帰り道。温度。
いつもの帰り道。
電車に乗って、その後は徒歩。
ぽつぽつと歩いていたら、カシャッと音がした。
カメラ?私はふと顔を上げる。
「うえはー!おかえり!」
背後から突然ジュナが爆音で話しかけてきて、私は咄嗟に身をすくませた。
「うわ!なんだ、ジュナか…」
ジュナはカジュアルな服を着て、デカいカメラを首から下げている。
……撮られた?
「ジュナ、そのカメラ、何?」
私の問いに、ジュナはカメラを両手で抱え、見せるように突き出してくる。
「仕事用だよ!あれ?言ってなかったっけ?あたし、フォトグラファー」
「あぁ、それで」
いや、私のこと撮るなよ。そう言えば、家でも一度撮られたことがある気がする。
でもまぁ、いいや。めんどくさいし。
私はまた家へと歩き出す。ジュナは近すぎるほどの近さで隣に並び、一緒に歩く。
「ねー、疲れた?今日はね、作り置きしておいたの。えらいでしょ?」
「うん。ありがとう」
気持ちのこもっていない、自分の声。それでもジュナは嬉しそうだった。
「でしょ!ちゃんと愛情はたっぷりだからね」
「うん」
沈黙。でも居心地が悪いわけではない。
仕事以外で人と話すのが久しぶりだ。どんなテンションで話せばいいのか分からない。
私はおずおずと口を開く。
「その、仕事…大変なのか?」
ジュナはうーんと首をかしげながら答える。
「大変っちゃ大変だなぁ。でもさ!日本に帰って来られてすごくない?」
「え、うん」
よく分からないけど。
「まじさーフォトグラファーなら世界飛び回れるって思ったんだけど、でもあたし日本に帰りたくって」
「うん」
適当な相打ち。
「今度はうえはと一緒に飛行機乗りたい!」
ジュナの当然の提案に、私は呆れてため息を吐いていた。
「むり」
「えーなんでー?」
理由なんかなんでもいい。
マンションに着く手前になったので、私は鞄に手を突っ込んでゴソゴソと家の鍵を探した。冷たいキーホルダーに手が当たると、それを引っ張り出す。
鍵を持ち、階段を上がる。足音は2つ。
「うえは外国きらい?」
ジュナの問いに、私は少し考えてから答える。
「興味はあるけど、行くのは別」
「ふぅん」
部屋の前に着き、鍵を開ける。ドアを開けると、自分の部屋とは思えない綺麗な空間が広がっていた。
「……掃除、ありがとう」
呟くと、ジュナの明るい声が返ってくる。
「your welcome!」
突然のネイティブ英語に、私はぷ、と小さく笑ってしまった。




