休日。虚無。唖然。
休日。
目が覚めたのがいつもの時間。なんだか損した気分になって二度寝して、気づけば昼前。
起きたがらない体をなんとか起こし、ダラダラ過ごす。そのうち腹が空いてくる。冷蔵庫には当然、何もない。買いに行かねば。
休日はいつもこうだ。毎回、次はもっと実りある休日にしようと思うのに、結局こうなる。
私は近くのスーパーへ向かった。駅近に住んでいて、スーパーも近くにある。田舎だがなかなか便利な立地だ。便利故、いつもこの辺でなにもかも終わらせてしまう。
スーパーで作り置き用の食材を買い、ついでに昼飯の弁当も買う。それとコーヒー。
小さなイートインスペースで、その弁当とコーヒーを開ける。ひとりぼっちの身に、家族連れの楽しそうな声が染みる。
自分のことは、惨めだと思う。だから何だ。何も変えられない。私はこんなもんだ。
その時、視界に知っている人が映った。
昨日のあいつだ。ジュナ。ジュナは首からデカいカメラをぶら下げ、こちらに向かって歩いてきている。
付けられてる?私が?
そう考えた一瞬、ジュナと目が合った。
ジュナはぱっと笑顔になり、手を振ってくる。
「うえは〜!奇遇ー!なにしてんの?」
私は眉を寄せ、答える。
「ご飯食べてる」
ジュナは私の買い物袋を見て、それから私を青い瞳で覗き込んでくる。
「重くない?運ぶの手伝おうか?」
「いや、大丈夫。いつものことだし」
荷物にかこつけて、また家に来るつもり?そう、思ったのだが。
「おっけー!じゃ、またねー!」
ジュナはあっさりその場を去っていく。
また返事できなかった。
私はため息を吐き、弁当を食べ終えた。美味しかった、と思う。
買い物袋を持って、家に帰る。酒の缶を買ったから少し重い。
ジュナ。そうだ。思い出した。
保育園児の頃、やたら私にくっついてきた子だ。確か小学生になる前に海外に帰ったはず。国は忘れた。あの時は日本語しか話せなくて、海外に行くのを不安がっていた。
一緒に外国語を勉強したっけ。でもジュナって名前だったか?
……あぁ、そうだ。ユナって呼んでた。ジュナが発音できなくて。ユナちゃんだと思ってた。
「なんであいつのこと、考えてんだろ」
ポツリと呟いて、ぼんやり天井を見つめる。
あいつ今、何やってんだろ?あのカメラ、高価なやつっぽかったけど。仕事?趣味?いや、そもそも、なんでこんなにあいつのこと考えなきゃいけないんだ。
私だって、毎日仕事して、土日休みで、順調じゃん。
仕事だって嫌いじゃない。疲れるけど。酒飲みたくなるけど。辞めたいこともあったけど。
私は、考えるのをやめた。もう寝よう。今日のタスクは完遂。よくやった、私。
次にジュナと会ったのは、4日後。水曜日、週の真ん中。もはや虚無になっている曜日。
場所は、家の前。
俯いてトボトボ歩いていて、ふっと顔をあげたらいるもんだから、びっくりした。
「うえは〜!おかえり!」
ジュナは買い物袋を持っていて、あのカメラも首から下げていた。
「…あんた、ユナ?」
昔の呼び名で呼んでみる。するとジュナは、ぱっと顔を輝かせた。
「そーーーー!!!ユナユナ!ユナって呼んでた!」
テンション上がりすぎでしょ。苦手だわ、外国人。
「あ、あはは…」
ジュナの隣を通り過ぎようとする。すると、彼女も着いてきた。さすがに、何をする気か聞かねば。
「家には入らないでね。私のこと、その、変な目で見てるんでしょ」
ジュナはあっけらかんと答える。
「変じゃない!じゅんあい!」
「はぁ?」
「だから、うえはのこと最優先にするし!だからさ…」
部屋の前まで来て、そして、クソデカキャリーバッグが目に入った。
「今日から一緒に住んで!」
同棲しまーす!