帰ったら
帰ったら、女がいる。
この状況、どうだろう。嬉しい?たまらない?
私にとっては、ひどく億劫だ。
「……っはぁ〜〜〜」
玄関前で、溜めに溜めた溜め息を吐く。
鍵を開けようとして、やっぱり何度か自分の号室であることを確認する。
覚悟を決めた。鍵を開ける。さようなら、私の楽園。
部屋に入ると、まずは良い匂いがした。みそ汁だ。
続いて、あいつの鼻歌が聞こえてきた。
「ふん、ふふー、ふんふん、ふーん」
街なかで良く流れてるやつだ。
私は玄関から部屋に入っていった。私に気づいたジュナが、ぱっと顔を上げる。
「おかえりー!」
長い金髪を乱雑にまとめ、部屋着みたいな服にエプロンを付けている。これでも絵になりやがるんだから、恐ろしい。
「…ただいま」
一応返事はしたが、慣れない。いつも1人だったから。
「ご飯できてるよ!食べるでしょ?」
肯定前提かよ。私は「うん」とだけ返事をした。ジュナはテキパキと準備を進めている。
ジュナのことは、住まわせてあげることにした。「帰る家が無い」と言うもんだから、さすがに放っておけなかった。同性だし。
まぁ、同性といっても私のこと好きみたいだが。ラブのほうで。力も私より強そうだ。体格差けっこうあるし。
でもさ、さすがに女の子を夜外に放り出すのは駄目だろ。
「はい!召し上がれ!」
悶々と考えている間に、料理が運ばれてくる。私はぼそっと言う。
「あ、ありがとう…」
「どういたしましてー!」
しっかり聞こえていたようだ。
私は出してくれた料理を口に運んだ。
なんだか、染みた。美味しいのはもちろんだが、染みる。そういえば久しぶりの手料理だ。
「お!上手くできた!ね?」
ジュナは自画自賛。私もここは、素直に頷いておくことにする。
「正直、美味しい」
「やったー!また作るね〜」
ジュナはご機嫌だ。
こういうのも悪くないかも。なんて、その時の私は思っていた。
「ごちそうさま」
私が箸を置くと、まだジュナはもぐもぐしていた。
「ん!食器置いといてね。あたし洗うから」
「いや、さすがにそれは無いっしょ…」
私が食器をまとめだすと、ジュナが慌てて止めてきた。
「いいんだって!お願い!ね?あたし、うえはの食べたあとも好きなの!」
_____ん?
何を言っているんだこいつは。
しかし私は彼女の圧に押され、しぶしぶ引き下がるしか無かった。食べたあとも好き、その言葉を深掘りするのも怖い。
「…ありがとう。ゆっくり食べなよ」
「うん!」
ジュナの笑顔。可愛いくせに、怖い。