改めての、おかしな説明
イルは机の上にちょこんと座っている。
その小ささと、背中に羽がくっついている辺りがこの世界の者ではないのだろうとトオルに思わせた。今までの生涯、それほど長くはないがイルのような姿のモノは見た事がない。トオルが最初に連想した妖精や妖怪といった、子供の頃に本やテレビで見た空想上の生物なら思い当たる。そう、現実ではいない、空想でのものだ。
イルは少し考えるそぶりを見せ、姿勢を正して座り直した。背中の羽は折り畳まれている。
「僕はあっちから来たんです。こっちとあっちは、似ているけれどコトワリの違う世界で。本当は絶対つながらないはずなんですけど、近くなってる所もあってドアみたいなのがあるんです。それで、僕たちと……とーるさんと同じ顔の人は、こっちとあっちの間のドアみたいなのを見張る役なんです。だけど、この間急にドアが開いたと思ったら、---様が吸い込まれてどっかへ行っちゃって。」
トオルは腕を組んだまま、イルの話を理解しようと試みた。
「こことは違う……異次元の世界か? その入り口の門番みたいな事をしていたが、ドアが開いた? ん? 顔?」
トオルの脳裏に、先日のナツが蘇る。両手でトオルの頬を挟み、良く見たら、と驚いていた。
「そういえば、俺の顔って変わってなかったか? 髪と目と色だけじゃなく。」
驚いて、イルが飛び上がった。
「顔が? 変わった? どういう事ですか? こっちの世界ではそんな事がありえるんですか?」
興奮して、ぴょんぴょんと飛び跳ねている。手の平をイルにかざして、トオルはなだめた。
「おい、ちょっと待て。落ち着け。」
トオルは一度椅子から立ち上がり、奥の部屋から湯呑みを持ってきた。来客用のミルクピッチャーも見付けて、少し水を入れる。それを座ったイルの前に置いたが、大き過ぎる気がする。気にしない事にして、トオルは湯呑みの水に口をつけた。一口すする。
「どうも誰も気付いてないようだから、気にするのをやめようかとも思ったんだが。」
切り出しながら、椅子に腰を落ち着ける。
まず街の人々の髪や目の色がカラフルでおかしい事、本来そうではないはずなのにそれに違和感を感じなかった事を始めとして自分が事故にあった事、そこから顔も周りも変わったのではないかという事を話した。その後に、整形でもしなければそれほど顔は変わらないし自分にはそういった心当たりもない事を付け加えた。