カナンと質問
「竜珠ってのは、今すぐ貰えるものなの?」
「……今すぐ欲しいのか?」
「い、今すぐじゃなくてもいいけど」
「それなら俺の住処に着いてからにしよう」
「……でも、それじゃあ私は人間のままだから、オリオルでは暮らせないと思う」
「大丈夫だ。人間でもすぐに死ぬような所じゃない」
「……ほかに人間は住んでるの?」
「いや。住んでない」
「じゃあ、人間がどのくらい住めるかなんて分からないじゃない」
「……」
やっとラトを言い負かすことができた。
カナンはなんとかして、このまま家に引き止めようと思った。
「だいたいラトは、私のことなんてろくに知らないでしょ?」
「知っている」
「なんで?」
「見ていたからだ」
「……見てたって、いつから?」
「半月ほど前からだ」
「……」
半月ほど前というと、例の視線を感じるようになった頃だ。
じゃあ、あのドラゴンは……。
「あのドラゴンはあなたの手先!?」
「違う」
「じゃあ、関係ないとでも言うの?」
そんなはずはない。
あのドラゴンが罠に掛かってから、色々なことが起き始めたのだ。
「あれは、俺だ」
「……は?」
「俺の竜化した姿だ」
「竜化……」
「そうだ。だから手先なんかじゃない」
「……」
カナンは唖然とした。
ただの小型のドラゴンだと思っていたのに、目の前の少年が竜化するとあの姿になるとは思わなかった。
「……最近、罠に掛かる獲物が少ないんだけど」
「ああ、それは俺のせいだな」
「……横取りしたの?」
「違う。俺を怖がる動物が多いから……」
「ラトがうろついてたから獲物がいなくなっちゃったってこと?」
「そういうことだ」
……偉そうに言わないでほしい。
そのせいで、どれだけこっちが困ったと思ってるんだ。
カナンは怒りを押し殺して、次の質問をすることにした。