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4壊目 エゴなカムフラージュ

ボクと姉さんの旅は続く。鉱山都市を通り、草原を突っ切った先。

現在は聳える山と背比べ中。

入り口には看板が地面に立っていた。内容は『妄言注意』。

うはっ、姉さん絶対に入れない♪


「行くわよ、キュロット」


一番入ってはいけない人が何の躊躇もなく進む。

進んでいくと、緩やかな曲線を描いていた閑かな景色の道が、いつの間にか獣道に。


「ね、姉さん。なんか道が険しくなってない?」


「幻覚よ、幻覚」


そうだろうか?

二つだった足音が、今は八つぐらいに聞こえる。

綺麗な赤い花は見当たらず、代わりに人食い花が沢山。

さっきまで昼間だったのに、現在は洞窟の中にいるみたいだ。

『幻覚』の二文字で済ませるのは迂闊では?

もう一度、訊くと姉さんは、


「妄想よ、妄想。そう思うから、そう見えてくるのよ」


明らかな異変に気付かない人が最もらしい意見を言わないで欲しいな。

じゃあ、さっきから後方に見える『フードを被った怪しげな集団』や、『身体に巻き付こうと、周囲で待機する人食い花の弦』も妄想や幻覚なのか。

しばらく歩くと、日の光が降り注ぐ地面を踏んだ。

どうやら、獣道は抜けたようだ。


「――!?」


それと同時に目の前に怪物がいた。

人食い花の巨大バージョン。全長、五メートルはある。なぜか鋭い牙を持ち、無数の触手が地面を叩いている。


「戦闘準備だ! って、えぇ!?」


姉さんが姿を消した――っと思ったが、よく見ると遥か上空に浮いている。


「頼んだわよ」


いかにも、かったるそうに言う。










この、クソアマっ!

ボクは剣を引き抜き、化け物に切り掛かる。

たが剣は触手に奪われ、そのまま口の中に。それと入れ代わりに、銅貨三枚が飛び出す。

化け物ごときにボクの剣の価値を勝手に決められた。しかも、安っ!

戦意喪失したボクは、セーブポイントに。



「いや、手伝ってよ」


「いやよ。面倒だし」


「何の為にファンタジー世界に来てるの?」


「決まってるでしょ! 財宝ゲッチュで堕落生活の満喫するタメよ」


姉さんは硝子の器に入った美味そうなかき氷を食べる。カラーはレインボー。


「良いこと? こっからこっち――」


何やら語りだし、かき氷に彩られた虹の道にスプーンを刺す。


「近道をするには、飛ぶタイミングと角度が重要なのよ」


某レースゲームの解説、ご苦労さまです。

話の角度も重要視して、


「姉さん。ファンタジーはロマンなんだよ。仲間と冒険を繰り広げたり、魔王を倒して勇者になったり……」


「話は変わるけど」


えーーーっ!

熱意は消され、姉さんの独壇場に。


「最近さ。内容はコメディーのくせして、ジャンルを無理矢理ファンタジーにして自己満足するなって言いたいのよ」


「自爆してるよ!」


「物語をまとめるために格闘魔法バトルを始めたりするのは止めなさい! 主人公の性格上『いかにも』って感じで微エロなシーンを描写するも、その実、すべて作者の趣味じゃない!」


宣戦布告だよ。

姉さんが暴露しまくりのストレス解消は、まだ続いている。

ボクは冷水になったかき氷をスプーンですくい、恨めしそうに眺めてやった。

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