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コンカフェで働いてたら村を救った話  作者: たこやき風味
コンカフェで働いてたら魔女に出会った話
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10. 返金の話

 この日、私と瑠璃はカールラさんに呼ばれて王都支所にいた。


「手続きとかでは何度も来てるけど、この部屋は初めてだよ」


 応接室のような部屋に通され、ソファーに座る。

 赤い絨毯が敷かれた部屋に、ふかふかのソファー。

 天井近くまである大きな窓には、同じく赤いカーテンが取り付けられていた。


 やがてドアをノックする音がして、カールラさんが部屋へと入ってきた。


「待たせてごめんなさいね」


 私と瑠璃はソファーから立ち上がり会釈をする。

 カールラさんは手のひらで私たちに座るように促すと、正面のソファーに座った。


「早速だけど、返金の報告と、あとはルリちゃんへの残金の受け渡しをするわね」


「はい。よろしくお願いします」


 私はカールラさんに頭を下げた。

 瑠璃も頭を下げる。



「まずは返金についてだけど、あの後すぐに返金について町全体に通達したわ。対応した者の報告によると、苦情を入れてきた人はすぐに手続きに訪れたらしいわ」


 まあ、そうだよね。


「その後も返金希望者は来てはいたらしいんだけど、そこまで多くはなかったみたい」


 カールラさんはそう言うと、瑠璃に一枚のカードを手渡した。

 あ、これって王都支所にお金を預けると渡されるキャッシュカードだ。


「残金を全て入れておいたわ。金貨260枚」


「「260枚!?」」


 私と瑠璃の声が重なった。

 そんな私たちを見てカールラさんが続ける。


「結局、一割程度しか返金に訪れなかったわ。町全体に伝わってないのかと思って何度か通達を出したんだけど、それでも返金は増えなかった。それどころか――」


 カールラさんが何枚かの紙をテーブルに広げた。


「これは?」


 私と瑠璃がその紙を覗き込む。


嘆願書(たんがんしょ)よ。廃墟のお店を再開して欲しいんですって。国が経営してたんじゃないって何度も説明してるんだけどね」


『もう一度あの歌が聴きたい』

『彼女のダンスを見たい』

『あの場所は私の元気の源だった』


 嘆願書にはお店の再開を望む人たちの思いが幾つも書かれていた。

 瑠璃は熱心に嘆願書に目を通している。


 よし! あの話をするなら今しかない!


「実は、私と瑠璃が働いている酒場で――」


 私は、酒場で瑠璃が歌を披露してもよいか、カールラさんに確認した。


「なるほどね。酒場でルリちゃんの歌を披露するのは問題ないとは思うけど……ルリちゃんを見たいお客さん、酒場に全員入れる? おそらくだけど、かなりの人数になるわよ」


 そっか。

 酒場はまあまあ広いけど、瑠璃目当てのお客さんが何人も来たら入りきれないかも。

 それに、常連のお客さんにも迷惑をかけるかもしれない。


 うーん。どこか広い場所があればなぁ。

 この町ってそこまで大きくはないから、コンサートホールみたいな建物はないし、広場もないんだよね。


 広いのは大通りくらい。


 大通り……。

 そういえば、私が勤めてるコンカフェがある町って、週末になると大通りで歩行者天国をやってたっけ。

 この町って、あの町にちょっと雰囲気が似てるんだよね。

 大通りを一本入るとマニアックなお店が並んでて、お客さんもちょっと雰囲気が違う感じで。

 私の好きな感じの町。


 ――そうだっ!


「あの、大通りでやるのはどうですか?」


「大通りで!? 道の真ん中で歌ったりしたら荷車に轢かれちゃうわよ!?」


「あっちの世界には、大通りで行う『歩行者天国』というものがありまして――」


 私はカールラさんに歩行者天国について説明した。

 私の話をうんうんと聞いていたカールラさんが、最後に大きくうなずいた。


「面白そうね。早速町長との打ち合わせの席を設けましょう。打ち合わせにはあなたたちも参加してくださいね」


「はいっ! よろしくお願いしますっ!」



    ◇



 後日、再び王都支所の応接室。

 ソファーには私と瑠璃、テーブルを挟んでカールラさんと町長さんが座っている。


「こちらが先ほどお話ししたマホロさんとルリさんです」


 カールラさんが私たちを町長さんに紹介する。


「よろしくお願いします」


 私と瑠璃は軽く会釈した。


「よろしく」


 町長さんが挨拶を返す。

 60代くらい? 瘦せ型の男性。

 白髪交じりの頭に、面長の顔。丸い眼鏡をかけている。

 ちょっと気難しそうな雰囲気。


「あなたたちが到着する前に、私から町長に簡単な説明はしておきました。改めて詳しい説明をお願いできるかしら」


 カールラさんから説明を振られる。


「わかりました」


 私は、事前に用意していた町の地図をテーブルに広げた。

 地図には《荷車の進入を禁止するエリア》が書き込んである。

 さらにその中を《露店エリア》《ステージエリア》で区切っておいた。


「今回対象となるのが、この大通りです。荷車などを対象に、ここからここの範囲を進入禁止にします」


 進入禁止エリアを指でなぞりながら説明する。

 地図を覗き込んでいた町長さんが、早速質問してきた。


「荷車が入れないとなると、その日は荷物の搬入ができなくなる。そこはどうするんだ?」


「はい、そこは大通りのお店に協力していただくしかありません。荷車の数が少ない日を選んで開催することで、軽減はできるかと思います」


 私の言葉を聞いて、町長さんが鞄からノートのようなものを取り出した。

 それをテーブルに置くと、ペラペラとめくり始める。


 ちらっとノートを覗き込む。

 書かれているのは、日時とお店の名前?

 パッと見た感じ、タイムテーブルのような。

 これって、荷車の通行許可帳みたいなものかな?


「数日に一度は荷車の台数が少ない日があるな。店の多くが休みの日か……」


 町長さんが独り言をつぶやきながら、タイムテーブルを上から順に指でなぞる。

 そして何ページかを確認したところで、うんうんとうなずいた。


「よし、わかった。荷車の件は各店に協力してもらおう。進入禁止の時間の前後であれば荷車も入れるしな」


 町長さんの言葉に、ほっと胸をなでおろす私。

 歩行者天国が開催できなかったらこの話はそこで終わりだもんね。

 ひとまず第一関門は突破。


 私は説明を続けた。


「ここが露店の範囲です。事前に申請することで、お店を出すことができます」


「申請が必要な理由はなんだ?」


 間髪入れずに再びの質問。


「露店の場所取りを早い者勝ちにすると、進入禁止にする前から場所取りが発生する恐れがあります。それでは事故が起こりかねません。事前申請にすることで出店する人は場所を予約できるので、開店の準備や撤収の時間を守ってくれます」


 ふむふむ、とうなずく町長。


「それと、申請の受付と併せて出店費を徴収することもできます。これは必ずではありませんが、徴収することで運営費用に充てることができます」


「なるほどな。管理や資材で金がかかる。それを出店費用で賄うわけか」


「はい。一日の売り上げで損をしない程度の額であれば問題ないと思います」


 大きくうなずく町長。


「よし、わかった。露店は事前申請にして、出店費を徴収することにする。申請や費用の徴収は役場で管理しよう」


「よろしくおねがいします。次に、この場所についてですが――」


 私がステージエリアを指さして説明しようとしたとき、町長さんが食い気味に質問してきた。


「それなんだが、今回の話でワシが一番理解できていない部分だ。しっかりと説明を頼む」


 ステージって何? って感じだよね。


「わかりました。それでは説明します。まず、ここにお客さん用の椅子を並べます。そして椅子の正面側に一段高い場所を作ります。一段高くする理由はお客さんからよく見えるようにするためです。この場所を《ステージ》と呼びます」


 町長さんが再びメモを取り始めた。


「参加者は事前に募集します。当日、参加者にはステージ上で歌や踊りを披露してもらいます。ただし、参加費は徴収しません。お客さんも参加者も無料です」


「なぜだ?」


「このステージはお客さんを集めるためのもの、つまり集客目的だからです。参加者は自分の出し物を見てもらうために知り合いを呼びます。それに宣伝もしてくれます。人が人を呼ぶわけです」


「なるほどな……」


「ステージでは、最後に瑠璃が歌と踊りを披露します。あの、事前にカールラさんからお話は――」


「ああ、聞いている。例の廃墟の話だな。それについてはまったく問題ない。なんならお前さんが廃墟で店をやっていたときの方が、町の連中が生き生きとしていたくらいだ」


 町長さんの言葉に、瑠璃がちょっと照れる。

 許可ももらえたし、瑠璃のステージも問題なくやれそう。よかった。


「これで私からの説明は終わりです。質問などはありますか?」


「大した話ではないんだが。今回、このような祭りを初めて知った。キミの国ではよく行われているのか?」


「はい。国のあちこちで行われています。このように荷車を進入禁止にして行うお祭りを《歩行者天国》と言います」


「ホコウシャテンゴク? 変わった名前だな」


 町長さんが不思議そうな顔をしながらメモをした。


「他に質問はありますか?」


「いや、大丈夫だ。だが初めてのことでわからないことも多い。すまないがこれからも協力を頼む」


 町長さんが私に右手を差し出す。


「もちろんです! 是非お手伝いさせてください!」


 私はその手を握り返した。

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