第03話 ドリーミング
結局、父の話を自分なりに調べたが、確かなことはわからなかった。
オーストラリアの先住民、アボリジニには、ドリーミングという独自の価値観と歴史があること。ドリーミングとは、神話の時代の概念で、アボリジニ外部の人間が抱く一般的な時間概念とは大きく異なること。また、ドリーミングには、人ならざるあらゆる生命と生物がいること。人間は眠るとそのドリーミングという世界に繋がることができること。すべての人間の魂はドリーミングからこの世界に生まれ、死ぬとドリーミングに還ること。
インターネット上だと、どのサイトの情報も抽象的で、的を射た内容があまりなかったのだ。
ただ調べた情報に、身に覚えがないわけではなかった。
父にネックレスをもらってから、俺は睡眠中の片頭痛で目を覚ますことが頻繁にあったのだ。そういう時は決まって、おぼろげながら、日本ではないような、どこか遠い国にいるような景色を見た記憶だけが、寝起きの頭に残る。そんな夢を大震災までの一年間、時折見ていた。
しかし、この四年間は一切見ていなかった。災害のショックで無くなったのか、ファンタジー小説を読み過ぎていただけなのか…。
それが、どういうわけか今日、また"再発"したのだ。
だが考えたところで、何かが起こるわけでもない。父に言われたことが、無意識的にそうさせたのかもしれない。そうやって自分に言い聞かせ、パソコンの電源を落とした。
眠っている両親を起こさないように、物音を立てないように痛み止めを飲んできた俺は、自室に戻って横になっていた。
手に握った例のネックレスを見つめる。カーテンの向こう、雲の切れ目から差す月明かりに、ペンダントトップの宝石が照らされていた。
見つめながら、幼馴染のヒカリと過ごした日々を思い出していた。
しかし、だんだんと思考することができなくなり、俺の意識は遠のいていった。