カナンと竜珠
夜になると、ラトがソワソワし始めた。
何だろうと思って訊いてみたら、寝る場所をどうするのかと訊いてきた。
「そんなの、竜化すれば一緒に寝られるでしょ」
「……人のままじゃ駄目なのか?」
「駄目だよ。まだ結婚してないんだから」
「竜珠をやったら、結婚したことになるか?」
「……新居に移ったら、かな」
「それならすぐにでも」
「駄目だよ! 約束したでしょ」
「……」
カナンはラトの気を逸らせようと、質問を開始した。
「竜化しても話せるの?」
「人間とは話せない」
「竜族とだったら話せるの?」
「ああ。……竜珠を与えた人間となら話せるが」
「竜珠って、今も持ってるの?」
「ああ。見るか?」
「うん」
ラトは舌を出して見せた。
そこに、小さな丸い宝石のようなものが埋まっていた。
「それが竜珠?」
「そうだ」
「……どうやって取るの?」
まさか舌の先を切り取るのだろうかと怖くなった。
「与えようとする相手がいれば、簡単に取れるそうだ」
「そう……」
血を見なくて済みそうだとホッとしたが、別の心配が浮かんできた。
「竜珠を取って、私の舌に付けるの?」
「違う。おまえは飲み込むだけでいい」
あんな物を付けたら邪魔そうだと思ったが、そうではないと知って安心した。
小さな粒を飲み込むだけなら簡単だ。
「今すぐやろうか?」
「後でいい」
貰ったら、すぐに連れて行かれそうな気がしたので断わったら、残念そうな顔をされた。
ちょっと可哀想かなと思ったけど、約束の三日間はこの家に居たい。
だから竜珠を貰うのは三日目にしようとカナンは思っていた。




