表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月燃金  作者: 下町
9/10

思い出した

 話を聞いたイルは、しばらく考え込んでいた。下を見て、上を向いて、口をへの字に歪める。下げられるだけ口の端を下げて、ん~~~と声を伸ばした。

「分からないなあ~。」

トオルが湯呑みで水を飲んでいる様子を観察し、自分の前にあるミルクピッチャーに手を伸ばす。両手でんっしょ、と持ち上げて口をつけた。鍋で水を飲んでいるかのようだ。

 すぐに口を離し、ミルクピッチャーを置く。

「とにかく、その、事故? 大きな車にぶつかった、んですよね。そこがポイントかな。」

顎を手の甲で拭いながら、ふうと息を吐く。しかし、その後も首をかしげている。

 トオルはその様子を眺めつつ、机に肘をついた。

「しかし、普通なら死んでいるよな……。運が良くても重症だ。」

体の浮いた瞬間の感覚が、うっすらと蘇る。何が起きたかサッパリ分からないあの時の、衝撃。

 イルはトオルの表情を見上げていた。

「ふーん、そういうものなんですね。」

確認するように、ゆっくりと言葉を続ける。

「事故で、世界のスイッチが入ったりとかはしない?」

「ない。そのスイッチがあるのかなんなのか理解できないが。多分、そういった事は、ない。」

即座に否定しつつ、トオルは意味を汲んで首を横に振った。

「大型の車と人間がぶつかったら……。」

実感が湧かないが、そこまで口にしてぞっとした。身震いを1つして、唐突に気付いた。

「そういえば、石。あの時になくなったな。」

自分の右手の平を広げてみる。信号の変わるのを待つ間、眺めていた赤い石。ただの石ではないと直感で仕入れたものの、どのような物だったのかも分からず仕舞いだ。

「石?」

 イルが身を乗り出している。あの時に石を持っていたのだと、トオルは身振りを交えた。大きさと形を示し、月のような模様のあった赤い石だと付け加える。

 間が開く。イルの目線が揺らぎ、トオルの指を追う。目を閉じる。眉間に皺を寄せる。

 ぱっとまぶたを開いた。

「それ、それがきっかけなのかも!」

背中の羽もぱっと開き、飛び跳ねた。すぐに体の動きを止め、腕組みをする。口の中でぶつぶつと呟き始めた。

「……でも、だとしたらどうしてアレが……それに、そうそう開いたりしないはず……。」

トオルの視線に気付いて、チラと上を見る。イルはまた、その場に座った。

「んん、多分その石。あっちの世界のモノです。モノというか、鍵というか。なんでこっちにあったのかはわかんないんですけど。」

ふう、と一息はさむ。

「僕達も、多分、それを探していた。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ