第3話「街歩きデート用の男装服選び」
放課後、あたし、唯崎純は少し緊張しながら校門前に立っていた。
今日、柚穂と一緒に街歩きデート用の男装服を選びに行くことになっている。
「お待たせ、純」
柚穂は白い夏服に涼しげな表情を浮かべ、黒髪をさらりと揺らしながら立っていた。
「大丈夫、あたしも今来たところだし」
自然に笑顔を作ろうとするけれど、心臓は少しだけ早く打っている。
今日は“恋人役”として初めての街歩きデート準備日なのだ。
「じゃあ、行こう」
柚穂は手を差し出してくる。
あたしは迷わずその手を握った。
◆◆◆◆
街に出ると、夏の光が照りつけて汗がじんわりにじむ。
柚穂は慣れた足取りで通りを歩き、あたしを小さな専門店やセレクトショップへ案内する。
「純、まずは男装用の街歩き服を選ぶわ。涼しくて自然に見えるやつね」
「……男装用……って、どうなるの?」
「そのまま自然に男子に見えるように選ぶのよ。丈や色、雰囲気を調整して」
「……なるほど、緊張する」
店内にはシャツやチノパン、Tシャツやスニーカーが並ぶ。
柚穂は手際よく何着かを選び、あたしに手渡す。
「まずこれを試してみて」
「え、全部?」
「全部じゃないけど、似合うかどうか見たいから」
「……わかった」
◆◆◆◆
試着室に入ると、あたしはシャツとチノパンを着て鏡を見た。
肩幅が少し広く見え、全体のシルエットも自然に“男子”っぽくなる。
「……あれ、意外と違和感ない」
「うん、純、そのままでいい感じよ。自然で男子に見える」
次にTシャツとショートパンツも試す。
夏らしい爽やかな色合いで、風通しもよく涼しい。
鏡に映る自分を見て、胸元が隠れて安心した。
「……これなら大丈夫そう」
「うん、完璧よ、純」
柚穂の笑顔を見て、あたしも少し安心した。
「……やっぱり、今日は頑張って付き合ってよかった」
「うん。純、こういう時間って意外と楽しいでしょう?」
◆◆◆◆
服選びを終え、柚穂はスマホを取り出す。
「せっかくだから、この男装姿で写真を撮ろうか」
「え、もう撮影?」
「街歩きデートの記録よ、SNS用に少しだけ」
「そ、そう……」
二人で街のベンチに座り、自然に立ったまま笑顔を作る。
柚穂はさっと撮影して、何枚もシャッターを押した。
「ふふ、完璧に恋人っぽい」
「……そうかな……?」
「うん、純。自然でいい感じよ」
あたしは少しぎこちなく笑うけれど、胸の内は楽しい気持ちでいっぱいだった。
「……なんだか、ドキドキするね」
「それがいいのよ、純」
◆◆◆◆
街を少し散策したあと、二人で日陰のベンチに座る。
柚穂が差し出したアイスを受け取り、一口頬張る。
「今日、楽しかったね」
「うん……でも、秘密の恋人役って感じで、変な気分」
「それも悪くないでしょう? 純」
「……ちょっとはね」
柚穂は肩を寄せ、くすりと笑った。
「この夏、色んな思い出を作りましょうね」
あたしは小さく頷く。
男装デートもいいけど、こうして普通に街を歩く姿も楽しみになってきた。




