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能面少女  作者: 林原
2/4

あさ

少女は、走っていた。

教科書のたくさん詰まったスクールバックを振り回し、

さらさらの肩まで伸びた髪を振り乱し、

整った顔をゆがめながらも、

一生懸命に走っていた。のだが、

少女は悲劇的に走るのが遅かった。

小学生には軽く抜かされ、自転車をこいでいる老婆にも抜かされ。

はたから見ると軽くジョギングをしている様にも見えるが、

これが少女の本気なのである。


そんな走るのが苦手な少女がなぜ走っているのかというと、

理由は単純である。寝坊したのだ。

いつも一緒に行く友達を迎えに行ったが、先に行ってしまったようだ。

もう、薄情なんだから。とは思いつつも、少女はそこまで怒ってはいなかった。

その友達がそんな性格であることを理解していたからである。


前に人影が見えた。

薄情な友達、もとい、石神 凛(いしがみ りん)である。

石神はさらさらの黒髪にきりっとした大きな目、

雪のような白い肌となかなかの美少女である。

だが、能面のように無表情で、口は堅く真一文字に閉ざされている。

どこか妖しい雰囲気があり、それがよりいっそう魅力をかきたてている。


「凛ちゃん!」

少女が明るい声で呼びかける。

石神はくるりと振り向き「遅い」と独り言のように呟くと、

そのまま歩き出した。

「あはは、ごめんごめん」

少女はそう言うと、石神をあわてて追いかけた。

「凛ちゃんは何時に起きたの?ゆず…わたしなんか、6時40分だよ」

少女は自分の事を名前で呼んでしまう癖があり、矯正しようと頑張っているが

ときどき無意識に口走ってしまう。

「5時。家を出たのは6時45分」

石神が呟く。

6時45分に家を出たのにまだあの場所を歩いてたってことは…

ゆっくり歩いて、待っててくれたのかな?

少女がそんなことを考えながらにやにやしていると、

「何だ」

石神が少し恥ずかしそうに言った。

「ううん、なんでもない」

少女はこぼれる笑みを隠せないまま返した。

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