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第十五話:愛という感情・・・??【カベル】

今回はリアとは違う視点・・・【庭師】のカベルの視点です。





「んで??どうしたんだよ」


オレはリアを城近くのカフェへと連れてきた。突然仕事中のオレを攫って、一人でじたばたしてたこいつは落ち着いたようで楽しそうにくつくつと笑っている。

・・・あーあ。またかよ。


「なんだよー。ここはオレのお気に入りの店。どうせ雰囲気が合わなくて可笑しいっていうんだろ」


前に仲良くなった厨房係を連れてきたことがあったけどソイツも“似合わないね”といって腹抱えて笑ってやがった。・・・まあリアは控えめに笑ってるだけましか。

彼女は“ばれちゃったか”といって優しく微笑んだ。

オレはわざとムスっとしてそっぽを向いて“あーやっぽあそうですか、ほぉーん”と拗ねたフリをする。


「ふふ、ごめんねー??」

「・・・なーんか腑にオチねーけど・・・まあいっか!!で、どーした??」


リアはすっかり本題を忘れていたようでは“あーそうそう”と呟いてから、店頭で注文していたレモンティーを一口飲んだ。


「ちょっと色々聞きたいことがあったの。本当はキラに聞こうかなって思ってたんだけど、忙しいみたいだから・・・」

「いやいや、一応オレも忙しい人の部類に入ってるんだけど??」

「ふふっごめんね」


“目に付いちゃったから、攫っちゃったんだ”と笑いながら言われると、オレは思わず頬を引きつらせてから“まあ大丈夫だけど”といって微笑んだ。


「なんだかんだ、オレに頼ってくれるの嬉しいし!!さあ質問なんでも来い!!」


そうだ。


昨日初めて会ったこのコはオレの心に一瞬で入り込んできたんだ。

べ、別に惚れたとかそういう話じゃないと・・・思う。オレは結構自分でも世渡りとか人付き合いとかそういうのはうまいつもりだったし、どんなヤツでもとりあえず仲良くはなれるという自信があった。


だけど、このコは・・・違う。今まで会ったどんなやつとも全然違う。

一瞬で心を捉えて放さない。始めは何でか分からなかったけど時兎様が来てリアを【アリス】と呼んだ瞬間分かった。


アリスは俺達国民が愛してやまない存在だと聞かされていた。アリスのことについて言い伝えのように言われてきた言葉は沢山あったがオレは正直あんまり信じてなかった。


だけどリアに出逢って、真実を突きつけられた。


言葉を、掻っ攫われた。

初めてだった、こんなにも見とれてしまったのは。



目の前の彼女は一瞬きょとんとした表情を見せた。それから


「・・・ありがとう」

「へ??」


思わず間抜けな声が出た。

アリス・・・いや、リアは蜂蜜色の綺麗な髪を揺らして、スカイブルーの瞳をそっと細めながら微笑んで。呟くように礼を言った。


・・・・あー・・・。



「い、いいってことよぉ!!へっはははぁ」

「・・・大丈夫??カベル」


びびった。正直びびった。だっていきなりこんな笑い方するしなぁ!!

顔が赤くなるのを誤魔化すようにダージリンを勢いよく飲む。


ここはやっぱいいな。ゴールデンディップスも置いてあるし、何より美味しい。


「・・・あのね。こんなこと言っても信じないかもしれないけどね。私ね、異世界からきたんだ。でね、私【アリス】に成っちゃったワケだけど、何をすればいいかも分からないじゃない??何か【アリス】について知らないかと思って・・・。あと、キラとシエルとハンプティー・ダンプティーがつけてるSって書かれたバッチ。あれも何か意味がある??」


一気かよっ。まあいいけど。

オレはその質問にオレ自身の答えをよく考えてから言った。


「あー・・・うん。大丈夫。リアが異世界人ってのは分かってる。普通役ってのは生まれて一週間以内に貰うものだし、異世界の存在は確立してるしな。あーそのバッチについては知らないなぁ・・・多分非売品だろうってことしかわかんねーや」


リアは“そうなの??”といって目を丸める。その表情がちょっとかわいいと思ったのは内緒な。・・・あれ、オレ誰に話しかけてんだ??


オレは一瞬だけ目を伏せてからリアの青い瞳を見つめる。


「あと・・・オレの知ってることでいいなら【アリス】について話すな」











 ◆


アリスを説明するなら、まず【役】について話さねーといけねーとな。


【役】ってのは前にもいったとおり【女王】が役与式を行って国民全員に渡される仕事みたいなもんだ。だけど、その【役】を決める基準ってのはそれぞれが持つ魂が関係してる。


生まれ変わりって聞いた事有るか??

それが一番分かりやすいな。生まれ変わりって簡単に言えば死んだ後、魂が転生して誰かの魂になるってことだろ??


オレ達のこの世界が創られたころ全員に【役】があったんだ。まあ正確に言えば【役】じゃなくてちょっと違うもんだけどな。まあ、その【役】を持った人たちの魂が生まれ変わって誰かの魂になってんだ。その魂の記憶を読み取って【役】をつけてる。



その魂の記憶ってのを読み取るのが【門番】の役目。現在の【門番】はシエル=フランが仰せつかってのは知ってるよな。まあ、あいつは正規の門番じゃねーけどな。あーごめんって関係ないわな。


【アリス】を頂くときにフランに魔法かけられたろ??それが魂の記憶を読み取る作業だったってわけ。



まあそんなわけで【役】はそれぞれに与えられる。んでさっきも言ったとおりこの【役】はこの世界が創られたときからあるんだよ。世界が混乱しないようにそのときの【女王】と【王】が住民一人一人に役割を与えた。

【庭師】のオレなら、庭を造り、花を整頓し美しい状態を維持し続けるとか・・・まあ色々だ。そんなふうに仕事を決めていったんだな。


その時代の【アリス】は世界を作るときに不安がる皆を宥めて影から支えてたらしい。知ってるかもしんねーけどこの世界を創った人たちは皆それぞれ人に虐められるような容姿をしてたんだな。俺の前世は・・・花を好きすぎて植物の声を聞き取るようになってたらしい。時兎様なら紅い瞳とか、フランなら尻尾だな。それでその特徴を誇りに思えるようになった理由ってのが【アリス】のおかげらしい。





そこからついた【アリス】・・・お前の役目それは・・・


それは・・・あの・・・えっと・・・。















どうにも歯切れの悪いオレにずいっと顔を近づけて先を促すリア。

だって言いにくいんだぜ??これ!!


「・・・それは??」

「あー・・・。うん・・・」


いわねーと【オレ】の意味がねーしなぁ・・・。いやいや、でもこれ超はずぃー!!!


「・・・カベルぅ???」

「あ、分かったって!!言うって!!言うからッ顔放せ!!!」


近い近い近い!!!





「・・・だぁぁぁ!!もうっ!!【アリス】の役目は【愛すること】それと【護り、世界を救うこと】オレが知ってるのはこの二つだけ だけど【アリス】には他にも役割があるらしいけどオレの家はこの二つを伝えることしか聞いてねぇの!!」


恥ずかしくて一気に吐き出すように言った・・・否叫んだ。店中の好奇と非難の視線が突き刺さる。いや、リアがこの店に入った瞬間から興味の視線は刺さってたけど。


「・・・愛すること・・・」

「・・・ああ。そーだよ!!」


無条件の愛を強いられるなんて・・・アリスは可哀想ね、とよくお袋が呟いていた。そのお袋はもういねーけど。


リアは何かを思い出しているのか唇に指を当てて視線を下げている。


「なんか、あったのか??」

「べっ別に!!何もないよ??」


かあっと頬を染めて全否定するリア。・・・ぜってーなんかあった。


「ほぉーーん・・・」

「なにもないって!!もうっ本当だよ!」


顔をぷいっとそむけて“もう出ましょ”といって立ち上がった。オレは少々面白くない気分になっていた自分を叱咤してから“おうっ”といってダージリンを飲み干す。

リアはお金を持っていたようだが、俺が全部払って外に出た。


外は明るくて、温かい日差しが降り注ぐ。



「認めるしかねーか・・・」

「え??」






もう1つ言い伝えられていた言葉。


アリスはどんな存在にも愛という感情を与える。愛を知らない者も心の底からアリスを求めるほどの力がある。







愛・・・か。



あるかもな、オレにも。

でも、それは【アリス】に向けての愛なんかじゃない。


オレは・・・リアという人物に一目惚れしたらしい。




きょとんと呆けているリアに振り向いてニカッと歯を見せて笑う。


「帰ろうぜ、リア!!!」





でも、オレは笑おう。愛だなんて難しいこと、わかんねーから。




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