FILE2 ドS剣士と、プチ推理。 ~part2~
俺は「あること」をひらめく。過去の記憶の断片をかき集め、それをパズルのように繋いでいく。
「お前、家庭教師のエリザベートさんに怒られるような事したろ?」
ビンゴだ。
少女の自信に溢れた顔が、徐々に曇っていく。いや、顔の表情は変わらないのだが、明らかに引きつっている。
「な、何のことかなあ? エリザベートさんの授業は、週に一回、金の日だよ? 今日は木の日。エリザベート先生が来てるはず無いじゃない」
ちょっとからかうのも面白そうだ。
俺は頭をフル回転させて、相手を論破しようと試みる。
「その一。今日何も予定の無いはずのお前が、昨日闘技場での決勝に誘っても、断った。あんなに闘技が好きなお前が、しかも、大ファンのはずのエドガーが出場だったにもかかわらず、だ」
人差し指を立てて、ゆっくりと、だが確実に相手の自信をなくす目で、相手を見据えながら、俺は言う。
「べ、別にいいじゃないの。今日は気分じゃなかったの。そんな日もあるわよ」
少し目を外らし気味に、彼女は言う。彼女の言っていることは正論だ。
だが、俺は目を閉じて続ける。
「まあ、確かにそれもあり得る。だが、その二。今日、頼まれていた武器の補充のために、俺はお前の屋敷に出向いた。だが、何だ、あのメイド達の慌て様は? どうせ、掃除や食事にうるさいエリザベートさんを怒らせないために、あたふたしてたんだろう?」
今度は、人差し指に加えて中指も立てる。目を開けてみると、彼女は俺の顔を見ずに、下を向いてぶつぶつと小さな声で話し始めた。
「そ、それがエリザベート先生とは限らないじゃない」
完全に自信を喪失している。彼女を見て、俺は少し可笑しくて、笑いそうになった。
「そうだな、もし、これだけしかデータがなかったら、お前の勝ちだ」
その瞬間の、してやったり、みたいな彼女の顔は、たぶん、一生忘れない。
「だが俺は、決定的証拠を、『今ここで』発見した!」
彼女の笑顔は、一瞬にして奪われることになる。