8壊目 フェイク
「ひぇー!」
「待ちなさい、ソーセキ! さっさとバッティングの練習台になりなさい! 二割は加減するから」
たった二割じゃ、金属バットで撲殺される確立は高いね。
某人気野球ゲームの影響を受け、姉さんは特訓中。将来はメジャーだとか。
ボクは、なれると思うよ。
乱闘要員♪
「もー、飽きた。この夢は諦めよ」
なんか夢って言葉は、簡単に使っちゃいけないと思えるよ。
ソーセキさんも安心して戻ってきた。
「やっぱ夢復活ー!」
バキッ!
姉さんの馬鹿力で振られたバットが、ソーセキさんの脳天直撃。
110番、110番!
まずは捕まえて貰おう。この猛獣を。
「やっぱ詰まんないわね」
人殺しは完全に野球への興味を無くした様子だ。
「いやー、死ぬかと思いました」
生きてるーーー!
プロレスラーみたいに流血してるのに、ソーセキさんは何事もなかったかのようだ。
その間にも何やら姉さんがTVゲームを引っ張りだしてきた。
「面白そうだからやりましょ?」
これはスー〇ァミ時代に人気を博した、ボン〇ーマンだ。爆弾で相手のプレイヤーを爆殺する単純なゲーム。
「あたしは『ちょっと錆びて赤とは言いにくい茶褐色ボン』ね」
もっと普通の選ぼうよ。
「じゃあ僕は青ボンで」
とソーセキさん
ボクは黒ボンを選択した。
ゲームスタート!
まずは壁を破壊してアイテムを探す。火力やボム数が勝敗を決めると言っても過言ではない。
「あー!」
うわ、ソーセキさん、いきなり自分を挟んで爆死。
いるよね。みそボン無しで死んで、5分くらい暇になる人。
ボクは一体だけ参戦したCPUを難なく倒す。あとは姉さんとの一騎打ち。
「いくわよ! キュロット」
姉さんはボクの仕掛けたボムを避けて接近。
どかっ! しゅばっ! どどどっ!
姉さんのボンバー、なぜか格闘戦を仕掛けてきた。
正拳突きから腰投げされ、追い打ちに顔面連打。
いつからこんなシュールなゲームに。よく見るとライフ有り!? しかも激減!
「気になったんだけど、中央の黒いプレートは何?」
「あれを取ると世界が終わって勝者になるのよ」
ボムで戦う意味無しっ!
その後もボクのボンバーは姉さんボンバーの餌食となった。
ソーセキボンバーなんて、追っ掛けられて、バットで撲殺。リアルだ……。
もうイヤだー!
ボクは残った夏休みの宿題にシャーペンを走らせた。
「勝手に引き込まないでよ。とゆーか、どうやったの?」
「バインを使ったのよ」
「そういう能力なの!? それに何でわざわざ別の世界でやるの?」
「あんたサブタイトル分かってんの?」
ユニバース!
姉さんは冷蔵庫を開け、ケーキを取り出す。
いい加減にしないと太るぜ、おいっ。
「な、何でフォークを喉元に?」
「急にそういう気分になったのよ」
110番、110番!
最後に警察という漢字を書き込み、夏休みの宿題は終わった。
でも姉さんの夏はこれからな気がするよ。気を付けないと、ね……。
夏って不慮の事故が多いから。