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コンカフェで働いてたら村を救った話  作者: たこやき風味
コンカフェで働いてたら空を飛んだ話
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4. また会いに行く話

 宿のベッドに寝ころび、今日一日の事を思い返す。


 パンをご馳走になったあと、フラウに宿場町について尋ねたら『その町ならすぐそこだよ』って。

 フラウに教えてもらった通り、街道まで戻って、右の道を少し進んだところにこの宿場町があった。地図の精度がいまいちだったみたいで、道が変な方向に曲がって描かれていたみたい。

 あのとき、右の道を選んでいれば宿場町に着いてたってことだよね。けど、道を間違えたおかげでフラウに出会えたし、結果としては良かったのかも。


「不思議な精霊だよね、フラウって」


「どうしてだ?」


「だって、精霊なのに人間みたいな生活してるんだもん。パン焼いたりしてさ」


「あれは、人間の動きをまねているんだろうな。精霊は食事をする必要はないからな」


「そうなんだ。けど、なんでそんなことしてるの?」


「想像だが……精霊を生み出した畑が《人との共存》を望んだのかもしれないな」


「へー、そんなこともあるんだ」


「精霊は生み出された環境や意味によって姿や行動が変化する。あの精霊は少女の姿で人と共存しながら畑を守ることが使命なんだろう、おそらくな」


 少女の姿で畑を守る精霊か。


「けど、なんで村の人たちはフラウのことを幽霊って言ってたんだろ? 子供たちは気にしてなかったみたいだけど」


「大人たちは、フラウが人ではない〝何か〟だと感じていたか、もしくは不完全な姿の時期があったのか。子供は大人と違い不思議なものに恐怖心がなかったのかもしれないが……今となってはわからないな」


「そっか。けど、村の人たちとは共存できてたってことだよね。子供たちはフラウの家に遊びに行ってたみたいだし」


「おそらくはな。住人たちは村を放棄してしまったが……」


「…………」


 フラウ、何十年もあそこにひとりぼっちでいるんだよね。なんだか、胸がちくちくする。


「明日また会いに行こうよ。フラウに『また来る』って約束したし」


「……先を急ぎたいところだが……そうだな。俺もあいつに聞きたいことがあるしな」


「聞きたいこと? フラウに?」


「ああ。子供の姿とはいえ、あそこまで人間と同じ姿をした精霊はそうはいないからな。だからこそ確かめておきたいことがある」


「そうなんだ。私、フラウが初めて出会った精霊だから、そんなものなのかと思ってた」


 フラウに初めて出会ったときに『なんでこんな場所に女の子がひとりでいるんだろう』って思っちゃったし。


「ねぇ、精霊ってそのへんにいるものなの?」


「ああ、精霊はどこにでもいる。だが、大抵の精霊は姿が見えない。見えたとしてもモヤのような状態か、小動物のような姿だ。その存在を感じるのも難しいだろう」


「精霊がどこにでもいるってことは、カールラさんみたいな精霊魔術師って、そこらへんにいる精霊の力を借りて精霊魔術を使ってるってこと?」


「ヤツの場合は違うな。精霊魔術師は精霊と契約していることが多い。そうでなければ精霊がいない場所で精霊魔術を使うことはできないからな」


「契約した精霊を連れてるってこと? カールラさんひとりだったけど?」


「姿や気配を消しているんだろう。精霊魔術で空を飛ぶことができるくらいだ、それなりの力を持った精霊と契約しているだろうな」


 カールラさん、さすがだなー。

 海賊船から脱出するときも私を抱えて飛んでたし、きっとすごい精霊を連れてるんだろうな。

 ――さてと、夜も遅いしそろそろ寝よっと。


『明日はフラウにプレゼントを買っていこうかな。何を買っていったら喜んでくれるかな』


 その夜、私は遠足の前日のような高揚感でなかなか寝付けなかった。


    ◇


「マホロがすぐに来てくれるような気がして、今日は畑のお世話を終わらせておいたんだ!」


 フラウが嬉しそうにお茶を淹れている。翌日、早速私はフラウの家を尋ねていた。


「私もフラウともっとお話ししたいと思ってたからね。すぐ来ちゃった!」


「うれしいなー。はい、どうぞ!」


 フラウが私の前にカップを置いた。


「あっ! あとね!」


 フラウが席を立ち、足早にキッチンへと向かう。

 ガサゴソと音がしたのち、木製の器を持って戻ってきた。


「久しぶりに焼いてみたの。食べてみて!」


 器の中にはクッキーのようなお菓子が盛られている。

 形や色は様々で、見ているだけでもワクワクしてくる。


「おいしそう! いただきます!」


 山盛りのクッキーの中から綺麗な茶色に焼かれた丸いクッキーを手に取り、こぼさないようにそっとかじった。

 サクサクとした歯ざわりと、口の中に広がる小麦の香りが心地いい。


「おいしい!」


「やった!」


 フラウが嬉しそうにバンザイした。

 一枚、もう一枚とクッキーを食べる。フラウの焼いたクッキー、すっごくおいしいなぁ。

 って、クッキーに夢中で忘れるところだった!


「今日はフラウにプレゼントを持ってきたの! 昨日パンをたくさんご馳走になったお礼!」


 私は鞄からプレゼントの包みを取り出すと、ちょっと照れながらそれをフラウに差し出した。

 サプライズに、驚きの表情を見せるフラウ。けど、私から包みを受け取ると、その表情が笑顔へと変わる。


「ありがとう! あけていい?」


「もちろん!」


 フラウがいそいそと包みを破る。

 包みの裂け目から、白い耳がぴょこんと現れた。


「なにこれ! かわいい!」

 

 満面の笑みで《うさぎのような動物のぬいぐるみ》を抱きしめるフラウ。

 宿場町のおみやげ屋さんであれこれ悩んで決めたプレゼント。フラウに友達ができたらいいんじゃないかと思って、これにした。


 ぬいぐるみを両手で掲げたり、耳を手でぴょこぴょこしたり――フラウが楽しそうにぬぐるみで遊んでいる。

 そして――


「マホロ! ありがとう!」


 フラウが両手に持ったうさぎと一緒に私にお辞儀をした。

 その後、フラウとお茶をしながらおしゃべりをしていると、ずっと黙っていたステッキが口を開いた。


「聞きたいことがあるんだが、いいか?」


「ききたいこと? わたしに?」


 きょとんとするフラウ。手に持ったうさぎも首を傾げる。


「お前のことを知っている人間はいるのか?」


「マホロじゃなくて?」


「そうだ、俺たち以外にだ」


「……前まで村にいた人たちと、あとは、近くの町の人たちかな。それくらいかも」


「おまえ、町の人間と交流があるのか?」


「うん、あるよ。小麦を他の物と交換してもらってるの!」


 そっか! 宿場町で物々交換してたってことか!

 実はちょっと不思議だったんだよね。小麦以外の材料をどうやって手に入れてるんだろうって。

 私が納得している横で、ステッキが質問を続ける。


「お前と交流がある人間の中に、〝魔術師〟はいるか?」


「まじゅつし? 誰? どんな人?」


「お前の力を借りたがるヤツだ」


 ステッキは何を聞いているんだろう? 突然、魔術師だなんて。


「わたしの力を借りたい人? んー……そんな人はいなかったかな。小麦を欲しがる人はいるけど」


「いないんだな。そうか、わかった」


 今の質問でステッキは何かを納得したみたいだけど……どーゆーこと?

 今度は私がステッキに尋ねる。


「フラウが魔術師と知り合いだとなにか問題があるの?」


「もしフラウと契約している魔術師がいた場合、俺たちがフラウと接触したことが伝わる可能性が高い。その魔術師が王都の所属なら、王都に俺たちの存在が伝わるだろう」


「まずいの? カールラさん、いい人ただし」


「ヤツはな。しかし、今の王に忠誠を誓う精霊魔術師だったらどうする」


「……うん、なんかまずそう」


 もしそうなら、あっちから接触してくる可能性が高くなると思う。しかも、なんか攻撃的な感じで。

 だけどフラウが魔術師を知らないってことは、その心配はないってことだよね。


「良かったー! フラウが誰とも契約してなくて!」


 私はほっと胸をなでおろした。


「え? 契約してるよ?」


 私は笑顔のまま硬直した。



    ◇



 そんな感じで、この後もいろいろあったんだけど……。

 そのお話は、またいつか。

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