くおいで
僕らの国へ
本当の君の―――世界へ
どうもー・・・『愛すべき、貴方たちへ ~Love of Alice~』の駄目作者五十嵐 イツキです??
リア「ちょっと待って、なんで疑問系なのよ??」
ああ、リアぁ♪んー多分クセだよク・セ(笑
リア「・・・そう。(なんだろう。この人の笑顔ラビ兄さんのあの微笑と似てる・・・)」
という事で、このスペースはコメディ要素の少ないこの作品を少しでも明るくしようと奮闘する駄目作者の足掻きスペース?だよね??
リア「え、そこあえて私に振るの??」
だって構わないとリア黙ってばかりじゃん。
それじゃこのダソペー(蛇足ページ)意味ないじゃんー??
リア「ダソペー・・・??あ、ええ・・・うん、そうね」
リアっておもしろいねぇ♪
じゃ、次回予告。
次回リアがとんでもないことになります。
はい終了。
リア「え!!?ちょ、待って!とんでもないことになるの!?」
ふふッ真相はまた次回ぃぃww