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虹色の光が燈る異世界統治ーー転移者のスキルが規格外すぎた件  作者: 青山ハル
第I章 異世界転移とヴィクトリア王国
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006 歴代最強の騎士団長ーマシェリィ・スカーレット

 マリィが言うように、タケルが意識を失っていた三日間は、王宮に仕えるエリート達や王宮を訪れる貴族達に彼の噂が広がるには十分すぎる時間だった。


 王宮の裏庭にある謎の門から最強の戦士が現れるという話は、この宮殿に仕える者であるなら、誰しも一度は聞いたことのある有名な話だったから尚更のこと、噂は瞬く間に広がったのだ。

 まさか本当の話だとは誰一人信じていなかったかもしれないが、事実、クズ・タケルはそこから現れた。


 最強の戦士は、見慣れない服装を纏っている(ゆるゆるのジャージ)20歳前後の好青年(?)で、コスプレ、キャラ、ハーレム、パチンコ等の知らない単語を話していた。

 最強の戦士は、ヴィクトリア王国の第二王女であるリリシア・ヴィクトリアに招かれた茶会で、挨拶を交わすかのようにいきなり50,000もの膨大な燈値(トーチ)を可視化させ、その場にいた全員を驚かせた後、忽然と姿を消した。


 ――とまあ、こういった具合に噂というものは得てして嘘と真実が混ざり合って広がるものだ。


「そういえば、俺が光の粒を出した後ってどうなったの?」


「……あのまま燈値(トーチ)を放出させ続ければ危ないと察知したマシェリィ様が上手く気絶させられて、タケル君はそのままずっと、今日まで眠っていました」


 マリィの様子から、燈値(トーチ)を消費し尽くすと絶命するという話は本当のようだ。


「マシェリィっていうと……モデルみたいに背が高い、あの金髪ねーちゃんか。あとでお礼言わなくちゃな」


「……気絶したタケル君を運んでくださったのはジャック様です。あ、マシェリィ様は近衛騎士団の騎士団長で、ジャック様は副団長です」


「へぇ、すげえ身分の人達にお世話になってたんだな(マリィとも会話が続くようになってきたな)」


「……お二人とも、タケル君と剣を交えてみたいと話されていましたよ。最強の戦士に手合わせしてもらいたいと」


「お、そりゃいい。激アツの能力覚醒イベントじゃん」


「……すみません、よくわかりません」


「ごめんごめん。気にしなくていいよ。こっちの話だから」


 タケルは自分のことを完全に最強の戦士と思い込んでいるようだ。

 だが、彼の認識もあながち間違っているわけではない。

 平均100の燈値(トーチ)が50,000ということは、例えるなら、握力の平均が40kgとすれば20,000kg、息を止めることができる平均時間が1分とすれば500分といった具合だ――そういう者を、果たして人間と呼べるのか疑問に思えるレベルの話なのだが。


 マリィに案内されて三日振りの入浴を済ませ、身も心もさっぱりして部屋に戻ると、最強の戦士が目を覚ましたと耳に入れた近衛騎士団達が彼を待ち構えていた。


「ジュディ、マリィ。宮殿の風呂ってめっちゃでけぇな。プールみたいだった……って、騎士団の皆さん!?」


 騎士団長マシェリィ・スカーレット、副団長ジャック・カエサル、ほか団員が十数名。

 タケルは自分よりも遥かに年上で、かつ歯が異常に輝いている体格の良い騎士団に苦手意識を持っているようだ。


「タケルさん、体の方は大丈夫ですか?」


 マシェリィが一歩前へ出る。

 並んでみると少しタケルの背が高いだけで、それほど変わらない身長差であり、いかにマシェリィが長身であるかが窺い知れる。

 文武両道、容姿端麗――タケルがモデルさんと評するのも無理はない。


「マシェリィさん……でしたッスよね。なんだか助けてもらったみたいで、ありがとうございました」


 屈強な団員を従わせる超絶美人の騎士団長に緊張しているのか、慣れない敬語になってしまう。


「ふふふ。そう畏まらず、最強の戦士に恥じないよう堂々としていて下さい。私も他の団員達も、ぜひタケルさんと剣を交えてみたいと話をしておりました。胸を借りるつもりで手合わせ願いたいな、と」


 タケルが持つ膨大な燈値(トーチ)を目の当たりにしたマシェリィ達は、彼こそが最強の戦士だと信じているようだった。

 リリシアに誘われたお茶の場で「あれ、この男もしかしたら違うかも……」と、一瞬でも疑ったことを強く反省し、見た目で判断してはいけないという教訓を胸に刻んでいたのだ。

 学業に不真面目でも、遊びで散財した貧民でも、品のない服を着ていても(ゆるゆるのジャージ)、そんなものは燈値(トーチ)の総量がおよそ50,000というアホみたいな能力が補ってなお有り余る。

 それほどに、この世界において燈値(トーチ)というものは重要視されているのだ。


「もし体調が良いのであれば、いかがでしょうか?」


 王家直轄の近衛騎士団にとって、彼が現れたことは王国をより強固なものにし、騎士団の力の底上げを図る良い機会であると捉えている。


 マシェリィを含めて近衛騎士団はエリート中のエリートであり、当然、騎士としての腕は立つ――というより、騎士として秀でていなければ近衛騎士団に入ることは許されない。

 彼らは王宮にいる貴族や要人、このヴィクトリア王国を守る力が自分にあると信じている。

 だからこそ、最強の戦士に自分の力が通じるのかどうかを試したいと思っているのだ。


 それもそのはず、彼らはスクールに在籍中から才能に溢れ、自分より強い者はいないと思いながら大人になり、王家直轄の近衛騎士団に選ばれた超絶エリートの集合体。

 ようするに、強いヤツを見ると戦ってみたくなる戦闘狂。己の力を誇示したくて仕方がない輩。

 だって彼らは、これまで自分に挑んできた者を圧倒的な才能で絶望させ、周囲から持て囃され、勝ち続ける人生しか送ってきていないのだから。


 そういう彼らの頂点に君臨する騎士団長――マシェリィ・スカーレットは、この春に就任したばかりであるにもかかわらず、それも19歳の女性ながらにして、すでに近衛騎士団の長い歴代の中でも最強と謳われているほどの実力の持ち主なのだった。

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