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第十二話:猫と兎と・・・子供の喧嘩?









    扉は開いた



           運命を狂わす扉が


















    もう、後戻りは許されない


















「アリス。」

「ッ・・・大丈夫、です。少し・・・緊張しただけだから」


突如現れた扉に一歩足を踏み入れると、脳天を揺るがすような強い衝撃を受けた。もちろん誰かに物理的な攻撃をされたわけではない。目の前がぐらぐらしてキラに手を握られていなければきっと倒れていただろう。

俯いて大きく深呼吸をする。尋常じゃない汗が頬を伝ったのが分かった。



「あーらら。女王の気にあてられちゃったんだ。可哀想に」


コツコツと足音。聞き覚えのある癖のある特徴的な声と共に頭に温かい手が置かれたのが分かった。


俯いていた顔を上げると、まず見えたのは真っ黒い尻尾・・・だった。


露出度の高い白と黒のコントラストが絶妙の・・・やっぱり露出が多い服。羽織っているのは着崩れたワイシャツ。その胸にはキラと同じ【S】と描かれた金のバッチ。それから異様に整った顔。アメジストの輝きを持った瞳が愉しげに揺れていて。見た目は私より少し年上くらいで、キラと同じか少し下くらいだろうか。きっと二十歳前後くらいだろう。夜のような漆黒の髪で前髪だけ首に掛かるほど長いが、他は短めで少しツンツンしていて・・・。


「あ、今変な髪形って思った??」

「いえ、そうでもないですよ・・・??」


確かに普通なら少し変なのだけど。彼はその髪型がぴったり似合っていた。

横で小さくため息が聞こえた。


「アリス。もうわかっているとは思いますが―――」

「よろしくね、リア。俺がシエルだよ」


キラの紹介を遮って、シエルが言った。それからニッコリ爽やかに笑ってずっと置いていた手をどけた。


やっぱり・・・。


「よ、ろしくお願いします・・・」


気がつくとあれほど苦しかった頭痛はキレイさっぱり消えていた。思わず頭に手をやると彼はクスッと笑った。


「ごめんね。女王様の気強いから、ちょとだけ魔法かけちゃった。暫くしたら慣れてくると思うから大丈夫だよ」


魔法・・・。ありえないことがドンドン目の前で起こっている。


「あと、念のために言うけど。俺の尻尾は飾りじゃないからね」

「えっ!?」


シエルは苦笑いをして“やっぱそう思うよね”と言って笑って尻尾をゆらゆらと揺らした。反射的に謝ると彼はケロッと笑って見せた。


「当たり前だよ。リアは俺達とは違う世界に住んでたんでしょ??君の常識は俺達の非常識。俺達の常識は君の非常識」


だから気にしないで、と言って私の手を引いていった。


「猫。それは俺の役目です。」

「うぇー、いいじゃん別にぃ」


キラが拗ねたように視線を下に落としながら呟いた。

役目ってなんだろ・・・。


「【アリス】は俺が案内します。馬鹿猫は引っ込んでてください。」

「馬鹿はお前だろぉ。俺は【女王】に命令されて動いてんの。【時兎】のクセになっまいきぃ」

「確かに俺は【時兎】ですが【翻弄猫】よりマシです。」

「【翻弄猫】じゃないもーん。【チャシャ猫】だもーん」

「どちらにせよ騙し役には変わりありません。このままリアを攫われるのであれば、俺は女王に逆らってでも案内しますよ。」

「へぇぇー。【女王】と俺に逆らうんだぁ。いい度胸してるね」


短時間の間に物凄い早口で言い合うキラとシエル。・・・ごめんなさい。子供の喧嘩に見えました。そのうちに彼らはお互いの武器らしき物を取り出し始めた。


キラは白・・・いや、銀色の拳銃。シエルは黒光りした・・・ナイフ??


彼らは私の事など忘れたようで、臨戦体制に構えた。えっ!?ちょ、此処で戦うのっ??


「キラっ!??シエルさんっ」


私が大声で叫ぶと彼らは今にも飛び出しそうな姿勢のまま静止した。人形になったように二人はギギッという感じで首を回した。


「・・・そろそろ行きませんか??」


苦笑いしながらそういうと彼らはしぶしぶといった感じで武器をしまった。


「あーあ。せっかく俺の強さをリアに見せ付けてやろうと思ったのにさぁ」

「馬鹿猫。貴方が俺に勝てるわけが無いでしょう??リアに恥を晒さなくて良かったですね。」


このままではまたさっきのような状況になりかねないので、私は彼らの間に入って歩き出した。













「・・・そういえば白兎、いつの間にか呼び方リアに変わってるよね」


シエルの呟きは誰にも気づかれることは無かった。









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