13. コンカフェで働いてたら魔女に出会った話
私は馬車に揺られていた。
廃墟の件のお礼にと、カールラさんが手配してくれた馬車。
乗客は私ひとり。
瑠璃はまだあの町にいる。
なんでも、やらなきゃいけないことがあるんだって。
『必ず追いつきます』という瑠璃の言葉を信じて、私は一足先に町を出立していた。
「今回もいろいろあったなー」
「そうだな」
ステッキが私の独り言に返してきた。
その流れで、ステッキと町での出来事を振り返る。
「まさか歩行者天国が町の正式なイベントになるなんてね。これからは数か月に一度実施されるって。なんかすごいことになっちゃったね」
「町全体がすごく盛り上がっていたからな。また開催したくなるのは当然だろうな」
実は町長さんから打診があったんだよね。
町で役員をしてくれないかって。
歩行者天国の効果で、今まででは考えられないくらいのお客さんが町に押し寄せたんだって。町への経済効果もかなり凄いことになっているらしい。
だから、私と一緒に『歩行者天国で町をさらに盛り上げたい』って申し出だったんだけど――
私には旅の目的があるからね、申し訳ないけど断った。
代わりと言ってはなんだけど、あっちの世界の歩行者天国で行われるイベントとかお祭りの知識をいっぱい教えてきた。
町長さん、話に聞き入ってたな。必死にメモをとりながら。
「また来ますって約束もしちゃったし、立ち寄らなくちゃいけない場所がどんどん増えていくよ」
「いいんじゃないか? 信用は魔法にも影響するしな」
「え? そうなの?」
なんかまた知らない魔法知識が出てきた。
「相手に作用する魔法は、魔法をかけられる相手が術者をどれだけ信用しているかで効果が変化する。海賊のときもそうだ。海賊どもが『お前が旨い飯を作る』と信用していたから、魔法が強く効いたんだ」
「うっ……なんかその例え、ちょっと胸に刺さるんだけど。けど、人から信用されるのも魔法使いとして大切なことなんだね」
だからと言って、わざと気に入られようとかする気はないけど。
私は私だし。
「魔法マメ知識として覚えておくよ。ありがと」
「そうだな」
そんな会話をステッキとしていたら、なんだかおなかがすいてきた。
「お弁当たべよっと」
町を出るときに、マスターが持たせてくれたお弁当を膝の上に広げる。
中身は、マスター特製のホットドッグ! みたいなやつ。
パンに大きめのソーセージと野菜が挟んである。
ケチャップやマスタードはないから、味付けは塩と香辛料。
あっちの世界とはちょっと違った風味だけど、これはこれでとってもおいしい。
ソーセージがプリっとしていて食感が楽しい。
「んー、おいひーなー」
マスターと言えば、私が町を出立する数日前に酒場のステージが完成したんだよね。
ステージのお披露目パーティーに、私もお呼ばれして行ってきた。
マスターがこだわって作ったステージ、すごい仕上がりだった。
店内の一角に作られたステージ。
2~3人上がれる位の広さに、魔道具で作られたマイクとスピーカー、そして照明。
もしかしたら、私が働いてるコンカフェのステージよりも立派だったかも。
ステージのお披露目では、真っ赤な衣装を着たサラさんが歌声を披露したんだけど、これが圧巻だった。
マイクを使ってしっとりと歌い上げるその歌声に、あそこにいた全員が引き込まれていた。
歩行者天国で聴いたアカペラもすごかったけど、あんなに色っぽく歌うこともできるなんて。
瑠璃も私の横でぽかーんってなってたっけ。
「サラさんの歌、すごかったよね。また聴きたいな」
「お前を突然働かせたときは、この女はなんなんだ? と思ったが、意外な才能の持ち主だったな」
パンくずをお弁当の包みに集め、縛って鞄にしまう。
「ごちそうさま。さてと――」
今度は鞄から地図を取り出し、膝の上に広げる。
「いまはこのあたりのはずだから、もう少しだね」
現在地の辺りを指で差す。
ステッキも地図を覗き込む。
「確実に王都に近づいてきているな」
「……そろそろ王様も私たちの存在に気づくかもしれないよね」
地図を鞄にしまうと、水筒を取り出して水をひと口飲んだ。
私を乗せた馬車は、次の目的地を目指して走り続けた。
~「コンカフェで働いてたら魔女に出会った話」おしまい~
【次回予告】
瑠璃と別れた私は、順調に旅を続けていた……とはならず。
原因不明の嵐で、何日も足止めを食らっていた私たち。王都を目の前にしての足止めに、ステッキも落ち込み気味。
回り道しようと宿場町を出たのはいいけれど、道に迷ってしまい辺りは真っ暗に……そこに現れたのは、ひとりの少女。
こんな時間に、女の子が一人!? まさか!
次回「 コンカフェで働いてたら空を飛んだ話」




