小さな尋ね人
かなりの間が開きまして申し訳ございません。まさか、更新できるとは……我ながらそちらの方が意外でした。
多目に作られたカレーは、昼だけでなく夕食にもなった。昼食時にはチーズのトッピングだったが、夕食時にはコロッケが乗っていた。まだ、鍋の中にはルーが残っている。
夕食を食べた後、ナツは帰った。トオルは一度店を閉め、ナツを送ったのだった。日中のんびりイチャイチャしたので、夜中までは引き止めなかった。
1人で、街灯の照らす道を歩く。建物の影の中を頭上から街灯が照らし、トオルの影を浮かび上がらせる。薄い。
「ん?」
トオルは足を止めた。光の具合だとしても、自分の影が薄い事に気付いたのだ。一瞬、考え込みかけたがまた歩き出した。それとなく、他の通行人の影を見る。確かに、普通に影が伸びている。ぽりぽりと頭を掻いて、トオルは路地に入った。
確かに、道の横に複数立つ街灯と街灯の間ではそれぞれの光の向きや加減によって影が濃くなったり薄くなったりもする。複数に別れたりもする。しかし、それを考えても他の影と自分の足元から伸びる影とは異なっているように感じた。
そこで、囁くような声が耳に入った。
「見付けた……。」
振り返るが、特に何も見当たらない。顔を正面に戻すと、視界に何かが飛んできた。
「うおっ。」
反射的に叩き落としそうになったものの、その手を止める。虫ではない。蝙蝠のような……。
妖精が居たら、こんな姿なのだろうか。
「……妖怪?」
「どこがだー!」
思わず、トオルの口から出た言葉にそれはツッコミを入れた。真っ黒い服を着た幼稚園児のような子供に、羽がくっついている。大きさは手乗りサイズ。大きく息を吸い、勢い良くしゃべり始めた。
「久しぶりに会って妖怪呼ばわりなんてひどいしなんでこんなところにいるんですか何やってるんですかいつまで仕事サボってるんですか!」
圧倒されて、トオルは一歩後ろに下がる。
「……へ?」
さらに続けようとしたが、その羽のついた小さな子供は怪訝な表情を浮かべて口を閉じた。まじまじとトオルの顔を見ている。ぱたぱたと羽を動かしつつ離れた距離の分、トオルに近付いた。
「人違い、なわけはないし……なんか様子、変ですね? どうしたんです? ---様?」
最後の方、口は動くが聞き取れない。
「---様?」
もう一度、同じように声をかけられたが、トオルは聞き取れなかった。