6壊目 学園恋愛モノ?
「キューくんのために、お弁当つくってきたの……」
頬を赤く染めた少女は、照れているのか決して目を合わそうとしない。ちょこんと弁当をボクの膝に置く。
騙されるな、ボク!
この少女は姉さんがボク好みに作ったキャラクターなんだ。こんな反則技に屈してたまるか。
「やっぱ、いらないよね? ごめん……なさい。余計な……こと……して……」
悲しむ少女。今にも泣きそうだ。
少女は涙目でボクを見ると、健気にも笑顔を作った。
「気に……しない……で……ね?」
ダメだーーー!
このままで食べる。何が何でも食べる。無心だ。心を無に。
心頭滅却すれば、萌えもまた萌えない。
今、ボクは神の領域に足を踏み入れた。108つの煩悩のどれにも属さない、ニュー煩悩。
萌え欲を制した。というか取り入れた。
弁当……食うべし、食うべし、食うべし。
「キューくん大好き! じゃあ次は一人駅伝がみたいなぁ」
ぬおおおおおおお!
ボクは、少女のために一人駅伝を披露した。そして疲労した。
「すごーい! 今度は東京タワーを自力で登って?」
ぬおおおおおおお!
「きゃー! 今度は鮫を素手で捕まえてー!」
ぬおおおおおおお!
「睡眠薬、100錠一気飲み!」
ぬおお……って死ぬわ!
ツッコミを入れたところで、ボクは全身が砕ける感覚に襲われた。
さすがに、無理をしすぎた。というか何でまだ生きてるんだろ?
跪いたボクを確認してか、やっと裏ボスが現れた。
恋愛に……裏ボス。
「おーっ、ほっほっほ! まんまと罠にはまったわねキュロット」
もちろん、姉さんだ。
「最初の魔法使いと同じノリだね」
「あるときは魔女、またあるときは魔法使い……」
何か語りだした。
「そしとまたあるときはキュロットの姉、紬。しかしその実体は……」
姉さんってボクの姉さんが実体じゃなかったの!?
姉さんは制服を脱ぎ捨て、レオタード姿になった。
「愛の戦士、宮廷歯に良い!」
……ちょっと待ってください。意味が分からないし、宮廷が歯に良いって、石油王は虫歯予防か!
「まあ、沖麻里ね」
「誰!?」
「織田真理の親戚よ」
侵食拡大!
「さーて、次のステージに行くわよ!」
姉さんは剣を取出し、地面に投げ付ける。
刺さって生じた割れ目から白い光が溢れ始め、世界を包む。
気が付くと、辺りは溶岩地帯だった。
姉さんがファンタジーを創造した? でも、その割にクオリティは高い。
赤みを帯びた黒い岩からは、マグマが滲み出ている。裂けた割れ目からも吹き出し、どこもかしこも灼熱地獄だ。
「フォースを感じる……」
えっ!? ボクは思わず、声が聞こえくる足元を確認した。
そこには柴犬。一発で雰囲気が台無し。
「フォースが近寄ってくる」
また何か言ってるので、ボクは正面を見た。
突き出た岩の上。頭までローブに包んだ人物の姿があった。