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LUNASEA同タイトル小説

SHADE

作者: 皐月 沙羅

 この世には、日陰でしか生きられないモノもいる。

言うなれば、いつも日なたから逃げているようなモノ。

彼もその中のひとつ。今日も、たくさんの日なたから逃げている。

 夢の中でさえ、日なたはやってくる。明るい光。

楽しげな空気。笑顔さえも彼には逃れるべきものなのだ。

彼はいつも逃げている。たくさんの日なたから。

 目の前に大きな建物があった。教会のような高い塔。

それの一角は白く眩しい。しかし、もちろん日なたがあれば日陰がある。

 彼は日陰にある扉から、中へ入った。逃げるように。転がり込むように。

 塔の中に一歩踏み込むと、鐘の音が聞こえた。

教会の鐘の音だろうか。外からではなく、内から鳴り響いている音。

壮大な音。やがてその音は彼の頭の中でこだまする。

 鐘の音を聞きながら彼は、逃げ続ける。あらゆる日なたから。自分の求める日陰へ。

 塔の中には扉が無数にあった。扉を開け奥に行くと、その直線上にまた同じ扉があった。

その扉の奥にもまた扉があった。

 彼は逃げ続ける。扉を開け続ける。

 日なたに捕まるわけにはいかない。彼は陰なのだから。

 鐘の音は鳴り止み、バタンと扉の閉まる音がした。

 現実のような夢。夢のような現実。

 彼は日の当たらない日陰で生きて行く。日なたがある限り。






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