7. 閉店の話
「ねえ、私と一緒に町に来ない? 私が泊まってる部屋、二人部屋だから。もうひとりなら追加で泊まれると思う」
「いいんですか!?」
瑠璃の顔がパッと明るくなる。しかし、すぐにしょんぼりとうつむいた。
「けど、コンカフェが軌道に乗り始めてるし、それにメアリのこともあるので……」
そうだよね。頑張って作ったお店だもんね。
だけど、私がここに来た理由がある。
「うん、わかる。けど、カールラさんから調査依頼が来てるってことは、なにかしら理由があるはずなんだよね」
「そうですよね……」
「とりあえず私と一緒に町に戻って、カールラさんに報告を兼ねて相談してみようよ! カールラさんいい人だから、悪いようにはしないはずだよ」
うつむいたまま考える瑠璃。
やがて、小さくうなずくと、
「わかりました。先輩と町に行きます」
顔をあげて少しさみしそうな笑顔で答えた。
「あの、それで、メアリは……」
それだよね。
うーん、どうなんだろう。
オートマタを町に連れて行っても大丈夫なのかな?
「ねえ、オートマタを町に連れて行くのって、やっぱりまずいかな?」
私はステッキに尋ねた。
「そうだな……オートマタ自体は珍しいものではないからな。町に連れて行っても問題はないだろう。だが――」
「だが?」
「オートマタは魔力を源にして動くからな。この世界から魔力が失われたことを知っている者に見られると、厄介なことになるかもしれないな」
魔力がないはずなのに、魔力を使って動いているオートマタがいたら……。
王様の手下に見られでもしたらまずいよね、たぶん。
「それなら何かしら変装させて連れて行った方がいいよね。一度町に戻って服を持ってこよう」
「メアリを連れていけるんですね! よかった!」
瑠璃の目が輝いた。
「他に持っていくものはある?」
私はくるくると周りを見回す。
「実は、今日までの売り上げがあるんですけど……」
あー、お金か!
お店が軌道に乗り始めたって言ってたもんね。
「それは大事だよね! いくらくらいあるの?」
「さん……」
瑠璃がごにょごにょと話す。
ん? さん? 30枚?
「さんびゃくまいです。金貨300枚です」
「さっ!」
驚いて一瞬呼吸が止まった。
金貨300枚!?
「そんなに!?」
私は瑠璃に連れられて書斎のような部屋へとやってきた。
「これです」
瑠璃が、机の上に置いてある宝箱のような箱を指さす。
私はその箱をゆっくりと開けた。
瑠璃の言ったとおり、中にはぎっしりと金貨が入っていた。
「ほんとうだ。すごい量の金貨……」
「一日平均で金貨16枚くらいの利益があったので。気が付いたらこんなに貯まっていました」
私は箱を持ち上げてみた。ずっしりと重い。
箱自体を持ち上げることはできるけど、この重さの箱を町まで運ぶのはかなりきつい。
「町で荷車を借りてこよう。それにこのまま運ぶのは目立ちすぎるし」
「わかりました」
瑠璃は箱のふたを閉じた。
◇
町へと向かう道。
私が荷車を引き、その横を瑠璃が歩く。
荷車の後ろをローブで全身を覆ったメアリが付いてきている。
あの後、私は一度町に戻ってメアリに着せるローブを買って、宿のおじさんから荷車を借りてきた。
荷車に瑠璃の引っ越し荷物と金貨の箱を載せて、外から見えないように布を被せた。
メアリにはボロボロのメイド服からローブに着替えてもらった。
「色々ありがとうございます」
私の横を歩く瑠璃がお礼を言う。
「いいっていいって! かわいい後輩のためだもん!」
途中、何人かの人とすれ違った。
もしかして廃墟に行くのかな?
廃墟の玄関に張り紙をしてきたから大丈夫だとは思うけど……。
ごめんね、もう廃墟のお店は閉店なんですよ。
途中に何度も休憩をはさみつつ、荷車を引きながら歩く。
舗装されていない道を荷車を引いて歩くのはかなりの重労働。しかも私、往復だし。
あー、体力強化系の魔法とかあればいいのになー。
息も絶え絶えになりながら進み、やっと町が見えてきた。
と、そのとき、
「――ちゃーん!! マホロちゃーん!」
かすかに私を呼ぶ声が聞こえた。
見ると、町の入り口でこっちに向けて手を振っている人がいる。
あれは――カールラさん!?




