9壊目 切なさと、焦燥と、ご都合主義と
今日から新学期。
肌が秋の訪れを間近に感じ取る頃合い。褐色の肌の生徒がゴロゴロ。
非国民どもめっ!
そんな中、ただ一人だけ異色の少女がいるな。
しかも美人だ。雪のように白い肌。切れ長の目。茶色の髪を左右で結っている。あれ? この描写は……。
「あっ……。キューくん! また会えて嬉しい」
…………。
いやいやいやいやいやいやいや…………。
「ちょ……姉さん! 姉さん!?」
別に逆上してモ〇ルスーツで味方のエースパイロットの恋人を殺しといて、冷静に艦隊の指揮官をしている親父を探す『閃光の少年』口調ではないので、悪しからず。
「何よ。シスコン」
殺すぞ、コラァ。
ってか、まだ続いてたみたいだね、この駄作。
まあ、出来ればヒロインだけは持ち帰りたいけど。
「言っとくけど、家庭用ハードの範疇よ。PC用のイベントは入れてないから、メリーゴーランドはないわよ?」
「うーん、姉さんの思考はお下劣を極めてるね」
バコッ!
一瞬にして視界がブラックアウト。誰かボクの姉さんを買い取ってくれないかな?
もう馴れ親しんだ、意識回復時のもやもや。鮮明告知で狭い和室と判明。
六畳くらいで、勉強机と本棚。窓が二つ。奥に押し入れとタンス。
日本人なら誰もが覚えがありそうな、とあるアニメの部屋。
ガタゴト、ガタゴト!
何か勉強机の引き出しが揺れている。
まさか……、まさか……。引き出しが勝手に開き中から登場したのは、
「こんにちは! ボク、ドラ……モゴモゴ、フゴ!」
ボクは全力で引き出しを閉めた。背中で押さえ、冷や汗を垂れ流し。
『おいっ! こらっ! さっさと開けねえとタイムパトロール隊を呼ぶぞ!』
何か言ってる!
引き出しが物凄い力で押され、背中を潰さんばかりの勢いだ。
「姉さん! 姉さんっ!?」
今回二度目の呼び出しに答えたのは、ボクから見て正面の押し入れ。
開いた襖から顔を覗かせる姉さん。
「ここから起きてこられるのも考えものよね?」
「知らないよ!」
『次元切断ソード!』
「!? 姉さん、早く!」
やばい物体が登場する前に、ボクは姉さんのブラックアウト攻撃を受け入れた。
あー、パンチドランカーになりそうだ。
森を抜けた山頂付近から眼下に広がる自然を眺めるのは格別。
どうやらボクの世界に戻ってきたようだ。
「なかなか面白かったわねー。次もエクストラステージを用意するから」
どうぞ、一人で楽しんでください。
「当分は巻き込まないでね。ボクは冒険のが楽しいよ。ここは能力の半分を注ぎ込んで形成した世界だからシナリオも長いし、これから白熱のシーンがあって面白くなるから」
「そこまで褒められと気合い入っちゃうわ!」
誰か翻訳を。
「でも一つだけ忠告するわ」
「何?」
「次回が最終回よ」
うそーん。
「だってファンタジー世界は、まだ3回しか体験してないんだよ!?」
ボクは指で数を表し、必死の形相で姉さんに迫る。
「煩いわね! 『こいつ』とあたしが決めれば、何でも通るのよ」
姉さん、どこかを指差してる。そして続けて、
「しかも連載もので初完結よ」
本音、出たぁーーー!
「とにかく、この冒険も次で完結させなさい」
「むちゃくちゃだよ!」
そんな要求、ハリケーンを素手で受け止めろ、と命令されてるのと同じだ。
「無茶が通れば、道理は海の向うよ」
「意味わからないよ」
「今頃ソーセキも、あたしの分の宿題に追われてるのよ」
「関係ないし! そもそも微妙になってきたからって、打ち切りみたいなご都合主義の完結は止めようよ!」
「そこまで褒められと気合い入っちゃうわ!」
いやいやいやいやいやいやいやいや…………。
暗殺する時間あるかな?