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シスクの終章

「ウサギかと思えばとんだドラゴンだったな」

「そのようですね」

 雨降るルヴィシー丘陵上空には例の空飛ぶ帆船――三月のウサギ号。僕と大公殿下の命令で出陣した五千の聖騎士団を今もばかすか撃ちまくってる。

「あーもーあーもー」

 さすがの僕だってこれは悔しい。

「彼らを失うことは最初から計算済みだったからいいんですけどねっ! そもそも僕の予想と願望ではウサギさんはここに来ないはずですし、来たら来たで落とせるはずだったのにっ! なんなんですかね、これはっ! 別に彼らを失ったことが悔しいわけじゃないですけどもねっ! どう転んでもこっちがおいしい策だったわけじゃん! いいですか? 彼ら五千を損失として計上すれば、王様かウサギさんのどちらかを獲れるはずだっんですよ? それがこのザマとかっ! あーもーあーもー悔しいなっ!」

 言ってるうちに自分でも恥ずかしくなってきちゃったよ。

 大公殿下の言う通り、戦場では何が起こるかわからないんだよね。確かに嫌な予感はしてたけどさ。僕が甘かったよ。はいはい、そうですよ。

「今後は如何にするかね?」

 なに? 取り乱した僕がそんなにおもしろいの、大公殿下? 捲し立てる僕を見て苦笑したでしょ? ねぇ、したでしょ?

「いいですよいいですよ。よーっくわかりましたよ」

 敵も味方もそういうつもりなら僕にだって考えがある。

「つまり、この戦争のルールはこういうことですよね?」

 おかげでやっと見えてきましたよ、っと。

「こちらは手札がいっぱいで負ける要素は少ない。一方、あちらさん手札こそ少ないものの、こちらにはない鬼札(ジョーカー)を適宜出してくる、と」

 さすがに無傷ってことはないだろうけど、やっぱり僕の睨んだ通り、三月のウサギ号という遍在性は大きい。いつどこであの鬼札を切ってくるかわからないんだからね。排除か無力化か陽動か、何にせよ対処が必要なんだよね。それはわかってたよ。

「そうならそうと、僕のやり方で勝負させてもらうよ」

 戦術で勝負した僕が確かに甘かった。

「大公殿下、本隊はどうぞ予定通りマッサブレユ城塞まで駒を進めてくださいね。大変だと思うけど正攻法でどうぞどうぞがんばってください」

 そういう戦術はもう任せちゃえ。被害なんて多かろうが少なかろうがもう知らないもん。そもそも僕の専門は戦略だからね。

「僕はちょいくら本陣を離れて……そうですね、まずは北の方に向かいます――うん、なんですか?」

 大人しくただ聞いてると思えば、大公殿下は僕をじーっと見てる。なに、さすがにそれは気持ち悪いよ? 僕、そういう趣味ないし。

「貴公、悔しいというわりには……楽しそうだな」

「そりゃあそうですよ」

 なんだ、そんなことか。

 そんなの当たり前じゃん。相手が下手っぴすぎるゲームなんてつまらないもん。今回のゲーム、やっと僕に相応しい難易度になったわけだし。

「この戦争――おもしろくなってきたと思いません?」

 案の定、大公殿下は嫌な顔をした。

 はい、減算百点。

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