カナンと竜族
「と、とにかく、急に迎えに来られても困るよ」
カナンは贈り物を返せない以上、伴侶ということは諦めた。
しかし、初めて会った少年の家に今すぐ行くのは嫌だった。
(とりあえず、この男のことを知らなきゃ)
カナンはラトのことを聞き出そうと、まずは彼を家に招くことにした。
「とりあえず、うちに来て」
そう言うと、ラトは大人しく従った。
無理矢理連れて行かれることはなさそうだと、カナンは安堵の息を吐いた。
家に着くと、さっそくカナンはラトについての質問を開始した。
「あなたはどこに住んでるの?」
「オリオルの山頂だ」
「……そんな所に人が住めるの?」
「俺は竜族だ」
「竜族!?」
竜族は世界最強の種族だ。
竜族なら、オリオルだろうがどこだろうが住めるのだろう。
しかし、カナンは人間だ。
そんな所で生きていけるのか、不安になってきた。
「私は人間だから、そんな所では暮らせないと思う」
「大丈夫だ。おまえのために住処を調えた」
「でも……」
「大丈夫だ。おまえには竜珠をやる」
「リュージュ?」
「竜珠だ。それがあれば、おまえも竜族と同じ身体になる」
「……」
断わる理由がなくなってしまった。
カナンは仕方なく、オリオルに行くことに同意した。
だけど、今すぐ行くのは遠慮したい。
どうしたら行くのを先に延ばせるだろうかと、カナンは考え始めるのだった。