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虹色の光が燈る異世界統治ーー転移者のスキルが規格外すぎた件  作者: 青山ハル
第I章 異世界転移とヴィクトリア王国
10/24

010 王都シャルル

 クズ・タケルが異世界に現れてしばらく経ったある日のこと、彼は初めて王宮の外に出ることとなった。


 数日前に近衛騎士団の副団長ジャック・カエサル、騎士団長マシェリィ・スカーレットとの模擬戦を行った後、他の騎士団員達とも剣を交えた彼は、その圧倒的な燈値(トーチ)量から皆に最強の戦士と認められたのだった。


 そして現在、騎士団長マシェリィの計らいもあって、彼に王国の要職を任せることができないかと王国議会とやらで審議中なのだが、これが何日経っても音沙汰ない状況なのだ。


 マシェリィら近衛騎士団は常にタケルの相手をしてやれるほど暇ではないため、この数日間はメイドのジュディとマリィだけが彼の話し相手だった。

 その二人も、本来の仕事である王女リリシア・ヴィクトリアの専属メイドを勤めなければならないため、当然どちらか一方あるいは二人ともいない時間帯がある。


 退屈凌ぎに宮殿内を散歩してみたが、変わった服装を着ている最強の戦士に興味津々な眼差しを向ける貴族や役人はいるものの、彼との距離を縮めようと話しかける者は皆無だった。


 ついに痺れを切らしたタケルの「異世界、暇すぎじゃね?」という一言に、メイドのジュディが助け舟を出したのだ。


「暇なら買い出し付き合いなさいよ」


 相変わらず王宮に仕えるメイドさんとは思えない横柄な態度だが、タケルはすっかり慣れてしまっている。

 とまあ、そういう経緯があって、タケルは初めて王宮を囲む塀の外に出たのだった。


 ここは王都シャルル。

 王宮を取り囲む塀――を取り囲むように設計された人工都市である。

 基本的に石造りの街並みで、食料品や装飾品を売る木小屋が立ち並ぶ場所は多くの人で賑わっている。

 街には石畳みの水路が引かれ、その両脇に色とりどりの草花が植えられている様は美しいの一言に尽きる。


 石造りの建築物の緻密さや巨大さ、街行く人達が綺麗な装飾が施された衣服を纏っていることからも、一定の文明が築かれた都市だということが窺える。

 タケルとジュディが歩く横を、荷を引く馬車がゆっくりと追い越して行った。


「ジュディ……異世界だ」


「は? その話、何回聞かされたと思ってんの」


「違う。俺が待ち望んだ異世界だ」


「意味わかんない」


「見ろよジュディ、この街並み! めーっちゃ異世界!」


「んー?」


 タケルのテンションが上がるのも無理はない。

 彼が見ている景色は、異世界モノにありがちな世界観そのものだからだ。

 ジュディの視点に立ってみると馴染みの風景なわけだから、どうして彼がキャッキャと騒いでいるのか理解できないようだ。


「ていうか、俺達めっちゃ見られてない?」


「そりゃあ、アンタの格好が珍しいからでしょ。ジャージ、っていうんだっけ?」


「お前も大概珍しい格好だろ。なんでメイド服?」


 王都では鮮やかな色合いの服装を着ている人が多い中で、白と黒のメイド服はかなり目立っていると言える。

 しかも、見かける女性のほとんどは膝が隠れる長さのスカートで全体的に肌面積が狭いのに対して、ジュディは太ももが露わになる短さのメイド服。かなり際どい。


「これが私の正装」


 あっそ。とタケルは心の中で呟いた。

 ジュディは定期的に王都に足を運んでは買い出しをしているようなので、街の人からは宮殿に仕えているメイドさん、という程度の知名度は得ているらしい。

 なので、二人が感じている視線はタケルに向けられているもので間違いないようだ。


 宮殿の中でも外でも、好奇の目に晒される感覚はどうも居心地が悪い。そして何より、ジュディが購入する果物やら野菜やらの食料品がなぜか次々と自分の腕に乗せられていくのが納得いかない。

 タケルは外に連れ出してもらった理由をようやく理解したようだ。


 タケルが持つ荷物はどんどん増える。

 香辛料などの調味料を爆買いするジュディを睨むと、彼女はドヤ顔で微笑んだ。


「王女の客人にこんな事させていいのか?」


「アンタ最強なんだから、それくらい余裕でしょ?」


「最強ってそういう意味じゃなくね?」


「うそうそ。あとで半分持つわよ」


 ジュディ曰く、大量の手荷物を一旦下ろして貨幣を取り出すのが手間だったらしい。

 ちなみに、ヴィクトリア王国で流通している貨幣は金貨、銀貨、銅貨といった金属貨幣で、王家の紋章が刻印されていることが貨幣価値を示す信用力となっているようだ。


「というかさ、食料品なんかは宮殿に運ばれてくるんじゃないのか?」


「そうよ?」


 だったらこの買い物は何だよ、とツッコミを入れる。


「宮殿に届けられるものだけじゃ、なーんか物足りないのよね。味気ないというか何というかさ」


 つまりこれは公務ではなくジュディの私的な行いらしい。だったら尚更メイド服のままでよいのだろうかという疑問が湧いてくる。


 買い物が終わった後、二人がしばらく王都を散策していると、所々で白馬に乗った近衛騎士団が王都の巡回をしている場面に遭遇した。

 タケルやジュディと面識がある者にも出会うこともあり、その際は「おやタケル殿、お元気そうで」「あ、どうもッス」と軽く挨拶を交わす程度のやり取りが何度かあった。


「騎士団のオッサン達、なんで馬に乗ってんの?」


()()なんだから当たり前でしょ」


 あー、馬に乗ってるから騎士団って呼ばれているのか。王都で何かあった時にすぐ駆け付ける近衛騎士団ってわけね、と納得する。

 タケルは、パトカーに乗って巡回する警察みたいな人という認識を持ったようだが、大体それで合っている。


 さらに散策していると、王都シャルルの中でも一際目立つ立派な建造物に目が止まった。

 シャルル大聖堂――とジュディが説明した。

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